アウディ、Q7シリーズ初のSモデルとなる「Audi SQ7 TDI」を投入


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アウディ AG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、取締役会長:ルパート・シュタートラー、以下アウディ)は、ディーゼルターボエンジンに電動コンプレッサーを組み合わせた「Audi SQ7 TDI」を発表した。

同社によると、SQ7 TDIは市販のディーゼルターボSUV車の中では、世界で最もパワフルかつ先鋭的なモデルであるとしている。

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技術による先進というアウディのスローガンを体現するクルマ

SQ7 TDIの発表にあたり、アウディAGの技術開発担当取締役、Dr. シュテファン クニウシュ氏は、「先に発売したSQ5が、市場で好評を得ていることを受け、私たちはディーゼルエンジンを搭載したSモデルコンセプトを新たにQ7シリーズにも展開しようとしています。

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このSQ7 TDIは、V8 TDIエンジンを搭載しながら、燃料消費量は6気筒モデル並みに低く抑えられています。

またSQ7 TDIに採用された新技術の電動式コンプレッサーは、多くのライバルに先んじた世界初の技術であり、“Vorsprung durch Technik”(技術による先進)というアウディのスローガンを改めて体現するものとなりました」と述べている。

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強制過給システムを備えて3つのコンプレッサーが綿密に連携していく

そんな「Audi SQ7 TDI」のV8(3,956cc)4.0 TDIエンジンは、今回ゼロから同車のために新たに開発し直したもの。同エンジンは、クラスナンバーワンの出力性能と低燃費を両立し、最高水準の運動性能を持ち合わせていると云う。

このエンジンに組み合わせるツインターボチャージャーは、運転状況に応じてシーケンシャルに作動する仕組みになっており、低中負荷領域では、片方のターボチャージャーだけに排ガスが送られ、もうひとつのターボチャージャーは、高負荷領域に於いてのみ、追加される形で作動する。

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0~100km/hを4.8秒で駆け抜ける一方で、194g/kmのCO2排出量を実現

また電動式コンプレッサー自体(EPC)は、このエンジンの低回転域に於いて、このツインターボチャージャーの働きを補足する環境下で最も活躍する仕組みとなっている。

これにより発揮されるパフォーマンスは、320kW(435PS)の最高出力と900Nm/1,000~3,250rpmの最大トルク値を発揮。Audi SQ7 TDIは、0~100km/hを4.8秒で加速し、最高速度では250km/h(電子リミッター作動)に達する。

対して燃焼消費率は、新欧州ドライビングサイクル(NEDC)に於いて100km/h走行あたりの燃料消費量で7.4ℓ。これをCO2排出量に換算すると194g/kmに相当する。

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世界初の電動式コンプレッサー(EPC)と、48Vサブ電源システム

先の通り、SQ7 TDIへの電動式コンプレッサー(EPC)搭載は、市販乗用車の世界で世界初の装備となった。

EPCは、特に発進および低負荷状態からの加速時に4.0 TDIエンジンを力強くサポートして、ターボラグのないレスポンスと吹き上がりを実現する。

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ちなみにEPCの搭載位置は、エンジンが吸気するエア通路のなかで、インタークーラー下流の最もエンジンに近い位置に設置されている。

もとよりEPCは排出ガスのエネルギーを必要とせずに過給圧を発生できる構造であるから、排ガス圧を利用する従来型ターボチャージャーの弱点を克服。ターボ特有のタイムラグを完全に払拭する。

このEPCは小型の電気モーターによって駆動されるが、それでも0.25秒で過給エネルギーが提供されることから、とりわけ発進加速においてクイックなレスポンスが得られる。

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シーケンシャル過給システムの弱点を克復したアウディバルブリフトシステム

このエンジンはまた、アウディのディーゼルとしては初の、アウディバルブリフトシステム(AVS)も採用している。

これは、吸気および排気側のカムシャフトにそれぞれ、バルブごとに2つのカムプロファイルが設定されており、吸気側では、そのうち片方のカムプロファイルによって、EPCと連携してクルマの発進加速をサポート。

もうひとつのカムプロファイルで、高回転時にシリンダーの充填率を最適化して、大きなパワーが得られるようになっている。また排気側においては、AVSにより、2つめのターボチャージャー(排気タービン)の作動も可能にした。

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排気バルブからの排気の流れを完全に分離。それぞれが別個の排気タービンに導かれる

一般的なシーケンシャル過給システムの場合、排ガスで駆動される2つのタービンのうち、低回転域では1つしか作動せず、2つめのタービンは、高負荷・高回転域においてのみ作動する。

しかしアウディの新しい4.0 TDIエンジンに於いては、シリンダー毎に2つずつある排気バルブからの排気の流れは完全に分離されていて、それぞれが別個の排気タービンに導かれる設計になっている。

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エンジン低回転域では、各シリンダーの1つのバルブは閉じたままになっており、これによって全ての排ガス流が最初のターボチャージャーに流れるようになっているのである。

エンジン負荷および回転速度が上がると、AVSによりもうひとつの排気バルブが開かれて、そこからの排気圧力により、もう1つのタービンも駆動される。

48ボルトのサブ電源システムを備え、必要な大電力を迅速に供給していく仕組み

加えてSQ7 TDIの場合、EPCを駆動させる最大7kWの電力は、48ボルトのサブ電源システムから供給される。

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SQ7 TDIは、この高電圧の電源システムを採用することで、EPCのほか、エレクトロメカニカル アクティブロールスタビライゼーション(EAWS)システムの搭載を可能にした。

またそれらのシステムが必要な大電力を供給するために、このサブ電源システムには48ボルトのリチウムイオンバッテリーが搭載され、それをラゲッジコンパートメントの床下に搭載している。

12ボルトの電気システムもサポートする48ボルトの蓄電ユニット

このバッテリーは、470Whの容量を備え、最大13kWの出力を発揮。48ボルトと12ボルトの電源システムの接続には、DC/DCコンバーターを使用。

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また発電は、最高出力3kWで80パーセントを超える効率を誇る、従来のものよりパワフルでなジェネレーターにより行う。

これは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)ジェネレーターと呼ばれる装置で、ダイオードを使った一般的なジェネレーターより電気損失が少なく、高い発電効率を実現している。

さらに48ボルトの蓄電ユニットは、必要に応じて12ボルトの電気システムをサポートする。それにより12ボルトの鉛バッテリーの負荷は大幅に低下することになった。

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V8特有の官能的なサウンドは、サウンドアクチュエーターによって制御される

この「Audi SQ7 TDI」の4.0 TDIエンジンに於いて、吸気は90度のVバンクの外側、2つのターボチャージャーを備えた排気は内側に配置されている。

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このレイアウトにより、エキゾーストシステムの経路が短くなり、エンジンレスポンスが向上、排ガス浄化システムへの経路も短縮した。革新的なサーマルマネジメントと洗練されたカムシャフト/クランクシャフトの駆動方式により、フリクションが最小化している。

排ガス浄化もNOx酸化触媒に加えて、エキゾーストシステムの下流に、ディーゼル粒子フィルターと一体化してAdBlueインジェクションにより窒素酸化物を減らすSRC触媒コンバーターを搭載。

V8特有の官能的なサウンドは、エキゾーストシステムに設置されたサウンドアクチュエーターにより、さらに魅力的なものとなった。またSQ7 TDIのドライバーは、アウディドライブセレクトを使って、エキゾーストサウンドのボリュームを調整することもできる。

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機能間の最適連携や連動を可能とする次世代のサスペンション制御機能

SQ7 TDIにオプション設定された「ドライビングダイナミクスパッケージ」は、スポーツディファレンシャル、エレクトロメカニカル アクティブロールスタビライゼーション、オールホイールステアリングの3つのテクノロジーから構成されている。

併せてSQ7 TDIには、高度に統合されたサスペンションコントロールユニットが搭載されており、それにより可変ショックアブソーバー、エアスプリング、スポーツディファレンシャル、ロールフォースディストリビューションの各メカニズムを制御する仕組みだ。

サスペンションに関わる諸機能の制御のすべてを、中央のコントロールユニットで統合することで、機能間の最適な連携や連動が得られるようになった。

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スタビライザーも旧来型の油圧可変式スタビライザーから電動構造に進化

SQ7 TDIに搭載されたもうひとつの注目すべき新機構は、エレクトロメカニカル アクティブボディロールスタビライゼーションだ。

このシステムは、3ステージのプラネタリーギアボックスを備えた小型電気モーターにより、スタビライザーが2分割されているもの。

クルマが不整地を走行すると、スタビライザーがアクティブに切り離され、乗り心地を改善する。

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一方で、スポーティに走行の場合は、中空のスタビライザーが内部で連結され、捻じれに対する反発力を発揮するようになって、クルマの傾きを減らす。

加えてフロントとリヤのスタビライザーは、それぞれ別個に調整が可能。フロントとリヤのスタビライザーの働きをアクティブに調整することで、走行中のクルマの動きにポジティブな影響が生まれる。それによって、ステアリングの正確性とクルマの敏捷性が、大幅に向上する。

これによって従来型の油圧可変式のスタビライザーと比較して、48ボルト電源を用いたアウディのシステムは、大きなアドバンテージを有するようになった。

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有り体に言うとより大きなパワーを発揮し、より作動が速く、低速においても確実な作動が実現する。また純粋な電動メカニカルタイプで、オイルを必要としないため、メンテナンスフリーで、環境にもやさしいシステムになっている。

なおヨーロッパでは、Audi SQ7 TDIのオーダー受け付けは、2016年春から開始される。ドイツでのベース価格は89,900ユーロとなる見込みだ。