コンパニー・ジェネラル・デ・ゼタブリスマン・ミシュラン(Compagnie générale des établissements Michelin 、CGEM、本社:フランス・クレルモン=フェラン市、取締役会長:ミシェル・ロリエ、CEO:ジャン=ドミニク・スナール)は昨年11月に「ミシュラン・チャレンジ・デザイン」の最優秀作となった3次元スケールモデルを今夏、披露した。
今回、披露の舞台となったのは、パリの南西約200kmに位置するロワール地方・サルト県の県庁所在地「ル・マン」。
パリ・モンパルナス駅から、高速鉄道TGV(来る2020年を目処にInOui・イヌイに名称変更となる見込み)に乗れば、約1時間で到着する場所だ。該当国に於いては、日本の鈴鹿に匹敵するモータースポーツの聖地でもある。
なお今コンペ自体は、先の2016年11月、耐久自動車レースの世界最高峰「ル・マン24時間レース」のプロモーターであり、主催者でもあるフランス西部自動車クラブ(ACO)と共同で実施されたもの。
これを踏まえ今回、記念すべき第85回目を迎えたル・マン24時間レースの前夜祭に於いて、最優秀作のスケールモデルが披露され、ACOのピエール・フィヨン代表も列席した。
先の選考に於いて掲げられたテーマは、「Le Mans 2030: Design for the Win(ル・マン2030:勝利へのデザイン)」。世界80カ国から搬入された1,600点を超える意欲作の中から栄えある入選作品が選ばれている。
ちなみに、このコンペそのものは、世界レベルで若手自動車デザイナーを発掘することを目的に2001年から営々と続けられており、過去16年間で、世界123カ国から合計9,901点もの応募が寄せられてきた。
また永年、大手自動車メーカーの技術陣が審査員を務めてきたこともあり、世界の数あるデザイン・コンペティションの中でも権威あるコンペのひとつになっている。
この慣例を踏まえ、応募作品群の審査を担ったのは、BMW・フォード・ゼネラルモーターズ・ホンダ・ヒュンダイ・日産・PSAグループから、自動車開発のエキスパートが参画。同特設審査チームが昨秋、熟考を重ねた末に入賞作品を選出している。
選ばれた作品群は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、チェコ、インド、ポルトガル、ロシアなど多様な地域・国家から寄せられたものとなり、その出展資格も法人等のデザインチームのみならず、個人による出展作品も数多く見受けられた。
2位:「Bentley 9 Plus Michelin Battery Slick」Daniel Bacelar Pereira (ポルトガル、ヴィラ・レアル)
3位:「Cierzo C1」Kurt Scanlan (カナダ、トロント)
そうしたなか選考作品中のアワード作品にあたる1位に見事輝いたのは、中国・安徽省蕪湖市のカーデザイナー、倪涛氏(Tao Ni)が出展した「インフィニティ ル・マン 2030」である。
倪涛氏は、2013年に天津美術アカデミーから工業デザイン学士号を取得した後、ボルボグループ上海デザインセンターで勤務。
その後、ロンドンのロイヤルカレッジオブアートでの車両の設計を経験し、2016年7月に修士号を取得した。
そんな倪涛氏のコンセプトは、人間とテクノロジーが支え合うというもの。
具体的には、耐久レース参戦に於いて、日中は人間が運転し、夜間のドライブはその走りを学んだオートパイロットが引き継ぐという画期的なレギュレーションに基づく、まさに今を表すタイムリーなものとなっている。
その入選作について、当の倪涛氏によると「自動車レースの限界に挑戦するル・マン24時間レースは、雨や荒天をものともせず、人間が技術と手を取り合って共に限界に挑む極限の競技です。
それは未踏の限界に挑む、宇宙探査にも似た未知への挑戦であると思います。
そうした厳しく過酷な環境下で『人間によるドライビング』と『自律運転』を組み合わせることは、新たな人間と機械との可能性に挑戦するには、絶好の機会だと思います」とコメントした。
これを受けて、今披露会に列席したACOのピエール・フィヨン代表は、「人間によるドライビング」のパートと、AIが学習した「自律運転」を組み合わせるという革新的なレギュレーションに基づく次世代のクルマ造りに対する柔軟な発想力を高く評価した。
一方、先の選考会に於いて、北米ミシュランのマーケティング副社長トム・ローチ氏は、「2030年のル・マン耐久レースをテーマとした2017ミシュラン・チャレンジ・デザインの入選作品には、革新的な特長が数多くみられ、参加作品のクオリティには目を見張るものがありました。
受賞者の皆さんが耐久自動車レースの世界最高峰、ル・マン24時間のために作り上げた、魅力的で示唆に富むデザインを我々は、高く評価します」と称えていた。
2017ミシュラン・チャレンジ・デザイン最終選考作品は以下の通り
●「Audi R28 」 Mehdi Alamdari/Vahid Shahvirdi (オーストラリア、ビクトリア)
●「Embraer P1 Phenom Hybrid with Michelin Tire Wings 」 Carlos Eduardo de Carvalho (ブラジル、サンパウロ)
●「Hydracross 」Josh Gadomski (カナダ、オンタリオ州カレドン)
●「Bentley Speed X 」Guilherme Kataoka/Luiz Ortega/Marcelo Toledo (ブラジル、サンパウロ)
●「Neuraura 」Vruttant S. Phatak (インド、マハーラーシュトラ)
●「Bugatti Wimille 」Vladislav Semenov/Maria Ryadno (ロシア、サンクトペテルブルグ)
●「Citroën C030 LMP1 」David Voltner (チェコ、ズリーン)
2017ミシュラン・チャレンジ・デザインの審査委員会が選出した10作品の佳作は以下の通り。
●「Bugatti Benoist 」Samuel Marquez Arango(イタリア、トリノ)
●「Mercedes Benz Design to Win 」Martin Chatelier(フランス、オー=ド=セーヌ)
●「Tesla LMPE 」Jeroen Claus/Fabian Brees(ベルギー、アントワープ)
●「Audi Ayrus 」Andhika Dimas Dwiputra/Freksa Arista Ihsan (インドネシア、ブカシ)
●「TOKON 」Po-Sen Huang/Po-Yuan Huang(台湾、新北市)
●「ConverT 」Minwoo Jeon/Donghun Nam(韓国、ソウル)
●「Faraday Future Singularity 」Nicolas Francisco Loyola(イタリア、トリノ)
●「NEO 」Miguel Ferreira Rodrigues(ポルトガル、コインブラ)
●「Renault Sun Run 」Chirayu Shinde(インド、マハーラーシュトラ)
●「Appleone 」Emre M. Yazici(トルコ、アンカラ)