ホンダCR-V e:FCEV、パイクスピーク・ヒルクライムに挑戦

米国ホンダは6月13日(米カリフォルニア州トーランス発)、水素燃料電池を搭載したCR-V e:FCEVを、ブロードモア・パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム大会( 6月22日 / PPIHC・Pikes Peak International Hillclimb2025 )へ投入する準備を着々と整えている。

より具体的には、本田技術研究所(Honda R&D Japan)、ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)、ホンダ・オブ・アメリカ・レースチーム(HART)のエンジニア達によって、車両自体のゼロエミッションパワートレインには、大きな変更を加えることなく競技車両へと仕立て上げる予定だ。

挑戦の舞台は、先の通りコロラド州ロッキー山脈の山頂(標高14,115フィート/約4,300メートル)にちなんで「雲へ向かって登るレース( The Race to the Clouds )」として知られるパイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム競技となる。

このヒルクライムレースは、SCCA(スポーツカークラブ・オブ・アメリカ)の公認の公式レース競技であり、アメリカではインディアナポリス500に次ぐ歴史を持つモータースポーツ大会のひとつ。

1916年以来、世界中から集まったドライバーたちが、様々な車種と様々なドライビングスタイルで、最標高9,390フィート(約2,900メートル)から始まる過酷な山岳コースに挑み、タイムを競う。

当初は大半がグラベル(未舗装)コースだったが、2011年から舗装化が拡大。翌2012年からは全域ターマック(舗装路)コースとなっている。

そもそもホンダは、パイクス・ピークへ多様なゼロエミッション車を投じて挑戦してきた歴史があり、既にEVクラスで複数の優勝も飾っているが、今回の挑戦が成功すれば、今回はエキシビションクラス( 既存のクラス分類に収まりきれないアンリミテッドな枠 )への参加形式ではあるものの、史上初の水素燃料電池車によるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの参戦となる見込みだ。

そんなホンダのゼロエミッション車によるパイクス・ピークへの挑戦の歩みは、1994年の改造EVによる初挑戦が皮切り。同年ドライバーのケイティ・エンディコット選手は、EVに改造されたホンダ・シビック・ワゴンを駆り、EVクラスで優勝(15分44秒7)を果たした。

その5年後、ホンダはレース仕様のEV Plusで再びEVクラスに参戦してクラス優勝(15分19秒9)。2014年にはホンダ・フィットEVで再び優勝。EV車のレース記録(12分55秒6)も樹立した。

翌2015年にはホンダCR-Zをベースとした4モーターEVコンセプトが、エキシビションクラスで10分23秒8の記録を刻んで優勝。2016年にはNSXのボディに4モーターを積み込んだコンセプトカー車両で9分台に迫る9分06秒1の記録を樹立している。

今挑戦にあたりCR-V eCR-V :FCEVのドライバーには、パイクスピーク・クラス優勝、フォーミュラ・ドリフトで2度のチャンピオンに輝いた吉原大選手(HRC US所属)を起用。彼のドライビングによって156のコーナーが続く延べ走破距離12.42マイルの過酷な山岳コースへ挑む。

ちなみにベースモデルとなる2025年型CR-V e:FCEVは、ミシガン州のFuel Cell System Manufacturing, LLC( FCSM / フューエルセルシステムマニファクチャリング合同会社 )で製造されているもの。

これを基に第2世代にあたるホンダ燃料電池システムも、プラグインハイブリッドユニットも、フロントマウントのシングルモーターも、17.7 kWhのバッテリーパックも、更に2つの高圧水素タンクを含むゼロエミッションパワートレイン全体にも大きな変更を加えることのないオリジナル仕様で挑むという。

現在、生産ラインから引き出されたCR-V e:FCEVは、オハイオ州メアリズビルのホンダ・パフォーマンス・マニュファクチャリング・センター(PMC)で手作業で組み上げられている際中にある。

この際、標準仕様から競技用に変更されたのは、レーシングシートとセーフティケージ、車高を1インチ下げたサスペンション、レーシングブレーキパッド、軽量18インチホイール、そして265/45R18のヨコハマ・アドバンA052タイヤのみ。

またイベント期間中での車両への水素燃料供給については、ゼロ・エミッション・インダストリーズ(ZEI)が担当。

同社の新型FTcaseはユニット単位としては、機内持ち込み手荷物よりも僅かに大きいポータブル水素燃料供給ソリューションがベースに使われており、あらゆるガス状の水素を完全な水素燃料へと変換する。これにより、水素に関する専門知識を持たないオペレーターでも、安全かつ効率的に燃料を供給できるという。