トヨタ自動車、経営傘下の東京地域販社を統合して新会社設立へ


「東京ReBORN」と題し、都心の地域別課題に直営子会社として挑戦する体制を構築

トヨタ自動車株式会社(本社 : 愛知県豊田市 代表取締役社長:豊田章男)は2019年4月1日に向け、自社100%子会社であるトヨタ東京販売ホールディングス株式会社(以下、TSH)、そしてTSHの100%子会社である東京トヨタ自動車株式会社、東京トヨペット株式会社、トヨタ東京カローラ株式会社、ネッツトヨタ東京株式会社の4社を『融合』して、全く新しい業態を目指す新会社を設立する。

なお上記新体制による新たな事業会社の設立を踏まえ、今後、具体的にどのような『融合の形』を目指すのかは、これから1年間を掛けて、慎重に検討を重ねていくとしている。

ただ実際の青写真自体は、既にトヨタ内で出来上がっていると考えられるため、おそらく今後はトヨタ自動車が直接、自動車を商材に据えて、首都圏の消費者層との新たな接点の形を模索・計画・実施・検証していくものと見られる。

併せて2018年9月頃を目処に、先のTSH100%子会社のトヨタ西東京カローラ株式会社は、ネッツトヨタ多摩株式会社へ譲渡することも発表した。

さて今計画は、トヨタ自動車が2016年から温めてきた新事業モデル『J-ReBORN計画』に基づく。

『J-ReBORN計画』の概要図(Sustainability Data Book 2016「社会への取り組み」より抜粋)
『J-ReBORN計画』の概要図(Sustainability Data Book 2016「社会への取り組み」より抜粋)

この計画は、日本国内での消費人口の減少に伴い、国内の自動車市場がこのままでは縮小へと向かっていく中、トヨタ自動車と国内販売会社が一丸になって、国内の自動車マーケットをより元気に、ひいては各地域市場を活性化していくことを目指すもの。

つまり『J-ReBORN計画』とは、トヨタブランドがグループ企業として掲げる国内に於ける次世代の自動車販売プロジェクトの総称名である。

それによると、まず将来に向けて年間の日本国内に於ける自動車生産数を300万台として捉えている。トヨタは、この半数に該当する150万台を、来る2025の年間販売台数として死守していきたい意向だ。

今や世界有数の巨大自動車メーカーとなったトヨタ自動車ではあるが、その競争力の源泉は、やはり母国の日本での「モノづくり」があってこそ。

従って、日本国内のモノづくりを将来に亘って維持・発展させていくためには、年間150万台の生産台数と、その生産量を消化・支えてくれる国内マーケットが必要であるという見地に立っている。

この年間150万台の国内販売の確保に向け、リアル環境・インターネット環境などを一切問わず、消費者との様々な接点を開拓し続け、「トヨタのクルマに乗りたい」「トヨタのクルマが欲しい」と思って貰えるサービスを構築したいと、トヨタグループとして考えている訳だ。

そのためには、これまでの「トヨペット店」や「カローラ店」など、個々店舗が車種毎に縦割りで展開している製品軸展開では、自由で新しいサービスの開発は出来ないと考えた。そこで『販売チャネル』を、既存の4分割から『地域軸』主体へと水平展開していく。

これによって、これまでとは異なる全く新たな体制・働き方を創り出す。そしてこの結果、各地域毎の消費行動・地域行政の動き・他の地域企業との新たな連携強化を図るなど、既存のビジネスとは異なる新しいビジネスモデルの構築が可能になると考えているようだ。

但し、このような取り組みにあたっては、地域毎に自動車利用を取り巻く利用環境に大きな違いがあることを冷静に考える必要がある。

例えば、都心は公共交通機関が大きく発達していることから、自動車は「保有」から「利活用」へのシフトが進みつつあり、また輸入車シェアも極めて高いというある意味特殊な環境下にある。

対して郊外などの地域市場では、個々の消費者が、ひとり1台の自動車を保有し、通勤やレジャーのための愛車を利用するライフスタイルが当面に於いて安定的に継続されていくであろうことが推察できる。

そこで今施策では、特に東京地域に於ける特殊な環境下で、今後、起こりうる課題を洗い出し、自動車を利用する消費行動を分析。都市に適応した自動車利用サービスの可能性とビジネスモデルの構築を目指していく。

*融合前後の組織イメージ融合前後の組織イメージ

このため新会社の事業を大枠で二分割する。具体的にはトヨタ事業を統括するトヨタ本部、レクサス事業を統括するレクサス本部の2枠を設ける。その上で販売会社で別経営のレクサス事業を、レクサス本部に集約して効率的な店舗展開を図っていく。

一方、別枠のトヨタ事業傘下となる「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」の4チャネルは、トヨタ本部内カンパニーとして当面の体制維持を図っていく。加えて西東京カローラは地場企業に譲渡し該当地域に密着したサービス提供を進めていく。

この取り組みについて、トヨタ国内販売事業本部長の佐藤康彦専務役員は、「一言に“東京”と言っても、様々な地域、暮らし方、クルマの使い方があります。

しかし一方で“東京”は、全国最大のマーケットであり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、お客様ニーズの変化が日本国内の消費市場の中で1番最初に起こる地域であろうと想定しています。

そんな“東京”に於いて『東京ReBORN』を旗頭に、新たな直営体制とした各店舗が全国の先頭に立って、新たな消費市場の開拓にチャレンジしていくことになります。

それは、『最新のIT技術をフル活用した新しいお店づくり』を行う店舗。全チャネルのクルマを扱う『共同店舗』。

シェアリングサービスを展開する『新事業店舗』。高齢者が嬉しい『モビリティサービスを実施する店舗』。

法人のお客様に喜ばれる『新サービスを行う店舗』など、それぞれの地域課題に即した『町いちばんのお店づくり』を目指していきます。

この『東京ReBORN』で我々トヨタは、将来に於いても夢のある、魅力のある自動車ビジネスの構築を目指しチャレンジし続けていきたいと考えています」と、その抱負を語っている。

トヨタ自動車では、創業者・豊田喜一郎氏が掲げた「ただ自動車をつくるのではない。日本人の頭と腕で日本の自動車工業をつくらねばならない」という言葉を踏まえつつ、自動車利用の多様化という課題を捉えて、これを克復していきたい考えだ。

また都市部に於ける課題は、必ずしも日本国内に於ける特殊な環境が生んだ事例ではない。

例えば米国や欧州等の先進国地域にでも、自動車を「愛車」として捉えるのではなく、ひとつの交通手段として冷静に捉えている若年層世代は確実に増殖している。

このためこの消費行動の構造的な課題解決は、未来に於いては世界に通用する新たな「自動車サービス」の形になる可能性を秘めている。

トヨタ自動車では、自社のマザーカントリーである日本国内で、この課題解決の糸口を掴み、今後もモビリティビジネスのリーディング企業であることを、同社ならではのトヨタ独特の危機感を抱えつつ目指している最中であるのだ。

なお余談であるが、この策は、トヨタ自動車自身が直轄運営可能な東京都下であるから可能なことだ。

仮に同施策で成功したエッセンスを地方の販社ネットワークに落とし込む場合、個々地域の販売ネットワークを支える地場の販社経営者との連携が課題になるだろう。もし、それが成功するのであれば、このプロジェクトは自動車利用に関わる事業変革の試みとして、未来の国内産業界を支える新たな礎になっていく可能性がある。(坂上 賢治)

新会社の概要
会社名:未定
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– レンタカー・利活用事業
– モビリティサービス事業
– 損害保険代理店事業
– 不動産賃貸、管理
統合時期:2019年4月
本社所在地:東京都港区芝浦4丁目8番3号(TSH芝浦ビル)
従業員数:約7,200人
大株主及び持株比率:トヨタ自動車(株) 100%
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融合当事会社の概要
会社名:トヨタ東京販売ホールディングス
事業内容:
– 販売店事業
– 強化策の立案
– 販売店業務受託
– 不動産賃貸、管理
設立年月:2000年8月
本社所在:地東京都港区芝浦4丁目8番3号
代表者:取締役社長吉武一郎
資本金:18,100百万円
従業員数:286名
大株主及び持株比率:トヨタ自動車(株)100%

会社名:東京トヨタ自動車株式会社
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– 損害保険代理店事業
設立年月日:1946年11月
本社所在地:東京都港区三田3丁目11番34号
資本金:7,538百万円
従業員数:1,373名
大株主及び持株比率:トヨタ東京販売ホールディングス(株)* 100%

会社名:株式会社東京トヨペット
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– 損害保険代理店事業
設立年月日:1953年3月
本社所在地東京都港区芝浦4丁目8番3号
代表者:取締役社長大原 一夫
資本金:8,090百万円
従業員数:3,111名
大株主及び持株比率:トヨタ東京販売ホールディングス(株)* 100%

会社名:トヨタ東京カローラ株式会社
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– 損害保険代理店事業
設立年月日:1962年2月
本社所在地:東京都港区芝浦4丁目8番3号
代表者:取締役社長西 利之
資本金7,450百万円
従業員数:1,349名
大株主及び持株比率:トヨタ東京販売ホールディングス(株)* 100%

会社名:ネッツトヨタ東京株式会社
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– 損害保険代理店事業
設立年月日:1947年3月
本社所在地:東京都港区芝浦4丁目8番3号
代表者:取締役社長井上 尚之
資本金:5,840百万円
従業員数:1,084名
大株主及び持株比率:トヨタ東京販売ホールディングス(株)* 100%
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譲渡予定会社の概要
会社名:トヨタ西東京カローラ株式会社
事業内容:
– 自動車販売事業
– 中古車販売事業
– 自動車整備事業
– 損害保険代理店事業
設立年月:1967年3月
本社所在地:東京都多摩市関戸4丁目8番3号
代表者:取締役社長 舟橋 竹彦
資本金:2,460百万円
従業員数:513名
大株主及び持株比率:トヨタ東京販売ホールディングス(株)* 100%
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*トヨタ自動車(株) 100%子会社