曙ブレーキ、アルミ素材の新構造キャリパーを世界初開発


曙ブレーキ工業株式会社(本社:埼玉県羽生市、代表取締役社長:信元久隆)は6月13日、自動車の電動化への対応と地球環境保全に配慮した新タイプの「新構造ブレーキキャリパー」を世界で初めて開発・発表した。

同社は、自らの独自技術を背景に1978年に開発したAD型ディスクブレーキ(フローティングタイプディスクブレーキ)を筆頭に、高性能車用のディスクブレーキ(オポーズドタイプディスクブレーキ)の開発で培った技術ノウハウをベースに、既存のAD型ディスクブレーキの構造を大幅に見直した。

「新構造ブレーキキャリパー」として開発した同ブレーキキャリパーは素材にアルミを用いており、最大30%の軽量化を実現し、車両の燃費向上に貢献すると共に、既存製品に対してブレーキパッドの偏摩耗を1/5程度に低減させただけでなく、車両搭載性やデザイン性も考慮した製品であると云う。

今後は、年内に同開発製品のプロジェクトを完了させ、2019年に生産体制を構築していく意向だ。

将来は新構造ブレーキキャリパーを軸として自社で継承されてきた技術と新たな差別化技術の融合と発展を図っていき、電動ブレーキキャリパーの他、商用車用、産業機械用ブレーキキャリパーなど同構造を背景とした技術の連続性を視点に、同派生技術を幅広い製品に展開していく構え。

昨今、自動車の電動化で搭載システムが複雑になる中、ブレーキに対しては、ブレーキ制動力の安定化や軽量化、低引き摺りに貢献する製品開発が求められており、今発表のディスクブレーキは既存のブレーキディスクとの摩耗を熱に置き換える構造を一部見直して刷新したもの。結果、軽量化だけなくブレーキパッド面の片減りを大きく抑えることが可能となり、制動時の安定感が向上するとしている。

また次世代ブレーキ技術に係る革新面では、先の東京モーターショーでも出展したが同社は、ひっそりと流体のなかに電気に反応する微細な成分を混ぜ込んだ「MR流体ブレーキ」の実用化に精力的に取り組んでいる。

以下は余談であるが当初、筆者は同社の新型ブレーキ発表の一報に、この流体ブレーキの実用化に関わる進展を連想したが、こちらについても順調に開発が進められている。

このMR流体ブレーキは、摩耗粉や音・振動を出さないといった環境への配慮と自動車の電動化・自動運転に対応した応答性・制御性の良さを特徴とする新しい構造の電動ブレーキ。磁場を加えると瞬時に液体から半固体になるMR流体(Magneto Rheological Fluid)を使用している。

その構造は、車両に固定された円盤とハブベアリングと一緒に回転する円盤が交互に配置されている間にMR流体が充填される構造で、ブレーキ内部に配置された電磁石コイルに電流を流し、円盤と垂直の方向に磁場を発生させることで固定円盤と回転円盤の間に鎖状粒子クラスターができる仕組み。

電気による磁場を加えると、液体中に分散された粒径数ミクロンの強磁性体粒子(鉄粉)が磁場方向に整列して鎖状粒子クラスターを形成し半固体化する。回転円盤は回転し続けているため、鎖状粒子クラスターがせん断変形を受け崩壊され、隣のクラスターとつながり、また崩壊されるという現象がくり返され、回転円盤に抵抗力が発生。この抵抗力がブレーキ力となるのである。

流体ブレーキに関しては、このように元々、制動時に発生する摩擦が発生しない構造であり、既存のブレーキ構造とは全く異なるコンセプトで組み立てられたものだ。

このためむしろ電動車との組み合わせという面で、流体ブレーキの実用化が想定通りの数年以内に成功するとすれば、こちらが電動車時代の次世代ブレーキの真打ちとして脚光を浴びるだろう。

いずれにしても曙ブレーキでは、今発表の新機能を兼ね備えた美しいデザインを追究した新構造ブレーキキャリパーで、新しい価値を提供していくとしている( 坂上 賢治 )。