ボルボトラックス、EVトラックのフルラインメーカーに


スウェーデン・イエテボリに本拠を置くABボルボ傘下のボルボトラックスは11月5日、来る2021年に欧州市場に向け大型電気トラックを発売。生産面に於いても翌2022年から量産体制に入ると宣言した。(坂上 賢治)

これを受けて来年から欧州の運送事業業者は、ヘビーデューティーレンジの大型ピュアEVトラックを同社に発注。最先端の環境車でいち早く事業を展開できるようになる。その結果、ボルボトラックスは来年早々にも、欧州に於けるEVトラックのフルラインメーカーとなる。

これは同社が欧州地域のみならず、都市を跨がる長距離輸送から、ラストワンマイルのエリア輸送に至る全レンジを通してCO2フリーのトラック輸送を、この地球上で初めて実現させることを意味する。

なおリリースされる車両は主に地域内輸送、都市内の建設事業に関わる輸送、廃棄物の輸送等に供される見込みだ。これを踏まえてボルボトラックスでは目下、大型EVトラックのFH、FM、及びFMXのテストを熱心に繰り返している。

気になる車両の仕様は連結総重量で最大44トン。輸送距離は搭載バッテリーの構成により異なるが、当初は最大で300km前後を目安にしているという。

ちなみに同社は、既に2019年から都市配送やごみ収集用のFLエレクトリックとFEエレクトリックを欧州で生産してきた。今後はこれに新たな大型EVトラックが加わる形だ。また北米では、来る12月3日から区域輸送用のVNRエレクトリックが発売される見込みだ。

ボルボトラックスのロジャー・アルム社長は「これからの10年、環境面で厳しい要求条件が問われるなかで、環境負荷の低い大型長距輸送トラックが社会から求められる時代が続きます。

従って輸送事業ではそうした要求に応え、気候への負荷を大きく減らすべく、電気などの代替燃料を使う車両を増やし、持ち前の車種ラインナップを大転換させる必要があります。

そして技術的にこれに応えられるのは、中・長距離の大量輸送を実現できるEVトラックと燃料電池トラックのみです。

当社は、来る2040年までに車両ラインアップを化石燃料を使用しない車両にすることを目指しており、2020年代後半には水素燃料電池トラックも発売する計画を立てています。

私たちはこうした大型EVトラックの生産・出荷数を急速に拡大させていくことで、輸送事業に関わる全てのステークホルダーの野心的な目標達成を支援していきたいと考えています。

しかし投下資本を筆頭に輸送事業が、輸送車両の動力源を転換させいくスピードは、事業環境下に於いて充電インフラへアクセスできる難易度。輸送業務の内容や条件など複数の変数があります。つまりその運送業者が関わる市場の性格によって社会浸透の速度は大きく異なります。

そこでボルボトラックスは、持続可能な未来社会へと段階的な移行のステップを踏み、様々な輸送事業を縁の下から推進させていくためのエンジンになりたいのです」と語る。

またアルム社長は「当車両のシャーシは、搭載する動力源並びにドライブラインから独立させるようにあらかじめ設計されてつつも、電気・ガス・ディーゼルなど搭載動力毎に独自の設計技術が投入されています。

一方で車両の仕上がりは、使用するエネルギー内容には関係がなく、ボルボブランド車としてドライバーに対する快適性、信頼性、安全性など、統一した高い基準を満たせるよう日々腐心しています。

我々のクルマ造りの哲学は操業以来一貫しており、世界の輸送事業者が必要不可欠な収益性と生産性を維持したまま、電動車両など新たな動力車へ可能な限りスムーズに移行して頂くことにあります。

そのためには、無理の無い移行計画、資金調達手段、内燃エンジン車を超える車両の完成度、充電装置とそのアクセスを容易にすること、手厚い運用サービスを含む包括的なソリューションを提供しなければなりません。

私たちは、お客様に対するグローバルネットワークをより充実させ、これまで以上のサービス品質をご提供し続けていきます」と結んでいる。