低燃費・低排出を実現した自動車運搬船「DRIVE GREEN HIGHWAY」引渡しへ


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近年話題となっているエマルジョン燃料を利用する新技術搭載などにより、大幅な環境負荷低減を実現

ジャパン マリンユナイテッド株式会社(本社:東京都港区、社長:三島 愼次郎)は、2月9日(火)、有明事業所(熊本県玉名郡長洲町)にて建造していた川崎汽船株式会社殿(東京都千代田区)向け低燃費・低排出自動車運搬船”DRIVE GREEN HIGHWAY”(ドライブ グリーン ハイウェイ)を引き渡した。

この船はパナマ運河拡張に対応した、幅広新船型の次世代型自動車運搬船となるもの。

大幅な積載車両数の増加も実現しながら、低燃費技術を採用する事により、既存船対比で輸送車両1台あたりのCO2排出量を約25%改善している。

積載貨物は、一般的な乗用車のみならず重建機類・鉄道車両等も搭載可能なデッキ構成となっている。

川崎汽船殿が立ち上げた「DRIVE GREEN PROJECT」のフラッグシップとして、環境性能に特化した機器を搭載した次世代の低燃費・低排出船となる。

同船に採用された環境技術には以下のようなものがある

1.次世代舶用主機システム
主機関水エマルジョン燃料油装置(WEF: Water Emulsified Fuel) (※1)、排気再循環システム(EGR:Exhaust Gas Recirculation) (※2)、主機関過給機カットシステムの複合技術の最適化により、大幅なNOx削減と燃料費の削減に寄与。同船には川崎重工業株式会社製のエンジンを搭載した。

(※1)・・・燃料中に細かい水滴が分散して含まれる燃料。つまり平たく云えば、燃料油(重油や灯油・軽油・廃油等)に水と界面活性剤を添加し、機械的に攪拌してオイル中に水を分散させた燃料のことである。

使用燃料が大幅に削減され、燃料が削減された分だけCO2(二酸化炭素)が削減されるので環境に良い燃料として昨今、注目を浴びている。

また完全燃焼特性に優れており、混合する空気量が大幅に絞れるのも大きな利点だ。

それに伴い窒素酸化物や粒子状物質(PM)の発生も抑え、ボイラーや内燃機関が排出するガスがもたらす環境負荷を低減させる効果がある。

(※2)・・・エンジンの燃焼空気に排気ガスを混合させることで、燃焼空気の酸素濃度が下がり、二酸化炭素濃度が高くなる。その結果、水滴が蒸発して周囲の熱を奪うことによりシリンダー内の燃焼温度が低下し、NOxの生成を抑制する効果がある。

このエンジンは川崎重工が、2011年1月から川崎汽船株式会社と共同で取り組んできた、水エマルジョン燃料を用いた船舶用次世代エンジンとなるもの。

水エマルジョン燃料とは、燃料中に細かい水粒子が分散して含まれる燃料のことで、エンジンの燃焼室内に噴射されると内包された水粒子が蒸発し、周囲の熱を奪うことにより火炎温度を低下させ、窒素酸化物(NOx)の生成を抑制する。

また、燃料噴霧の微細化、および空気導入の増加による燃焼改善により、燃料消費量とCO2排出量も大幅に削減させられる。

国際航海に従事する船舶からのNOx排出量については、国際海事機関(IMO)により2016年から3次排出量規制が実施されることになり、舶用ディーゼル機関からのNOx排出量は特定規制海域において1次規制値から80%削減することが義務づけられる。

一般的にNOx排出量は、燃料消費量およびCO2排出量とトレードオフの関係にあるため、舶用ディーゼル機関単体の設計変更や調整によってNOxを削減すると、燃料消費量とCO2排出量は増加することになる。

これに対して水エマルジョン燃料は、燃料消費量とCO2排出量を増加させずにNOx排出量を削減可能な技術として注目を集めている。

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2.SOxスクラバー
主機関および発電機関からの排ガスを、装置内で散布される海水または清水で洗浄し、SOxを分離・吸収させ、大気へのSOx排出を抑制する。同船には三菱重工業株式会社・三菱化工機株式会社製のSOxスクラバーを搭載している。

注)これらの研究開発は国土交通省の「次世代海洋環境関連技術開発支援事業」(項目1に係る部分)、及び、一般財団法人日本海事協会の共同研究テーマ(項目1及び項目2に係る部分)に採択され、実施している。

3.船首部の風圧抵抗低減形状
自動車運搬船は、喫水線上に大きな船体部を有しているため風の影響は他の船種と比べて大きくなるが、船首部の風圧抵抗低減形状により、風による抵抗を低減させている。

4.省エネ付加物
船尾の舵前端部にSURF-BULBを装備しておりプロペラ旋回流のエネルギーロスを回収し、燃料費の削減に寄与した。

5.太陽光発電システム
晴天時には車輛甲板内のLED照明相当の電力を賄うことができ、船内発電機による燃料消費を抑える。同船にはソーラーフロンティア株式会社製の太陽光発電システムを搭載した。

その他にも、高効率プロペラ、冷却海水ポンプならびに機関室通風装置のインバータ制御、発電機エンジン排ガスエコノマイザ、ボイラー水エマルジョン装置、LED照明、低摩擦塗料、遮熱塗料、最適運航支援システムなどの多様な省エネ・CO2削減技術を採用している。

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【概要】
主要寸法:全長199.99m x 幅37.50m x深さ38.23m x 喫水9.925m
載貨重量:20,034トン
総トン数:76,387
主機関:MAN B&W 7S60ME-C8.2
航海速力:20.00ノット
定員:31名
船級:NK
船籍:パナマ

ジャパン マリンユナイテッド株式会社
https://www.jmuc.co.jp/