FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第3戦中国GP(開催地:中国・上海インターナショナル・サーキット<コース全長:5.451km・決勝56周>、開催期間:4月15~17日)の予選セッションが4月16日(土曜日)に実施された。
コースはセクター2に於ける左右への方向転換や、最終ストレートに入るヘアピン前後でのマシンコントロールが勝負所となる。
また高速からのコーナーは、いずれも右ターンであるため、左フロントのタイヤに大きな負担が掛かるのが特徴のひとつと言えるだろう。
ちなみに、当地に於ける同日土曜日・午前に行われたフリー走行は雨の中での実施となり、午後の予選セッションの天候は雨がようやく上がったばかりの曇り空。
気温22度、路面温度24度、湿度79%という走行環境となった。決勝に於いても、この不安定な天候の行方が気に掛かるところだ。
なお第2戦に出走出来なかったアロンソは、FP(フリープラクティス)1回目の終了後にFIA(国際自動車連盟)の医師による診断を再度受け、出走が認められた。
予選方式は開幕後3戦を迎えて、不評のスタイルがようやく改められ、Q1で6台、Q2で6台、ふるいを掛けられて残った10台がQ3に望む前季の方式に戻されている。その結果は、メルセデスのニコ・ロズベルグがポールポジションを獲得している。
Q1で真っ先に飛び出したのは、インターミディエイトタイヤを履いたルイス・ハミルトン(メルセデス)、これに各車が続いたが、パスカル・ウェーレイン(マノー)のスピンで赤旗中断。
スタートラインの2つのブリッジの下に、水たまりが複数あり、コース上の排水作業を終えるまでセッションが延期された。
再開時には各車、スーパーソフトタイヤを履いて再コースイン。当初は、バトンとアロンソが先頭を走るが、これをロズベルグ(メルセデス)が難なく更新。一方、僚友のハミルトン(メルセデス)はエンジントラブルで早々にトラックを去った。
結果、Q1敗退はマグヌッセン(ルノー)、グティエレス(ハース)、パーマー(ルノー)、ハリアント(マノー)、ウェーレイン(マノー)とハミルトン(メルセデス)となった。ハミルトンの脱落は意外な番狂わせだ。
Q2では、早々にロズベルグ(メルセデス)が1分36秒台。このタイムをライコネン(フェラーリ)、ベッテル(フェラーリ)が塗り替える。
しかしQ2が終盤に入って佳境を迎えた頃、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)の左フロントタイヤトラブルで、Q1に続き再度赤旗中断、残り時間が足りず、ここでQ2終了となってしまった。
結果、残った10台はライコネン(フェラーリ)、ベッテル(フェラーリ)、ロズベルグ(メルセデス)、リカルド(レッドブル)、ボッタス(ウイリアムズ)、クビアト(レッドブル)、ペレス(フォース・インディア)、サインツ(トロ・ロッソ)、マックス・フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)となり、Q2終盤に新品のタイヤを履いてタイムアタック中だったマクラーレン・ホンダ陣営の2台はここで敗退となった。
Q3でもQ2と同じく、ロズベルグが刻んだ暫定トップタイムをライコネンが上回るという展開。
これに対して、ロズベルグ(メルセデス)が1分35秒402で応酬しているなかで、リカルド(レッドブル)がライコネン(フェラーリ)の間に割って入って2番手を獲得。
結果ライコネンが3番手となり、ベッテル(フェラーリ)はトップ3から脱落した。
予選後のトップ3コメントは以下の通り。
ニコ・ロズベルグ
ルイスとポール争いができなくて残念だったが、今年初ポールは何よりも嬉しい。
Q3に入って、当初のアタックでは少しモタついたが、最後のラップは良い出来だったと思う。
ただレースでは思わぬサプライズが起きる可能性があるから、本当の勝負はここからだろう。マシンのフィーリングは良いので決勝ではバトルを愉しみたいと思う。
ダニエル・リカルド
パワーユニットは前季からは大きく進化した。特にストレートでライバルと大きく差が付かない。
それでもドライ路面でのフロントローは想定以外の出来だ。決勝ではロズベルグがソフトで、僕らがスーパーソフトだから決勝のスタートは面白くなるだろう。フェラーリと表彰台争いができればいいと思っている。
キミ・ライコネン
今日はもっと良い結果が得られると思っていたので少し落胆した。最後のアタックでターン2のところで膨らんでしまいタイムロスしたのが敗因だ。
決勝は天候や、チーム戦略が絡んでくるから予想は難しいが、レースになれば状況は変わるだろう。より良く走って、良い結果を得たい。
【以下はマクラーレン・ホンダ陣営のコメント】
#14 フェルナンド・アロンソ(フリープラクティス)
MP4-31-02
FP1 1分40.538秒(トップとの差 +2.501秒) 11周 12番手
FP2 1分38.728秒(トップとの差 +1.832秒) 31周 11番手
この26日間、マシンをドライブできなくて本当に寂しかったですが、今日はいい気分でした。
肋骨の骨折が完治していないため、まだ少し痛みがありますが、それは当たり前のことです。ただ、この痛みは耐えられる程度です。
明日は雨の予報なので、今日はタイヤの実力を測ることが重要でした。日曜日の決勝前にドライタイヤをテストするには、今日が唯一のチャンスとなるかもしれません。
今日の結果には満足していますが、ドライコンディション時の最適なバランスを見つける必要があります。
我々のマシンにはトラクションとリアエンドのグリップ力が少し欠けているので、競争力を上げるにはいくつか変更を行う必要があります。
明日の予選がウェットコンディションとなった場合は、ベストを尽くします。ただ、我々は日曜日の決勝でのパフォーマンスに焦点を当てます。
#22 ジェンソン・バトン(フリープラクティス)
MP4-31-03
FP1 1分39.974秒(トップとの差 +1.937秒) 11周 8番手
FP2 1分38.828秒(トップとの差 +1.932秒) 28周 12番手
今日はどのドライバーもタイヤの磨耗とオーバーヒートに少し悩まされていたと思います。
タイヤの最小空気圧が非常に高いので、コース上では難しい状況でした。また、タイヤが比較的すぐにオーバーヒートするため、特にロングランでは管理が難しくなります。
マシンのセットアップに関しては、まだ改善の余地があります。ただ、我々の競争力は見た目よりも実際には少し高い可能性があると思っています。
明日の予選で雨が降って、順位が入れ替わるような混沌とした状況になるなら、ウェットコンディションは歓迎です。
もし明日ドライコンディションであれば、我々はトップ10圏内に近づけるでしょうし、Q3に進出できるかもしれません。
もし混沌とした状況になったら、大きなミスをして悪い方向にいくこともあれば、幸運をつかんで非常にうまくいく可能性もあります。私としてはリスクを取って攻めに出たいと思っています。
エリック・ブーリエ(フリープラクティス)
MCLAREN-HONDA RACING DIRECTOR
今朝のFP1では赤旗が2回出て、十分に学ぶことができなかったため、必然的に午後のセッションに重点を置くことになりました。
FP2では、多くの周回を重ねることができたものの、今日という一日に満足しているわけではありません。
ジェンソンもフェルナンドも、マシンのバランスには十分満足していないと話していますが、明日の最後のフリー走行および予選に向けたセットアップに関する方向性については、ある程度分かったつもりです。
午後の走行をみる限り、今週末はタイヤマネージメントがカギとなる可能性があります。我々はその問題にうまく対処できると感じており、興味深いながらも厳しいレースになることが予想される中国GPに向けて準備を進めます。
長谷川 祐介(フリープラクティス)
本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
フリー走行は、タイヤに厳しいサーキットのため、特にロングラン走行においてマシンが不安定となり、結果として期待していたポジションで一日を終えることができませんでした。明日に向けて、タイヤのマネージメントを工夫して安定したパフォーマンスを目指します。
ちなみにバーレーンでのジェンソン・バトン選手のマシンのICE(内燃機関)は、ハードウエアに問題が発生したため、今週末の第3戦中国GPでは新エンジンの投入が必要となってしまいました。
ウインターテストや開幕戦オーストラリアGPでは、パワーユニットの一定の信頼性が確保できていたので残念な結果でしたが、影響を受けたICEの箇所がすでに特定できているため、上海では万全の対策を講じてレースに臨みたいと思います。
第2戦バーレーンGPでのストフェル・バンドーン選手の走りを見る限り、今のマシンには中団で戦える実力があると思っているので、金曜日と土曜日のフリープラクティスではマシンのポテンシャルを引き出せるよう、レースに向けたデータとマシンのセットアップを進めていきます。
上海インターナショナル・サーキットは、低速コーナーのセクター1、マシンの左右のゆさぶりが大きいセクター2、そして3本のストレートからなるセクター3で構成されており、1ラップ内のリズムが取りにくいサーキットです。
時速300㎞以上で走行するストレートからの急激な減速が、左フロントのタイヤに大きな負担をかけるため、決勝レースではタイヤのマネージメントや適切なピットストップのタイミングが結果を左右しますので、チーム一丸となって戦略を検討し、2台の完走を目指します。
フェルナンド・アロンソ(予選セッション)
MP4-31-02
FP3
16番手 ラップタイムなし 3周
予選
Q1 15番手 1分38.451秒(オプションタイヤ)
Q2 12番手 1分38.826秒(オプションタイヤ)
今日はジェンソンも私もQ3に進出できたと思います。マシンには速さがありましたし、Q3進出に向けてタイヤとエンジンもセーブしていました。そこで、赤旗によってセッション終了となってしまったのです。
Q2の最後のラップを走り切ることができなかったのは、非常にフラストレーションがたまる結果となりました。今日はマシンにかなりのポテンシャルがありました。
ただ、考えてみると、我々はごく最近までQ2になんとか進出できるレベルだったにもかかわらず、今はQ3に進出できなかったことにフラストレーションを感じているんです。これは間違いなくいい方向に向かっている証拠です。
昨夜は赤ん坊のようにぐっすり寝ました。一度も目覚めることなく、10時間連続で眠ったので、今日はエネルギーが満ちあふれています。マシンに乗ってコーナーや路面の凹凸部を走るときには、まだ少し(骨折からくる)痛みを感じますが、今日は痛み止めは飲んでいません。
ジェンソン・バトン(予選セッション)
MP4-31-03
今年最初の2戦で使われた予選システムはうまく機能せず、人気もなかったのですが、皮肉なことに、今日はその旧システムの方が我々にとってはよかったと思います。
ただ、こういうことはよくあるものです。Q2の最初のラップでは使用済みのオプションタイヤで走行し、サーキットの路面がベストな状態になるのを待ってから新品タイヤを履くつもりでした。
他チームの数人のドライバーと同様に、我々もQ2の赤旗中断の影響を受けてしまい、フラストレーションがたまりました。
ただ、トップ10入りをわずかに逃しただけというのは、前向きな点です。(明日のレースでは)スタート時に装着するタイヤの種類を選択することができますし、使用できるコンパウンドは3種類あるので、オプションはたくさんあります。
Q1のときは水たまりがあったので、スリックタイヤで走るのは少し怖かったです。多くのドライバーがDRSを閉じたままにしていましたが、それが理由だと思います。我々もそうしました。
そういう状況では、マシンをコントロールすることができないのです。ただ、それでも今日の赤旗中断は、我々には必要なかったと思います。いずれにしても、我々は今後数戦のうちにQ3に進出します。
エリック・ブーリエ(予選セッション)
McLaren-Honda Racing Director
「我々が自分たちにとって励みになる進化を遂げているだけに、今日の予選を終えて、いずれのマシンもQ3に進出できなかったことを残念に思っています。
今日はフェルナンドもジェンソンも間違いなくトップ10入りを果たしていたはずですが、ニコ・ヒュルケンベルグ選手(Force India)が不運に見舞われたことで赤旗中断となりました。
我々は大げさな約束をすることにいつも慎重になりますが、チームが前進していることは間違いありません。Hondaとともに懸命に仕事をしながら、我々は目標に近づきつつあります。そして、我々はその道のりを楽しんでいます。
長谷川 祐介(予選セッション)
本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
天候が変化する中、マシンのセットアップが十分にまとまり、Q1、Q2の両セッションでは、Q3に進出できる高い戦闘力を示していました。
赤旗により、Q2のアタックラップをフィニッシュできなかったのは、大変残念な結果でした。明日は天候も回復・安定すると思われ、力強い走りを見せて、ポイント獲得を目指します。
中国GP 2016・予選セッション
順位/ドライバー__/チーム____/タイム
1/N.ロズベルグ_/メルセデス_/1’35.402
2/D.リカルド_/レッドブル__/1’35.917
3/K.ライコネン_/フェラーリ_/1’35.972
4/S.ベッテル_/フェラーリ__/1’36.246
5/V.ボッタス_/ウィリアムズ_/1’36.296
6/D.クビアト_/レッドブル__/1’36.399
7/S.ペレス_/フォースインディア/1’36.865
8/C.サインツ_/トロ・ロッソ_/1’36.881
9/M.フェルスタッペン/トロロッソ/1’37.194
10/N.ヒュルケンベルグ/フォースインディア/-
11/F.マッサ_/ウィリアムズ__/1’37.347
12/F.アロンソ_/マクラーレン_/1’38.826
13/J.バトン_/マクラーレン__/1’39.093
14/R.グロージャン_/ハース__/1’39.830
15/M.エリクソン_/ザウバー__/1’40.742
16/F.ナッサー_/ザウバー___/1’42.430
17/K.マグヌッセン_/ルノー__/1’38.673
18/E.グティエレス_/ハース__/1’38.770
19/J.パーマー_/ルノー____/1’39.528
20/R.ハリアント_/マノー___/1’40.264
21/P.ウェーレイン_/マノー__/-
22/L.ハミルトン_/メルセデス_/-
※予選結果は、アロンソが12番手、バトンは13番手で終えたが、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)の3グリッド降格ペナルティーにより、決勝レースでは1グリッド前のアロンソ11番手、バトン12番手からスタートとなる。