日本国内仕様は、3つの車種タイプでスタートを切る
トヨタ自動車は5月21日、東京都江東区の有明アリーナに報道陣を募り、新型RAV4を発表した。装いも新たとなったRAV4は、今後グローバルに180以上の国・地域へ向けて順次販売される予定だ。なお日本国内での車輌投入は2025年内の予定とされている。
そんな新型RAV4のプレゼンテーションに登壇したのは、先の通り新型RAV4がグローバルモデルとなったこともあり、取締役・執行役員でChief Branding Officer デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ(Simon Humphries)氏が登場した。
その彼によると、今回で6代目を迎えたRAV4は、「Life is an Adventure(人生は冒険)」を開発コンセプトに、誰もがRAV4で其れ其れのアクティブな生活を愉しめることを目指したという。
特に走行性能に拘りを持って仕上げたとされ、新開発のハイブリッドシステムにより加速感を向上させたと謳っている。
車種のタイプバリエーションは仕向地により異なる。日本国内向けには、「コア(都会的な仕立てのベースモデル的な位置付け)」「アドベンチャー(いわゆるオフロードを志向するタイプ)」「GR SPORT(競技シーンで磨かれた、その名前通りのスポーツ仕様としての位置付け)」の3ライン。
ちなみに米国では、例えばコア、ラギッド、スポーツの3つのラインが用意され、これに加えて個々のラインに新デザインのウッドランドグレードと、RAV4 GR SPORTが含まれる。
新型RAV4は、トヨタ初の量産型SDV車として漕ぎ出す
動力源はHEVに加え、第6世代のHEVシステムをベースに大容量の駆動用バッテリーや高出力充電器対応を組み合わせた新開発のプラグインハイブリッドシステムの2ライン。少なくとも日本国内に於いては純粋な内燃エンジン車は廃止された。
併せてAreneソフトウェアの開発環境となった新プラットフォームとなって、トヨタ・オーディオ・マルチメディア・システムの新バージョン、トヨタ・セーフティ・センス・アクティブセーフティ・スイートのアップデートなどの新技術も導入される。これによりRAV4は、トヨタ初の量産型SDV(Software Defined Vehicle、ソフトウェア定義車両)となる。
トヨタとしては、RAV4に限らず、将来に向けたアナウンスで、いずれは後付けで安全機能の追加が可能になっていくと語っていた流れもあり、今後、車両の安全面の向上などを中心に、ソフトウェアの改善に伴い、安全性や機能面が向上するようになるのだろう。
実際、サイモン氏はトヨタ初の量産型SDVとなったRAV4の当面の役割について、「自動車業界の次のパラダイムシフトは、ハードだけではなくデジタルで始まっています。
トヨタのSDVへの挑戦はRAV4から始まっていくのですが、皆さんがSDVと聞いて、まっ先に想像するのはエンタメのことでしょう。それは間違いなく大きな部分です。
EV航続距離を従来の95kmから150kmまで延伸させた
しかし、アキオ(豊田章男氏)さんにSDVの目的を議論した時、彼の答えは明確でした。いちばんの目的は、悲しい交通事故をゼロにすることだと答えたのです」と語り、トヨタがSDVを導入する大きな目的のひとつとして、より安全なクルマづくりを行っていくことを示唆した。
もちろん併せて多様なソフトウェア(アプリケーション)の追加やアップデートも可能になるから、後々の機能追加にも期待が持てそうだ。
従ってトヨタ初採用となった同社のソフトウェアづくりを支えるプラットフォーム環境「Arene」は、「安全・安心」と「移動の楽しさ」の両にらみで今後も更なる開発が続けられることになりそうだ。
さて今回、新型車となって1番にアピールしたのは走行性能の向上だ。そのひとつがEV走行による航続距離の拡大で、フロントアクスルへのシリコンカーバイド半導体の採用により、同部位の小型・高効率化を実現した。
その他の駆動伝達系に於いても損失低減を図ることで燃費を向上させたことに加えて、電池の大容量化も組み合わせてEV航続距離を従来の95kmから150kmまで延伸させている。
一方、走りの性能でもモーター出力を12%向上させた上で、トランスアクスル、パワーコントロールユニット、電池からの出力特性の改良によってモーターからトルク特性をチューニング。シームレスな加速感に加え軽やかな出足とダイレクトな駆動力レスポンスを感じられるようにし、よりパワフルな走破性やダイナミックさを狙ったとしている。
既存の車格のままで、走りも使い勝手も拡大させている
先の通りバッテリー容量の拡大に伴い、V2H(ビークルtoホーム)に対しても利便性が向上した。様々な生活シーンで電気を活用した体験がより幅広く愉しめる。そのためのDC急速充電も追加し、約30分で満充電の80%まで充電が可能になるようにした。
エクステリアデザインでは、(1)Big Foot(大径タイヤを強調)、 (2)Lift-up(高い走破性を想起) 、(3)Utility(使いやすい荷室空間)をポイントとしてデザインを仕立て直し、「どこへでも行けそう」なRAV4らしさを表現したという。
インテリアデザインでは、インストルメントパネル上面を約40mm低く配置し、見晴らしの良い視界を確保して運転し易さを実現。スマートフォンとの多彩な連携に応えるデジタルデバイスとの最適配置にも拘ったとしている。
またディスプレイやシフトなどの各種機能を、島(アイランド)のように一体的に配置するデザインとする一方で、SUVとしての平衡感覚がつかみやすい水平基調のインストルメントパネルや、目線移動が少ないナビゲーション・メーター、手が届きやすいレジスター配置などで操作性の向上にも拘った。
スマートフォンの急速充電やUSB充電の配置を工夫し、使いやすさを追求。普段はアームレストとして使用でき、裏返すとトレイにもなるリバーシブルコンソールボックスも採用している。
操作系ではシフト、電動パーキングブレーキ(EPB)ならびにブレーキHOLDスイッチを集約し運転中の視線移動や動作を最小化。シフトバイワイヤを採用した上で、ピアノブラックによる仕上げで上質さを付与させている。
室内空間のボリュームは、車両サイズを拡大させずに荷室容量を従来の733Lから749Lに拡大。リヤシート折りたたみ時の角度をさらにフラットにすることで、長尺物の収納性も向上させている。
▽米国に於けるプレゼンは同一基調ながら日本と若干異なる