日立オートモティブシステムズ株式会社(本社:東京都千代田区大手町、本店:茨城県ひたちなか市、社長執行役員&CEO:関 秀明、以下、日立オートモティブシステムズ)は、データ通信の信号を劣化させるリンギング低減技術を開発した。
この「リンギング」とは、次世代高速車載ネットワークの通信方式として期待されるCAN FD(CAN with Flexible Data rate)通信時に於ける課題だったデータ通信の信号を劣化させる現象のことを云う。同社では、このリンギング現象を低減する技術を新たに開発。2020年以降の実用化を目指していく構え。
ちなみに現在、自動車に搭載されているデータ通信方式としては、CAN(Controller Area Network/耐ノイズ性の強化を考慮して設計され、相互接続された機器間のデータ転送に使われる規格)が広く用いられている。しかしCANのデータ通信速度は500Kbps程度に留まっていて、さらなる高度化が見込まれる運転支援システムや、自動運転車両の制御には限界がある。
そこで、このCANを改良したのがCAN FD(可変データレート対応のCAN)である。その速度は最大8Mbpsの速さとなり、この高速な通信速度が次世代車載ネットワークに見合うデータ通信方式として期待されている。
ただCAN FDにも欠点があった。それはデータ通信の高速化に伴い、信号の品質を劣化させるリンギング(信号がステップ状に変化した時、応答が振動的になるような状態)といわれる現象が発生することにある。
具体的には、CAN FDによってデータ通信を行う際、ECU間でデータを電気信号に変換して通信する訳だが、ECU間のネットワーク上には、信号の流れやすさを示すインピーダンス(圧と流の積で表す仕事率)が違うところが存在する。
このインピーダンスが違うところでは電気信号が反射し、反射ノイズが発生し、それにより信号が歪み、信号の品質が劣化する現象が発生する。
これがリンギングという現象である。リンギングは従来のCANの通信でも存在したが、CANのデータ通信速度である500Kbps程度では、データ通信が困難になることはなかった。
つまりCAN FDでデータ通信速度が高速になったため、リンギングの影響によりデータ通信が正しくできなくなり、その対策が求められていた。
同社では、このリンギング現象を低減するため、通信速度に応じ最適な経路で電気信号を送信する独自の技術、中継回路方式を開発。
新開発の方式では、中継回路が通信速度の速い電気信号と遅い信号を別の経路で送信できるように、ネットワークの構成を切り変えることができるようにした。
その結果、反射ノイズの影響を低減し、リンギングを従来の方式より約37%低減することができた。同技術により、CAN FDによる車載ネットワークのデータ通信を、より高速なものとすることができる。
この開発技術を背景に日立オートモティブシステムズは、「今後ますますデータ通信量が増えることが見込まれる、高度化する自動車の制御を支え、自動車メーカーが進める先進安全運転技術の搭載車両や自動運転車両の開発、普及に貢献していきます」と述べている。
会社概要
日立オートモティブシステムズ株式会社
本 社: 東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル
事業内容: 自動車部品および産業用機械器具・システムの開発、製造、販売およびサービス