デンソー・アイシンら4社、次世代車両の開発で合弁会社設立へ


デンソーとアイシンはEV駆動モジュールを開発協業。さらにアドヴィックスとジェイテクトを加えた4社で自動運転技術開発を加速

株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市、社長:有馬 浩二)とアイシン精機株式会社(本社:愛知県刈谷市、社長:伊勢 清貴)は8月27日、電動車両の駆動モジュールの開発及び販売の合弁会社設立に向けた検討を開始した。

さらに先の2社に株式会社ジェイテクト(本社:愛知県名古屋市、社長:安形 哲夫)と株式会社アドヴィックス(本社:愛知県刈谷市、社長:大竹 哲也)を加えた協業4社で、自動運転技術の開発を加速させる動きも併せて加速させる。

なお電動車両の駆動モジュールの開発及び販売に係る合弁会社設立に向けての出資比率は、デンソー50%、アイシン50%となる。

もうひとつの自動運転・車両運動制御等のための統合ECUソフトウェア開発を行う合弁会社設立に係る出資比率は、デンソー65%、アイシン25%、アドヴィックス5%、ジェイテクト5%となっている。

100年に一度の業界大変革時代の真っ只中で、4社の強みを持ち寄り、自動運転技術の開発を加速させるその理由とは

ここで一旦立ち止まって考えてみると、今日の自動車業界では、「電動化」「自動運転」「コネクティッド」という100年に一度とも云われている業界大変革時代の真っ只中にあるのは、読者諸兄も既にご承知の通りだ。

そのなかでも電動化領域に於いては、地球温暖化、大気汚染、資源・エネルギー問題などさまざまな社会課題を解決して持続可能な社会を実現するために、電動化の普及が求められている。

しかしこの電動化の普及にあたっては、電動車両の駆動に欠かせない、トランスアクスル、モータージェネレーター、インバーターというキーコンポーネントが一つのパッケージとして仕立て上げた統合型駆動モジュールの開発・提供が求められる。

ただ昨今の環境規制に対するアジア・欧州、または北米など各地の規制に関する捉え方。

各国の経済・産業事情を踏まえた産業育生に賭ける取り組みなど、そのスタンスは、世界規模の統一し共に進むという方向から幾分外れつつあり、現段階で世界市場を捉えた時、次世代車の技術開発では、投入人員や予算建て等でのバランス感覚が求められるようになってきている。

これを踏まえデンソーとアイシンは、そうした性能・コスト・世界各国の地域事情に合わせた様々な種類の駆動モジュールを開発・販売するため、各企業の総合力を効率良く投入する必要性が生まれてきている。

そうした事業環境要素から、デンソーとアイシンは互いの強みを結集した駆動モジュールを素直に開発するだけでなく、完成したモジュールを販売していくための機能を持たせた合弁会社設立の検討に合意した。

次世代パワーユニットの選択では、国毎の政治的思惑も踏まえた動力ユニットを最適化していく高率性も求められる

新たにデンソーとアイシンで立ち上げる合弁会社では、ハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)など、幅広い電動化ニーズに対応できる駆動モジュールのラインナップを開発して取り揃え、世界の自動車メーカーが求めるパワーユニットに係る多角的な要請に応えていく。

加えて、EV市場の急拡大を目指す中国や欧州。そして当面、バランス良く地域毎に適切なパワーユニットが求められる北南米など、個々地域に対応した施策を打ち出す中核事業体になることを目指している。

一方、自動運転に関わる車両運動制御技術の開発面では、地域の区別なく世界規模で、誰もが交通事故のない安心・安全な移動環境を求められている。

これを実現するための核である自動運転車については、車両の「走る・曲がる・止まる」に関わる「センサー」や「ステアリング」、「ブレーキ」などの個々機能をただ単純に磨くだけではなく、システムとしてより高度な連携を目指す必要がある。

そのためには、これらの車両制御を統合する役割を持たせたECUが重要だ。しかし今日、この統合ECUでは特に制御ソフトウェアが大規模かつ複雑化している。

そこでデンソー、アイシン、アドヴィックス、ジェイテクトの4社は、制御ソフトウェアの高度化と開発の加速に向け、互いが持つ自動運転・車両運動制御等の技術知見を結集した「統合ECUソフト」を開発する合弁会社の必要性に着目。これの設立検討で合意に達した。

次世代車の心臓部をどこが握るのか、その覇権争いは、次の100年を刻もうとする未来の日本国内産業の浮沈を握る鍵でもある

統合ECUソフトウエアの開発を一手に担う新たな合弁会社は、先のパワーユニットと同じく、世界規模で個々自動車メーカーのニーズに合わせた統合ECUの制御ソフトウェア開発に注力する。

4社は互いの強みを組み合わせ、センサーやステアリング、ブレーキといったハードウェアと統合ECUを巧みに組み合せることで、高度な自動運転の実現に向けて、キー技術を持った事業体となり、次世代の自動車開発に対して、決定的な主導権を握っていく構えだ。

このデンソー、アイシン2社による合弁。そしてデンソー、アイシン、アドヴィックス、ジェイテクト4社による合弁のいずれも、来る2019年3月の設立を目指している。

いずれもその取り組みは、世界規模で新たな動力並びに神経系が求められる次世代車両開発に向けて、まさに今後相次いで登場する「クルマの心臓部をどの企業が握るか」という厳しい国際企業の生き残り競争にデンソー、アイシン、アドヴィックス、ジェイテクトの4社がスクラムを組んで参戦していくことを意味している。

それは4社の強みを掛け合わせて、「持続可能な社会の実現に貢献していく」というキレイ事とも捉えられる建前で済ませられることではなく、次の100年に向けて、大袈裟に言えば、日本国内産業の浮沈を握っているといって良い取り組みであるといえるだろう。( 坂上 賢治 )