アウディAG、人工知能のディープラーニングによる自動パーキングを実演


バルセロナのNIPSで、Audi Q2の縮尺モデルが複雑な状況を学習して自動パーキングを実行

バルセロナで2016年12月5日から10日まで開催されているイベント「神経情報処理システム(NIPS)」で、アウディAG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、取締役会長:ルパート・シュタートラー、以下アウディ)は縮尺モデルを使って、クルマ自身がパーキングの方法を学んでいく過程を紹介する。

この「神経情報処理システム(NIPS)」の国際会議及びワークショップは、人工知能をテーマとした世界でもっとも重要な専門家会議である。ここではこれまでも毎年、機械学習とコンピューター神経科学の分野で、様々な成果が紹介されてきた。

今回はその場所で、アウディが初めてディープラーニングに関わる自らの専門的ノウハウを披露している。なおこの自己学習システムは、自動運転を実現する上でも要となるテクノロジーである。

アウディでは、こうした成果をいずれは披露するべく、機械学習の分野でノウハウを蓄えてきた。

そして今回、自動車メーカーで唯一NIPSに参加して、発表も行う同社は、8分の1スケールのモデルカーによる「Audi Q2ディープラーニング コンセプト」を今年の会場内に持ち込み、人工知能を使った自動パーキングのデモンストレーションを行う。

実施スペースは、広さ3×3メートルのスペースのなかで、このテスト専用のモデルカーが、金属フレームで囲まれた適切な駐車スペースを探って発見し、外部の助けなしにパーキング作業を完了させる。

Audi Q2ディープラーニング コンセプトには、2つの単機能カメラ(ひとつが前方、もうひとつが後方に向いた)と、車体を取り巻くように取り付けられた合計10の超音波センサーからなるセンサーシステムが搭載されている。

そこからのデータを、車載のセントラルコンピューターが分析して、ステアリングや電気モーターを動かすシグナルに変換。

移動可能なフィールドのなかで、システムは最初に、駐車スペースと自車の位置関係を把握する。

位置を把握したら、目的の場所、つまり正しい駐車位置に移動するためにはどうしたらいいか、演算を行って弾き出す。その後、状況に応じて、自動的にステアリングを操作したり、前後に動かしたりして、クルマを移動させていく。

モデルカーが自動的に駐車操作を行えるのは、高度に進化した学習機能のおかげである。それは、別の言葉でいえば「試行錯誤を通じて学ぶ能力」である。システムは最初、クルマが進む方向をランダムに選択する。

それからアルゴリズムを通じて、とるべきアクションを自動的に発見し、継続的に操作の手順を検討。そして最後には、どんなに難しい課題があっても、システムが正しい答えを見い出す。

Audi Q2ディープラーニング コンセプトは、ドイツのガイマースハイムに本拠を置くアウディの子会社、「アウディ エレクトロニクス ヴェンチャー(AEV)」の先行開発プロジェクトとして製作された。

以降は、この実験を経て次の研究段階では、実際の自動車を使って、駐車スペースを探すプロセスを検証する運びとなっている。

アウディのグローバルネットワークで結ばれているのは、研究機関だけでなく、この分野を主導するカリフォルニアのシリコンバレーや、ヨーロッパ、イスラエルなどに本拠を置く数々の企業も含まれる。

画像認識の分野で世界をリードするMobileye(モービルアイ)もそうしたパートナー企業のひとつである。アウディとMobileyeはお互いにノウハウを交換しあいながら、ディープラーニング(深層学習)のテクノロジーを基にした環境認識システムのソフトウェアを、共同で開発している。

なおアウディはこのソフトウェアを、2017年に発売する新型Audi A8の「セントラル ドライバーアシスタンス コントローラー」(zFAS)において、初採用する予定だ。

このzFASを開発する上では、ハードウェアの面でのリーディングカンパニーであるNVIDIAも、重要なパートナーとなった。

これらの技術的なソリューションにより、近々アウディユーザーは、渋滞時の自動運転や自動パーキングといった機能が提供されるようになる。

今後アウディはさらに、人工知能(AI)を用いたコンポーネントの割合を増やしていくなかで、ハイテク産業分野のパートナーとの協力関係を強化していく。

そして今後、人工知能の技術により、自動運転のクルマも、複雑な周囲の状況を分析して、必要な運転操作を選択できるようになるのだろう。

さらにもうひとつ、NIPSにおいて、これら及びその他のエキサイティングな開発プロジェクトに触れることで、AIの専門家たちのなかに、アウディで働くことに興味を持つ人物が現れることにも同社は期待を寄せている。

そのため、アウディからは研究者のほか人事担当者も参加して、そのような人々に、どのような研究課題やポジションの可能性があるか、情報提供をしていく。

アウディでは、「研究員や開発エンジニアとして働くことにより、機械学習やクラウドコンピューティング、データ解析や車両の基礎設計といった分野で、これまで学んできた知識やノウハウを実際に活用することができ、さらには自動車産業においてAI技術の役割を定義していくという大きな仕事にも参画することができる」と技術者の参画を呼び掛けている。