デンソー(本社:愛知県刈谷市、社長:林 新之助)とDELPHY GROEP BV
(本社:オランダ・ワーヘニンゲン、社長:Jacco van der Wekken)は4月24日、データ駆動型スマート農業の推進を目的とした基本合意書を締結した。
ちなみにデータ駆動型スマート農業とは、センサーやIoTデバイスを活用して農業データを収集し、AIやビッグデータ解析を通じて農業における栽培プロセスを最適化する手法を指す。
<記事冒頭の写真の基本合意書への調印の様子では、左から DELPHY GROEP BV Managing Partner Horticulture Aad van den Berg氏、デンソー フードバリューチェーン事業推進部担当 上席執行幹部 向井 康氏>
両社が基本合意書を締結した背景には、近年、気候変動や就農人口の減少などによって引き起こされる農業生産の不安定化と、それによる食料不足が課題となっていることがある。
このような中、いつでも、どのような環境下に於いても、誰もが安定的で持続可能な農業生産を実現することが世界的に求められている。
デンソーは、自動車領域で培った技術を活用した農業事業に取り組んでおり、施設園芸における環境制御システムや農業ハウス、全自動収穫ロボットの開発を通じて、ハウス内のIoTや収穫でセンシング技術を高めてきた。
上記、全自動収穫ロボットArtemy®に関する過去の発表は以下URLの通り< https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2024/20240513-01/ >。
一方でデルフィーは、長期にわたる栽培支援の経験を持つ専門家が多数所属している栽培コンサルティングのリーディングカンパニーという立ち位置を持つ。
そんなデルフィーが生産者に提供するQMSという栽培管理ソフトウェアは、気温や日射量などの気候データと果実の数や重さなどの作物データを植物の成長を数学的に表現した植物数理モデルに入力することで栽培計画を立案するもの。これによりデルフィーは生産者の安定的な栽培実現を支援してきた。
今回デンソーとデルフィーは、上記のような各々の強みを生かし、持続可能な農業生産を実現するべく作物の生育に必要なデータを集約し活用することで、栽培環境と栽培方法を最適化するデータ駆動型スマート農業に関する取り組みの検討を開始することに合意した。
具体的には、主に以下2つの取り組みとなる
安定的な計画栽培を実現するシステム開発
生産者が目視による観察や手作業で測定している作物データをデンソーのセンシング技術を活用し自動的に取得することで正確性が増し、当該作物データをデルフィーのQMSに入力することで栽培計画の精度を向上することが可能になる。
そして、その栽培計画を活用し、ハウス内の環境制御や作業者・自動化機器への作業指示を行うことで、安定的で計画的な栽培が実現できる。両社は、これら安定的な計画栽培を実現するための一連のシステム開発を検討していく。
デジタルツイン*4環境での栽培シミュレーションを可能にするシステム開発
デルフィーのQMSで立案される栽培計画に基づいて栽培した場合に実現される樹姿を、デンソーのデジタルツイン技術(現実世界をコンピューター上で再現する技術)を用いて3次元データで再現することが可能になる。
それにより、実際に栽培を行う前に、デジタルツインの環境下で作物の生育状況を分析・予測することができる。両社は、これら栽培シミュレーションを実現するための一連のシステム開発を検討していく構えだ。
デンソーとデルフィーは、今回の基本合意を基に、2030年までに、上記2つのシステムを相互に連携させることで可能となるデータ駆動型スマート農業の実現を目指す。そして、世界中で安定的で持続可能な農業の実現に向けた取り組みを加速させていきたい考えだ。
こうした取り組みに際し、デンソー フードバリューチェーン事業推進部担当 上席執行幹部 向井 康氏は、「このたびのデルフィーとの協業により、私たちがこれまで培ってきた、センシング技術やデジタル技術に栽培ノウハウを統合できるようになります。
従って以降は、計画生産を可能とする革新的な栽培ソリューションの実現に向けて新たな一歩を踏み出すことになりました。今後も、私たちはいつでも・どこでも・だれでも、食の安心・安全を届けるために、挑戦を続けていきます」と語っている。
対してデルフィ グループ BVで園芸部門のマネージングパートナーを努めるアード・ファン・デン・ベルク氏は、「経済的で持続可能な施設園芸の新たな形態である自律型栽培への道のりには、新しい技術の導入が不可欠です。
この道のりに、自動車産業の技術は大きく貢献するでしょう。デンソーの技術とデルフィーのQMSを統合することで、私たちは生産者の皆さまの栽培をより良くし、農業の発展に寄与していきます」と話している。
QMSの内容は以下URL(英語サイト)の通り< https://delphy.nl/en/services/data-driven-crop-management/ >