米株式市場で三菱自動車工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長兼COO:相川哲郎、以下、三菱自動車)の米国預託証券が急伸している。
この急伸の理由は、三菱自動車工業と日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス ゴーン、以下、日産自動車)が資本業務提携することで最終調整しているとの一部報道が発端となった。
具体的な報道内容は、日産が2千億円強を投じ、三菱自動車工業の発行済み株式数の34%を取得。これによって日産自動車が、三菱重工業を抜いて筆頭株主となるというもの。
同報道について三菱自動車工業並びに日産自動車では、「本日、当社と三菱自動車工業㈱との資本業務提携等に関する報道がありましたが、これは当社が発表したものではありません。
当社は同社との間で、資本業務提携等に関する様々な検討を行っていますが、現時点で決定した事実はありません。
本件に関しましては、本日開催が予定されていた当社取締役会の議題のひとつとして付議する予定であり、お知らせすべき事項が決定した場合には、速やかに公表いたします」と述べている。
ちなみに仮にこれが実現すると日産自動車は、既に現保有の既存株と併せ、目下、三菱重工業・約12%、三菱商事・約10%、三菱東京UFJ銀行・約4%で、都合約26%と、株式の約3分の1を出資する三菱グループ主要3社を抜き筆頭株主に躍り出る。
予てより、日産自動車と三菱自動車工業の両社は、軽自動車の分野で互いに合弁会社を設立するなどの協力関係を深めてきた。
また一方で、日産自動車は現在リーフを主力生産車としている追浜工場で生産余剰があるため、同工場で日産自動車自らが軽自動車の独自生産に着手し、日産ブランドの軽自動車を求める層に応えていきたいとする積極姿勢も見せていた。
実際に、この業務資本提携が仮に実現するとなれば、日産ブランドの販売店網を通じてマーケットが要望していた日産自動車に於ける軽自動車ラインの拡充がいち早く現実のものとなる。
一方、車両の生産台数を増やして、国内工場の稼働率を上げたい三菱自動車工業にとっても悪い話ではない。三菱自動車単独でのブランド力回復はイバラの道であり、現状打開を目指す同社にとっても渡りに船であるのかも知れない。
加えて日産自動車側では、これを通して三菱のEV・PHV技術を獲得できるメリットもある。
実は欧州に於いては、アウトランダーPHVに対する評価が大変高く、ルノー陣営との3社による新プラグインハイブリッド車の開発などの事業拡大の可能性も考えられる。
加えて、日産自動車にとっては手薄なタイやインドネシアに於ける三菱自動車工業のシェアも大きな魅力のひとつに挙げられる。
米国・中国で強みを発揮する日産自動車と、先に米国内生産から撤退しASEAN諸国に於いて、比較的力を発揮している三菱自動車工業の両社は、互いの強みと弱みを補完できる関係は確かにある。
両社は12日、それぞれ取締役会を開き、資本提携について決議するとされ、これが実現することになれば、両社の提携という話題だけに留まらず、世界の自動車業界再編の呼び水となる可能性もある。(坂上 賢治)
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