三菱自動車工業、電動化技術による環境負荷低減研究でフィリピン環境資源省と覚書を取り交わす


『i-MiEV』『アウトランダーPHEV』の電動化技術を活用して、フィリピンに於ける電力の有効利用に貢献する姿勢を示す

三菱自動車工業株式会社(本社:東京都港区、社長CEO:益子 修、以下、三菱自動車)は2月28日、フィリピン共和国・環境資源省と、環境負荷低減についての共同研究に関する覚書(MOU)を締結した。

これは、同社の電気自動車『i-MiEV(アイ・ミーブ)』及びプラグインハイブリッドEV『アウトランダーPHEV』を利用し、同車の電動化技術を活用。これによってフィリピンの電力事情改善に貢献。引いては、同国の環境負荷低減策に貢献していく姿勢を示したものだ。

三菱自動車の益子社長は、この締結にあたって「『i-MiEV』および『アウトランダーPHEV』の開発を通じて培った電動化技術を活用し、フィリピンの環境負荷低減に貢献したい。

また将来的には、他の政府機関や大学などの研究機関・電力会社などに幅広く参画を求めていくことを視野に入れたい」と述べた。

ちなみにフィリピンは、常に電力供給量が当地の産業発展のスピードに追いつくことなく、旧くは1980年代から慢性的な電力不足が続いている。

この時期の1984年に於いては、当地でバタアン原子力発電所が開発されるなど、国家行政として積極的な電力不足の解決案を打ち出したのだが、その後の政情変化に加え、数年後の1986年にはチェルノブイリ原発事故が発生。こうした影響から原発計画が頓挫して本格稼働に至っていない。

また以後の2001年には、深刻な電力不足を鑑み、電力産業改革法が起案され、再生可能エネルギー法が2008年に発効されている。

そこで、こうした流れも相まって当地では「地熱」・「水力」・「風力」・「太陽光」などの再生エネルギーが一時期注目され、これも手伝って同国は、地熱発電容量に於いては世界2位の地熱発電大国になっている。

しかし現段階に於ける再生エネルギーの売電事業の収益は、政府行政の官僚的な体質が影響して、ローカル系財閥や大手企業が独占。

結果、フィリピン政府が電力消費に関わる助成も行わず、一部の電力系企業が電力流通のコストをコントロールしていることから、当地の消費者は日本国内のマーケットと比較しても、望外に高額な電力料金を日々負担しており、未だ電力行政の恩恵を受けられずに来ている。またそうした高額な電力コストゆえに海外企業による当地への生産投資にも深刻な影響が出ている。

これに対して日本の東京電力・大阪ガス・丸紅・三菱商事などの事業体がここのところ、当地で電力投資を活発化させており、今後は、フィリピンの電力市場に於いて日本のナレッジが活かされていく芽が出てきている。

しかしフィリピンに於ける電力不足は、早々一長一短で解決できる課題ではない。そうしたことから発電だけでなく、蓄電等バッテリー技術に対する潜在的需要も高いのだ。

三菱自動車工業は、この同国ならではの環境課題に応えるべく、EVメーカーとしてフィリピンで新たな役割を果たしていく意向だ。なお、この動きは三菱自動車工業が日産傘下となった今、ルノーを含むアライアンス全体にとって、望外の結果を生み出す可能性も秘めていそうである。