帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:鈴木 純)は、ポルトガルの自動車向け複合材料成形メーカーであるイナパル・プラスティコ社(Inapal Plasticos SA、本社:ポルトガル ポルト県、CEO:Miguel Ferraz、以下「Inapal社」)の全株式を取得し、完全子会社する。
同社は、2011年から世界初のCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastic:熱可塑性炭素繊維複合材料)の1分間での成形量産技術を確立し「Sereebo」ブランドとして展開。
また欧州ではテイジン・カーボン・ヨーロッパ社で熱硬化性炭素繊維複合材料(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)の端材を極小化するプリフォーム(事前に炭素繊維シートを金型に合うように切り取り、賦形すること)製造技術「PvP」(Part via Preform)を核に一貫生産体制を構築し、欧州の自動車メーカーからTier1認定を得て市販車の構造材に提供。
さらにCSP社の傘下にあるフランスの現地法人、CSPヨーロッパ社にGF-SMC(Glass Fiber-Sheet Molding Compoundの略。熱硬化性樹脂をガラス繊維 に含浸させシート状にした成形材料)工場の新設を決め、欧州での複合成形材料事業の拡大を模索していたなか、昨年の2017年1月、北米最大の自動車向け複合材料メーカーであるContinental Structural Plastics社(以下「CSP社」)を買収し、複合成形材料事業社としてTier1サプライヤーとして立ち位置を明確なものとしてきた。
そうしたなかで帝人は、欧州でのさらなる自動車向け複合成形材料事業の拡大を目指し、2018年8月、欧州の自動車メーカーに幅広い採用実績を有するInapal社を買収することを決定したもの。
なお今回買収を決めたInapal社は、1980年代から自動車メーカーやトラックメーカーに幅広くGF-SMC製部品を提供しているTier1メーカーであり、炭素繊維を使用したCF-SMCやPCM(Pre-preg Compression Molding)、LFT(Long Fiber Thermoplastic)などの技術も有している。
また自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観を有する外板部品に特徴があり、フォルクスワーゲン、メルセデス、BMW、ジャガー、ランドローバー、ベントレーなど、欧州の自動車ブランドへの幅広い採用実績を持っている。
これを踏まえ帝人は、複合成形部品のTier1サプライヤーとして地域戦略とマルチマテリアル戦略を介して、自動車メーカーに対するグローバルソリューションプロバイダーとなることを目指していく。
より具体的には、今買収を自動車向け複合成形材料事業に於ける欧州展開の第1弾と位置づけ、今後さらにM&Aを模索。欧州の自動車メーカーの部品供給パートナーとして事業拡大を図ると共に、EV化の進行が予想される中国などへの展開も強化していくと云う。
併せてマルチマテリアル戦略として、既にCSP社で具現化が進んでいるようにコストや成形性などを考慮した異素材との複合化も模索し、顧客ニーズを先取りした部材提案を可能とする体制の構築も目指していくとしている。
このような展開を経て同社は、今後一層厳しくなる環境規制に対してソリューションを提供する事業体として2030年近傍には、自動車向け複合材料製品事業で売上2,000百万米ドル規模へと事業規模を拡大していくことを目指す構えだ。
同戦略を踏まえて、帝人代表取締役社長・執行役員の鈴木 純氏は、「当社は中期経営計画における発展戦略として、軽くて強い高機能素材やそれらの複合化による自動車向け複合材料事業の拡大を掲げています。
そして、このたびInapal社が帝人グループに加わることにより、その戦略を実現し、グローバル自動車市場におけるマルチマテリアルでの部品供給メーカーとなるための大きな一歩を踏み出すことになります。
今買収により帝人グループは、複合材料事業の米州拠点であるCSP社の生産・販売体制、先ごろ買収を決めた、欧州中心に内装材の生産・販売を展開する独ジーグラー社の販売チャネルを活用し、新たなビジネス展開を図るなどシナジーを追求していきます。
そして、帝人グループは、長期ビジョンである未来の社会を支える会社に向けて、今後さらに邁進していきます」と結んでいる。
Inapal社の企業概要
社名:Inapal Plasticos SA
拠点:ポルト県レサ・デ・バリオ(本社・工場)
セトゥーバル県パルメラ(工場)
売上高:31.9百万ユーロ(2017年12月期)
従業員数:約330名
事業内容:自動車向け複合材料/部品の設計・成形・加工