富士経済、中国のEVシフトは10年以上掛かると分析


HV、PHV、EVの世界市場(販売台数)を調査。2035年世界市場予測(2017年比)

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(本社:東京都中央区、代表取締役社長:清口 正夫)は、各国の環境規制に対応するため注力されているHV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)の世界市場について調査した。

その調査内容は、HV、PHV、EVをはじめ、FCV、48VマイルドHVなどの市場動向と、それらの関連部品の市場や技術動向、環境規制動向や各自動車メーカーの車種展開、開発動向を整理分析している。

1.HV、PHV、EVの世界市場
それによると2017年のHV、PHV、EV市場は324万台(前年比124.6%)。現状はHVが市場をけ ん引しているが、EVシフトが大きく進むとみられ、今後のHVは緩やかに伸長すると予想した。

来る2025年以降はPHVとEVの伸びが加速し、拮抗しながら市場をけん引するとした。2035年にはPHVが1,243万台、EVは1,12 5万台になると予測している。

エリア別に見た日本市場は当面HVが主流になるとし、2035年のHV車両は131万台と予測。 PHV、EVは、自動車メーカーの商品構成の主軸がHVから切り替わるタイミングで何らかの購入補助が開始されると予想している。

それは欧州や中国のような過度な補助金政策でないとしても、集合住宅での充電スタイルの確立など、消費行動を刺激することで需要は増加すると想定した。

またPHVは今後、シティコミューターとして普及していくとみられ、日本の自動車市場が縮小するなかで、これら電動自動車の需要は増加。2030年以降はPHV、 EVの販売比率が高まると予想している。

一方、北米市場は、ZEV(Zero Emission Vehicle)規制により自動車メーカー各社がPHV、EVの販売に注力するため伸長するとみた。ただしガソリン安から内燃車への需要は継続するとし、2035年にはPHVとEVの販売比率は北米の自動車市場の17.6%に留まるとした。

対して欧州市場は、環境規制と補助金によってPHV、EVが伸長し、特に、財政が豊かな先進国の需要が増加すると予想。

とはいえ、補助金政策の後押しがないことには需要が創出できない状況は当面続くと見ているため、南欧や東欧諸国は厳しい状況が続く。よって2035年のPHVとEVの販売比率は27.4%となるが、南欧や東欧諸国に関しては内燃車需要が中心となる。

市場の電動化に積極的な中国は、電動自動車産業を育成し、自動車メーカーの商品競争力を高める施策を敷いている。このため当面は外資系自動車メーカーの合弁規制を緩和してEVシフトを展開する構えである。

しかし、自動車メーカーの育成と、電力の供給や電力設備、充電設備などを整備し、内陸部まで需要を拡大させるには今後10年以上掛かる予想。

ASEAN・東アジア市場は、富裕層向けの高級EVや、都市交通の手段としてのコンパクトEVの需要が期待できる。しかし、当面は電力供給などのインフラ整備が課題になるとした。

2.HVの世界市場

  • 2017年の市場規模:208万台
  • 2035年の拡大予測:420万台
  • 2017年比による拡大率: 2.0倍

2017年のHV市場は前年比14.3%増の208万台となった。日本市場と北米市場は新型車種の販売も進んだが、プリウスの大幅な販売減が影響し微増に留まった。

一方、欧州市場と中国市場は、環境規制が拍車を掛けたことで急激にハイブリッド需要が増加した。対する日本市場は既に成熟しており、今後は緩やかな成長が続くと見られる。

北米市場は当初のZEVクレジットを取得する役割が終了しており、日本市場と同様に緩やかな成長が続くと見ている。

欧州市場は、各国が長期的に段階的なEVシフトを進めるなかで自動車メーカーが48VマイルドHVの拡充を図るならば、HV
も同様に拡大が予想されるとした。

中国市場は、日系自動車メーカーが今後も中国の環境規制に対応して販売を強化するとみられることから拡大が予想される。

3.PHVの世界市場

  • 2017年の市場規模:40万台
  • 2035年の拡大予測:1,243万台
  • 2017年比による拡大率:31.1倍

2017年のPHV市場は前年比33.3%増の40万台となった。なかでもCO2排出量95g/km規制を掲げる欧州が15万台と最も構成比が高く、次いで中国が12万台となった。

欧州の自動車メーカーは2020年代前半から新型プラットフォームで、新しいサブブランドを打ち出し、高級車から普及価格帯のSUVまで新型PHVを大量投入し、CO2排出量規制のペナルティ回避に乗り出す考えである。

また、日系自動車メーカーなどによる欧州市場への新規参入が多く計画されているため、欧州市場は2025年前後から急激に拡大すると予想される。

欧州市場に次ぐ規模の中国市場は、政策に左右されるものの、2020年前後に外資系自動車メーカーの中国生産が開始されて急拡大し、2030年には世界最大規模になると予想される。

北米市場も2020年代中盤より大型車からプラグイン設定が進み拡大すると見られる。

4.EVの世界市場

  • 2017年の市場規模:76万台
  • 2035年の拡大予測:1,125万台
  • 2017年比による拡大率:14.8倍

2017年のEV市場は、前年比58.3%増の76万台となった。現状は、中国や欧州がEVシフトに注力している状況である。

中国市場は、自動車を販売する全てのメーカーにEVの投入が義務付けられることから、2018年以降急激に拡大するとみられる。また、2020年前後から外資系自動車メーカーの現地生産モデルが出揃うことでさらなる拡大が予想される。

拡大が続く中国市場に影響を受ける形で欧州やインドでもEVシフトが進む。

<調査対象>

1.対象品目
自動車
・HV・FCV・内燃車・PHV・48VマイルドHV・EV・電動トラック・バス

HV、PHV、EV、FCV関連部品
・モータ・ジェネレータ ・電流センサ ・リチウムイオン電池負極活物質・インバータ ・車載充電器 ・リチウムイオン電池セパレータ・DC-DCコンバータ ・EV用暖房機構 ・リチウムイオン電池電解液・パワー素子(パワーデバイス) ・駆動用バッテリ ・FCスタック・平滑コンデンサ (ニッケル水素電池/リチウムイオン電池)・水素タンク・リアクトル ・駆動用バッテリ ・急速充電器・BMS (全固体電池) ・普通充電器(バッテリマネジメントシステム) ・リチウムイオン電池正極活物質 ・ワイヤレス給電システム。

2.自動車メーカー事例
国内メーカー
・トヨタ自動車 ・マツダ ・日野自動車・日産自動車 ・三菱自動車工業 ・三菱ふそうトラック・バス・本田技研工業 ・SUBARU・スズキ ・いすゞ自動車。
海外メーカー
・General Motors ・Renault ・吉利汽車/Volvo Cars・Volkswagen Group ・FCA ・BYD Auto・現代自動車 ・Daimler ・北汽新能源汽車[BAIC BJEV]・Ford Motor ・BMW・Groupe PSA ・Tesla

<調査方法>
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用した。

<調査期間>
2018年1月~4月

資料タイトル:「2018年版 HEV,EV関連市場徹底分析調査」
体 裁:A4判 374頁
価 格:書籍版 150,000円+税
PDF版 150,000円+税
書籍/PDF版セット 170,000円+税
ネットワークパッケージ版 300,000円+税
発行所:株式会社 富士経済