トヨタグループ、豊田自動織機の非公開化で連携を加速

トヨタ不動産(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山村知秀)は6月3日、豊田自動織機の株券等に対する公開買付けの開始予定について公表した。この株式公開買付けおよび同社の非公開化を目的とした一連の取引にトヨタ自動車、アイシン、デンソー、豊田通商も参画する。豊田自動織機は、同買収提案を受け入れる。

非公開化にあたっては、新たに持ち株会社(特定目的会社/SPC)を設立してトヨタグループが株主のトヨタ不動産が約1,800億円の出資を行い、トヨタグループとの連携・協調を実現していくという。

また豊田章男氏は、本件に対するコミットメントの観点で10億円の出資を行う。加えてトヨタ自動車は議決権を持たない優先株で約7,000億円の出資を行う。

これらは上場時にトヨタ不動産、豊田 章男氏、トヨタ自動車が保有していた豊田自動織機株式を売却し、改めて一部を再出資することを予定するものとしている。

更にトヨタ自動車、アイシン、デンソーおよび豊田通商は保有する豊田自動織機の株式の売却を行い、同時に豊田自動織機が保有する株式の自己株式公開買付けを行う。

これにより、豊田自動織機と4社間の株式の持合いは解消される。なおトヨタ自動車による優先株出資は継続される。

こうした一連の公開吸い付けと株式の非公開化についてトヨタグループでは、「モビリティカンパニーへの変革に向け、ヒト、モノ、情報、エネルギーの移動に着目し、取り組みを進めています。

その中で、豊田自動織機は〝モノ〟に関し、多様化・高度化する物流現場のニーズに応えるため、フォークリフトなど物流機器の自動運転技術や物流管理のソフトウエア、環境性能に優れたパワートレインの開発に注力しており、今後はモノの動きに関するデータ活用にも取り組んでいきます。

また豊田自動織機は、このたびの株式非公開化を通じ、トヨタグループでの更なる連携強化を図り、このような取り組みをダイナミックかつスピーディーに進め、グループ変革のための〝モノ〟のモビリティ領域をけん引してまいります。

トヨタグループ各社は、グループの更なる成長の実現のため、2023年度より資本関係の見直しに取り組んでおります。

引き続き、モビリティカンパニーの最適なフォーメーションづくりやあるべき資本のあり方の協議を進め、競争力の維持・向上を図っていき、今後もより豊かな未来をつくり、必要とされ続けるトヨタグループであるため、グループ一丸となり、変革を進めてまいります」と結んでいる。

さて今計画は先の通りでトヨタグループにとって、自動車業界が厳しい変革期を迎えているなか、総額4兆7千億円を投じた上で、グループ内での持ち合いを解消するだけでなく、グループ内の連携強化を図る意図がある。

但し、公開買付け並びに株式非公開化に係り、提示された価格は1株当たり1万6300円と、直近の株価を約11%下回る水準となった。

これについてトヨタグループ側は、豊田自動織機の買収計画が4月25日に報道される前の株価を上回っており、充分なプレミアム価格による売却機会を提供できたものとしている。

しかし公開買付によるプレミアムを期待していた投資筋からは、ディスカウントの買い付けとなってことに失望の声も聞かれた。

ただこうした非公開化案件には、多様な賛否両論があり得ることでもある。一方で、これからは豊田自動織機の経営実態が外から見え辛くなることを踏まえると、今後は豊田自動織機自身の取り組みだけでなく、トヨタグループの傘下企業各社がマーケットに於ける業績や市場シェア争いなどで結果を出し、今回の判断が正しかったことを証明する必要がありそうだ。