東洋ゴム工業、タイヤの空洞共鳴音低減技術を開発


東洋ゴム工業株式会社(本社:兵庫県伊丹市、社長:清水隆史)は、タイヤから乗用車の室内に伝わる音に関する課題を解決する新技術『Toyo Silent Technology(トーヨーサイレントテクノロジー)』に基づき、車内騒音の一つであるタイヤ空洞共鳴音を効果的に低減するデバイスを新たに開発した。

今日、ハイブリッド車の普及が進み、乗用車の動力源が内燃エンジンからモーター駆動等へ移行。モビリティ環境が大きく変貌しつつある。そのなかで乗用車の室内環境には、より上質な快適性が求められている。

これを踏まえ同社は、乗用車が走行するうえで唯一路面と接するタイヤの静粛性を実現するべく取り組んでいるのだと云う。

一般にそんなタイヤから発生する音は、空気の振動によって生まれる。

タイヤは元々内部を空気で満たされた構造物であることから、走行中に路面との接触によって発生するタイヤへの入力が、タイヤ内部の空気振動を起こし、その振動が車軸を通して音(ノイズ)になる。

タイヤが外部(路面)からの入力を受け、内部に充填されている空気が振動して発生するそうしたノイズは、タイヤ空洞共鳴音と呼ばれ、車内騒音の一つとされている。

例えば、高速道路を走行中、道路の継ぎ目を通り過ぎるときに「パカーン」という音が聞こえるが、これは転動するタイヤに対して道路表面の凹凸が入力され、タイヤの中の空気が振動する現象によって発生するタイヤ空洞共鳴音である。

そこで同社は、ノイズ発生の原因となるタイヤ内部の空気が、実際の車両走行時、つまり、タイヤの接地転動時にどのような状態にあるかをシミュレーションによって可視化したと云う。

これにより、充填された空気自体がタイヤ内部で「周方向への流れ」と「垂直方向への流れ」を発していることが判明。

このタイヤ空洞共鳴音を低減する方法として、音の吸収効果のある素材を内部に装着するというアイデアが、既にタイヤ業界では先行技術として具現化されている。

そうしたなか東洋ゴム工業は、別の角度からの見方を行い、タイヤ内部に空気の流れが発生している事実に着目。「空気の流れを活用して」ノイズの低減を図るという独自アプローチに取り組んだ。

もともとそうした音は「穴を通る」と低減するもの。これは通過する穴の壁面で摩擦が生じ、また穴を通過した後、渦が発生する、という「2つの減衰メカニズム」によるもの。

音が穴を通過する際に空気の流れを活用することによって、さらに音の低減効果が高まることから、可視化によって判明した空気の流れの向き(空気の通り道)に多孔フィルムを配置し、「発生する音が穴を通る構造」を設ける検討を行った。

具体的には、周方向、垂直方向の双方の流れに対応するために、多孔フィルムを「山なり形状」のデバイスとして装着することが騒音低減のブレークスルーポイントであるとする。

そこで、この山なり形状を保持するために、円筒状スポンジを周上に16基配置。円筒状スポンジの中空構造が音の減衰に効果を持っているため、多孔フィルムとの相乗効果によって、さらなるノイズの低減効果が得ることができる。

但し低減するべき音には人が聞くことのできる可聴域がある。それはおよそ20Hzから20,000Hzとされており、タイヤ空洞共鳴音は200Hzから250Hzという低周波数帯域でのノイズとなる。

今技術では、この周波数帯域をターゲットにノイズ低減を目指した。

そうして車内の騒音レベルを計測した結果、デバイス搭載タイヤで走行した乗用車のタイヤ空洞共鳴音は、デバイスを搭載していない現行タイヤでの走行時に比べ、200Hzから250Hz帯域に於いて最大でマイナス12dBという顕著な低減効果を得ることができた。

このことから、今後、デバイス搭載タイヤの製品化と市場展開を検討していく予定としている。