先に10億ドルの資金調達に成功した「Lyft」(※)と共に、米国に於ける自家用車の相乗りアプリプラットフォーム(ライドシェアサービス)として、現時点の資金調達力で双璧を成す「Uber」(評価額、約625億ドル)。
その同社に1月14日、カリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utilities Commission:CPUC)は、同委員会への2014年のデータ報告義務を怠ったとして760万ドル(日本円で約8億9000万円)の罰金を課す発表をした。
このライドシェアサービスを広く捉えると、スマートフォンのアプリケーションを利用してタクシーやハイヤー(個人保有の自家用車も含む)の即時配車ができるサービスである。
同一情報事業社がサービスを展開する国・都市であれば、どこでも簡単に自動車を呼ぶことが出来、支払いは登録済みのクレジットカードで決済可能だ。
さて今回、カリフォルニア州公益事業委員会の措置に対してUberは、これに迅速に応えて30日以内に罰金を支払わなければ、米国カリフォルニア州内に於ける運営免許(情報の提供事業)が停止される見込みだ。
ただしUberに対する同様の措置は、過去にも実施されており、Uber側は「カリフォルニア州公益事業委員会と対立する意図はなく、罰金も支払うが、決定自体は遺憾。カリフォルニア州控訴裁判所に上訴する意向」としている。
仮にUberが上告した場合、その後の判決の過程を経て、最終的に実際にUberが罰金を支払うか、営業一時停止を受けるかどうかが決まる。
ちなみにこの報告義務とは、カリフォルニア州公益事業委員会に対して、利用できる相乗り自動車を要求した顧客数と、その依頼に応えた頻度と回数、車椅子や動物を乗せられる車両を依頼した顧客数、違反を犯したドライバーの情報などを正しく適切に提出しなかったというもの。
現時点で米国行政に於いて、Uberなどのライドシェアアプリのプラットフォームは「公益へ広く情報を提供する事業体」の枠内として捉えられており、管轄側の公共事業団体は、Uberなどの情報提供事業を介した情報価値が、差別なく、広く安全に発信されているかを検証し、管理されるUberなどの側も、その透明性の高さや、明確な事実を広く伝えていく義務を要している。
なお米国内に於いて、これらライドシェアプラットフォームは2013年以降は合法サービスとなっているものの、Uberのドライバーが介助犬を連れた視覚障害者へのサービスを拒否するなど、新手のフラットな情報サービスであるゆえの問題が浮上している。
成長を急ぐベンチャー事業であるゆえに、このタイプのビジネスは事業拡張を急いでおり、コンプライアンスに対する捉え方や、将来の事業の形についての洗練度がまだ不足しているということなのだろう。
現時点でこのようなライドシェアプラットフォームでは、フランスに於いても違法なタクシーサービスと捉えられるなど、世界各国で現地の規制や法律と戦っている。
これらは、日本や韓国、インド・インドネシアなどASEAN諸国、ドイツ、スペイン等の欧州地域、さらにメキシコ等の中南米エリアに至るまで「営業許可を受けない白タク行為」として国内道路運送法に違反する可能性があるとする事例。
台湾に於いては、同サービスが本来「情報サービス提供の認可」と「輸送サービスの認可」の双方を有しなければならないとする課題があるとする等、世界各地で国際的な摩擦が生まれている。
上記を整理すると、同サービスの課題はふたつに分けられる。
ひとつは多くの行政府にとって、他人の需要に応じて「有償」で旅客を送迎・運送する事業には何らかの許可を必要としており、行政府の定義に如何では運転者だけでなく、利用を斡旋する行為も処罰の対象となること。
このポイントは「有償であること」で、有償であれば行政府による税制問題もクリアできる。
またこれは乗客から直接運賃は徴収せずとも、情報提供側が走行時間に応じた対価を支払う場合に於いても有償性が認められるだろう。
ふたつめは、輸送手段の受け手である乗客と、輸送手段の提供側である運転者を輸送免許の有無を問わず結びつける可能性が高いサービスであることだ。
このサービスの提供並びに成立が成る場合、ライドシェアニーズの情報提供側も、実サービスを提供する側の運転手も、互いに分離したサービス提供であるとする捉え方に課題が生まれる。
つまり今回のカリフォルニア州公益事業委員会の報告義務を、どのように捉えるかなどの「責任の所在」に関する一貫性が現時点で確立されていないことにある。
結果、利用者側は自己責任でサービスを利用しなければならず、運送サービスの提供側も特別な許可を持たないゆえに、運転者個人のプライバシー問題で壁に突き当たる。
ただこうした事業は、自由な発想を基にした新サービスの開拓であり、それ自体が必ずしも封印されるものではあってはならない。
実際、それが本当に必要かつ有益なサービスであるならば、利害調整のための行政府による迅速な法整備が求められる。
従って克復すべき課題は、社会環境の変化に柔軟に応えていくリスク管理が前提であり、そのハードルの高さを越えて、広く社会で受け入れられる適切なビジネスの姿と、新たなサービス価値を見いだしていくことが求められている。(坂上 賢治)
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