ボッシュ、「Bosch Connected World」開催を皮切りに世界の頭脳を目指す


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IoTが空き駐車区画探し、製品管理を最適化、アスパラガスの生産量向上に貢献

独・ボッシュこと、ロバート・ボッシュGmbH(本社:シュトゥットガルト・ゲーリンゲン、代表取締役社長:Dr.rer.nat.Volkmar Denner <フォルクマル・デナー>、以下、ボッシュ)は、日本国内のビジネス・マーケットの環境下に於いては、自動車電装部品の大手ドイツ企業として良く知られた存在だ。

しかし彼の地ドイツでは「パン捏ね器」を筆頭とするキッチンマシンなどの生活家電も開発・製造する総合電機メーカーとして広く知られており、立ち位置的には、日本で言うところの「デンソー」と言うより、むしろ「日立」に近い立場にある。

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またドイツ当地では、「独ZF・米TRW連合」や、「コンチネンタル」など、自動車電装・部品業界で、直に競合するライバル企業が多いため、昨今は住環境の改善や、一般消費者向けのIoTインフラを開発する等、事業多角化に積極姿勢を見せている。

そうしたなか、同社はこの3月「Bosch Connected World」を開催するなど、新たに事業向けのIoTクラウド環境構築を本格化。

関連サービスをドイツ国内で複数の環境に於いてスタートさせた。ちなみに、このIoTアプリケーションは、先頃ボッシュ自身が独自開発したクラウド・ソフトウエア「Bosch IoT Suite」をベースに作られた。

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この「Bosch IoT Suite」は、デバイス、ユーザー、企業それぞれをつなぐために必要な全ての機能を、ワンストップで提供するサービスで、現在500万台以上の各種デバイスが「Bosch IoT Suite」を介してネットワークでつながっていると云う。

その事業の柱は3本ある。ドイツ国内は、工業国としての成熟さという面で、日本のビジネス環境と近似であるため、ここでは、わずかに先行するボッシュが、生き残りを賭けて躍進する多彩なビジネス施策を取り上げてみたい。

 

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1. コネクテッドモビリティのためのソリューション
– 利用可能なパーク&ライドスペースをセンサーが検知 –

自動車を毎日の足として活用しているドライバー諸氏にとって、「最寄りの利用可能な空き駐車スペースは、どこにあるのか?」というお題は、ごく日常的に日々起こる課題である。

これに対してボッシュは、ドイツ南西部の観光都市シュトゥットガルトで、「パーク&ライド」を利用した課題解決に挑戦応している。

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ちなみにこのパーク&ライドとは、鉄道の駅やバス停留所の近くに自家用車の駐車スペースを確保。車両をそこに停めた後、公共交通機関を使用して目的地に向かうという交通システムことだ。

自家用車による目的地への直接流入を避けることで、都市部など車両密集地に於ける交通渋滞が緩和される。

また併せて、鉄道網等の一括輸送手段を、多く人々に利用を促すことで、移動エネルギー自体の大幅な削減にもつながる。

さて上記地域に於いて同社は、通勤列車S2およびS3線の沿線にある15カ所のパーク&ライド施設で、既置されたセンサーが常時空き駐車スペースの有無をリアルタイム検知するシステムを作り上げた。

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そのデータはインターネットを介して「Bosch IoT Cloud」に送られ、駐車可能なスペースの最新マップにリアルタイムにインプットされる。

ユーザーはこうした情報を、アプリやVVS(シュトゥットガルト交通局)のHPで確認するという仕組みである。

パーク&ライド施設に、前以て空きスペースがあると分かっていれば、より多くのドライバーが自家用車を駐車して、公共交通網を利用するため、結果的に交通渋滞の減少につながる。

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このパイロットプロジェクトは、最も小規模な駐車場で49のスペースを。最も規模が大きな駐車場で520を超えるスペースが既に管理されている。

上記写真のような駐車センサーの設置は、2016年に始まり、このプロジェクトは2018年6月まで続く予定だ。
詳細:http://bit.ly/1RcZWcP (ドイツ語/英語)

 

– 疲れたトラック運転手のために駐車スペースを用意 –

高速道路沿いのパーキングエリア。そうした場所のトラック運転手向けの休憩エリアは、大抵は混雑しているのが常だ。

そうした事例はドイツのみならず、日本国内でも良く見掛ける光景のひとつである。ドイツ国内では、これが深刻化しており、特に盗難リスクが高まる夜間に問題が発生している。

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そこでボッシュは、物流管理会社、フリート運用者、個人営業のトラック運転手向けの駐車場予約サービスの提供を開始した。このサービスを利用すると、トラック運転手は安全な駐車スペースを事前に予約できるようになる。

駐車できる休憩所を探したい場合は、トラックからシステムに現在地の情報と駐車リクエストを送信すると、システムが最寄りの駐車スペースを予約し、その詳細を直接トラックのナビゲーションシステムに送る。

なお、この予約と料金の支払は自動的にキャッシュレスで行われる。同システムは、2016年夏にスタートする「Bosch IoT Cloud」上で本格作動する予定となっている。

 

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 – 安全な運転を心掛けるドライバーに割引サービスを提供 –

ドイツの大手保険会社は、安全な運転を心がけるドライバーのために保険料割引サービスを開始している。

ボッシュのオートモーティブ アフターマーケット事業部は、このサービスを実現するための技術をコネクティビティ コントロールユニット(CCU)という形で提供し始めた。

このCCUは日本に於ける旧来の機器で言うと、通信機能付きのデジタルタコグラフである。従って車両に組み込まれたCCUは、常時、加速度・最高速度・コーナリング速度のデータを収集するべく車両のOBDインターフェースに接続されている。

CCUはこの情報を暗号化し、内蔵SIMカードを使用して携帯電話のネットワークを経由、その成績を休む事無く保険会社のコンピューターシステムに送る。

保険会社はこの情報に基づいてドライバーのプロフィールを作成し、特に安全な運転を心がけているドライバーに割引サービスを提供していくという趣向だ。

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2.コネクテッドインダストリーのためのソリューション
– 輸送用ボックスを監視 –

最新鋭の製造設備が導入されてきたモノ造りの現場では、製造工程に於ける製品品質が、刻一刻とシームレスに監視されている。

その一方で、その製品がサプライチェーンの終盤に於いては、何が起きているか判らない自体に陥ることもままある。

この解決策としてボッシュが開発したのは、同社がインダストリー4.0ソリューションと呼ぶ「TraQ」(tracking and quality)だ。

この「TraQ」が存在すると、顧客の手に届くまでのサプライチェーン全体にわたり、製品の品質を性格に追跡できるようになる。

具体的には、輸送用のパッケージや、製品本体に取り付けられた低コストのタグ(電子)センサーが、輸送環境上での温度や振動、明るさ、湿度のレベルといった品質に関連する情報を記録し、これをクラウドに送信していく。

そして、クラウド上のソフトウェアがその測定値を標準的な許容レベルと比較し、これらの数値のひとつでも許容レベルを超えた場合、顧客、サプライヤー、サービスプロバイダーにリアルタイムで警告を発する。

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センサーからの位置情報も伝えられるため、予想到着時刻も算出できるようになり、輸送管理の最適化にもつながる。

このサービスにより、商品が輸送中に破損した場合でも迅速に措置を講じることができ、生産停止やその後にかかるコストを最小限に抑えることができる。

また、製品本体に組み込まれたセンサーは、輸送中とエンドユーザーが使用しているときのどちらの場合でも損傷の原因を特定するのに役立つ。

「TraQ」は目下、ボッシュがデジタルサプライチェーンのコストパフォーマンスで、優れたインテリジェント管理を実現するために取り組むためのカギを握るコンポーネントとなってきている。

なおこのセンサーソリューションは、2017年には、量産体制を背景に大掛かりに市場導入が予定されている。

 

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– 高品質なアスパラガスの生産に寄与するワイヤレスセンサー –

ボッシュは、ネットワーク化された無線センサーを利用して、大量生産されるアスパラガスの生産量も向上させようとしている。

一般にアスパラガスの生育適温は18~22℃で、この温度を保つために、片面が黒、もう片面が白の細長い両面ホイルで盛り土をカバーしている。

日光を利用して土壌の温度を上げる場合は、ホイルの黒い面が表向きになるように敷き、土壌温度が高くなり過ぎた場合には、それを下げるために白い面を表向きにしてホイルを敷く。

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こうした正確な温度維持をサポートするために、ボッシュのスタートアップ会社であるDeepfield Roboticsは、地面のさまざまな深さに埋め込んだ複数のセンサーを使用して温度を測定するソリューションを開発した。

温度の測定値は、ケーブル経由で小さなボックスに送られ、そこから無線でデータが「Bosch IoT Cloud」に送信。アプリにより農家のスマートフォンにも転送される。

農業経営者は、このデータをもとにアスパラガスの温度変化を詳細に追跡できるため、アスパラガスの成長条件を最適に保つために迅速に行動できるようになる。
詳細:http://bit.ly/1UGSLq4(ドイツ語/英語)

 

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3.コネクテッドホームのためのソリューション
– スマートホームにおける安全性と快適性 –

Bosch Smart Home Systemは、単一のプラットフォームを介して家庭内の空調、照明、火災警報器と家電製品をつなぎ、スマートフォンやタブレット端末で簡単に操作できるシステムも開発している。

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このシステムの中核にあるのはコントローラーで、この住宅用セントラル コントロール ユニットにより、上記の各種機器がインターネットで相互接続される。

その他のシステムエレメントには、インテリジェントなラジエーターサーモスタットと、センサーベースのウィンドウコンタクトが含まれる。

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スマートホームで収集されたデータは、すべてスマートホームコントローラーに保存される。つまり、ユーザーは自宅の全データを常に自宅外からコントロールすることが可能になる。

例えばユーザーが外出先で自宅の温度をスマートフォンで呼び出した場合にのみ、インターネットを介してデータが送信され、このデータは「Bosch IoT Cloud」上で送信される前に暗号化される。

将来的には、窓やドアが開いたときに、システムがスマートフォンにメッセージを送れるようになる見込みで、これにより、大掛かりなセキュリティ会社と、個別に警報システムを設置しなくても済むようになり、経済性と安全性が両立する。
詳細:http://bit.ly/1ORATbJ (ドイツ語)

 

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– 1回の訪問で問題を解決するサーモテクノロジーのエンジニア:「HomeCom Pro」 –

ボッシュのオンラインポータル「HomeCom Pro」は、サービスエンジニアと顧客の空調システムを直接リンクさせ、空調システムの状態と、既に実施済みのサービス作業が一目で分かるように表示させることができる。

そして故障が発生した場合、エンジニアはシステムの支援を受けながら問題の原因を探り、それに基づいて修理内容を提案できるようになる。

システムは空調システムの重要な全情報を、サービス会社のPC、ノートPC、タブレット端末などのデバイスに送信可能だ。

これにより、サーモテクノロジーのサービスエンジニアは実施すべき措置を事前に把握することができ、初回の訪問時に適切な交換部品を持参し、その場で修理できるようになる。なお、このソリューションも「Bosch IoT Cloud」上で作動する。
詳細:http://bit.ly/1T2jkZc 、http://bit.ly/1Kd06i3 、http://bit.ly/1RP3h1K (ドイツ語/英語)

 

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-「TrackMyTools」:私のドリルはどこ? –

作業員が自分のコードレスドライバーを探し回る必要がなくなる…。ボッシュの「TrackMyTools」があれば、どこに工具があるかをいつでも確認できる。

これにより、ワークフローがスムーズになり、時間の節約と生産性の向上につながる。

この「TrackMyTools」は、工具に小型のBluetoothモジュールを取り付けることにより機能する。同モジュールは、「TrackMyTools」アプリを起動しているスマートフォンやタブレット端末が半径30 m以内で受信できる信号を8秒毎に送信を行う。

この情報がモバイル機器から、当該機器に関する時間、ユーザー、最新の位置データといった詳細情報と共にクラウドに伝えられる。

もうひとつの利点は、ドリルやコードレスドライバーの所有者が、どこに自分の工具があり、どのように使用されているかというデータにウェブ上でいつでもアクセスできる。

また、所有者が作業員に個々の工具や機器をフレキシブルに割り当てることもできる。2015年に発売されたこのシステムは、2016年に「Bosch IoT Cloud」に移行される予定となっている。
詳細:http://bit.ly/1UsPIDb (ドイツ語/英語)

 

-「Bosch IoT Suite」でネットワーク世界の頭脳を目指す –

ボッシュは今後、こうしたクラウドソリューションを通じて、コネクテッドモビリティ、コネクテッドインダストリーやコネクテッドビルディング向けのさまざまなアプリケーションを提供していくと云う。

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最後にボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー氏(Volkmar Denner)による同構想についてのコメントを記する。

「私たちは現在、ネットワーク化された世界のために最先端のテクノロジーを結集したサービスを提供します。

この『Bosch IoT Cloud』により、ボッシュはネットワーク化およびIoT向けソリューションをフルサービスで提供できるようになりました」と云う。

また併せてデナー氏は、クラウド環境をドイツに設置することを意図的に決定したことについて、次のように強調した。

「多くの企業やお客様は、セキュリティの懸念からクラウドテクノロジーや、ネットワーク化ソリューションの利用を避けているといいます。その懸念を払拭してくれるのが、『Bosch IoT Cloud』です。

ボッシュは、このIoTクラウドを、シュトゥットガルト近郊にある自社のコンピューティングセンターで運用しています。

ユーザーは、自分のデータがしっかり保護され、安全な状態に保たれていることを把握したいと考えます。

そのため、私たちが約束するセキュリティを、常に最新のレベルに保っています。そのための法的枠組は、ドイツとEUのデータセキュリティ規制をベースとしています。

『Bosch IoT Suite』はネットワーク化された世界の頭脳に相当し、インターネットに接続したデバイス、ユーザーや企業が必要とするあらゆる機能を提供できます」と述べている。

ボッシュは今後、ネットワーク世界で、情報を中枢を握るべくあらゆるデータを集約し「世界の頭脳」を目指すようだ。