東洋の「カイゼン」思想から生まれたポルシェ コンサルティングGmbHに3人目の新常任理事が就任


かつてポルシェAGの経営再建と緊密に関わった「ポルシェ コンサルティング」は1990年代初頭に設立された

独・ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.オリバー・ブルーメ)が全額出資する経営コンサルタント企業、ポルシェ コンサルティングGmbH。
同社は先に常任理事会を拡大し、3人目の常任理事会メンバーとして2017年1月1日付でフェデリコ・マグノ氏(44)を起用。今後、彼が自動車セクター(メーカーおよびサプライヤー)を率いることになった。

イタリア出身のマグノ氏は、ミラノのボッコーニ大学とカリフォルニア大学バークレー校で経営管理学を専攻。ポルシェ コンサルティングでの仕事に16年間携わってきた。

ポルシェ コンサルティングで3人目の常任理事会メンバーとなったフェデリコ・マグノ氏

具体的にはイタリアの子会社、ポルシェ コンサルティングS. r. l.のミラノでの立ち上げを主導し、現在は2016年の夏に開設したミュンヘンオフィスの代表も務めている。

ポルシェ コンサルティングのコンサルティング業務が大きく成長を遂げたことによって増員を図る

この3人目となる常任理事メンバーの就任に際して、ポルシェ コンサルティングの取締役会長であるエバーハルト・ワイブレン氏は、「常任理事会は、当社のコンサルティング業務が大きく成長を遂げたことによって増員を図ることになりました。

私達のルーツは自動車業界にあります。ここで経験を積み、世界中の多岐にわたる業界にコンサルティングサービスを提供しています。

ポルシェ コンサルティング取締役会長、エバーハルト・ワイブレン氏

私達は現在、特に企業がデジタル化への転換を克服するためのお手伝いに力を注いでいます。

また今回就任したフェデリコ・マグノは、経験豊かなコンサルタントであり、かつ先見の明を持っています。

さらに彼は、日々の自動車産業の動向に精通していて、厚い信頼を得ています。なおDr. ヴォルフガング・リントハイムは引き続き常任理事会の最高財務責任者を務めます」と語っている。

1994年11月12日に設立されたポルシェ コンサルティングは、従業員数はわずか4人でスタートを切った

ちなみに、ビーティッヒハイム・ビッシンゲンに本社を置くポルシェ コンサルティングGmbHは、1994年11月12日に設立された際の従業員数はわずか4人でのスタートだった。

しかし現在では380人以上を雇用、欧州地域では押しも押されぬ産業系コンサルティングの老舗企業となった。

引き続き常任理事会の最高財務責任者を務めるDr. ヴォルフガング・リントハイム氏

以降徐々に拠点も拡大し、ミラノ、サンパウロ、アトランタ、上海に子会社を展開。ドイツを代表するコンサルティング企業としての地位を固めている。

そんなポルシェコンサルティングは、実は、かつてのポルシェAGの経営再建の成功と緊密に関わっている。

90年代初頭、ポルシェ史上最大の危機を救った東洋の「カイゼン」思想を欧州に持ち込み、広げていく

ポルシェAGは1990年代初頭に、創業以来最大の危機に見舞われた。そこで当時のポルシェAGを率いていたCEO、Dr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏が、トヨタの元社員をツッフェンハウゼンの本社にコンサルタントとして招いたのである。

これは東洋で急速に拡大した自動車メーカーの「カイゼン」の考え方を導入し、ポルシェの効率と生産性、生産のフレキシビリティーをできるだけ短期間に高めようとの狙いからであった。

先のDr.ヴィーデキング氏は、「当時の経営再建努力を通じて、我々はユニークで貴重なノウハウを蓄えることができました。

そして、かつて自分たちが日本人の知恵を借りたように、自分たちの経験をステップに、他社に経営アドバイスを行ってはどうかという構想が持ち上がったのです」と、ポルシェコンサルティング設立に至るまでの経緯を懐かしく語っている。

創設当初の仕事は、パートナーのサプライヤー企業に対する体質改善指導が始まり

今から22年前の当時、発足間もないこのコンサルティング企業に課せられた最初の重要な仕事は、ポルシェのパートナーとなるサプライヤー企業に対する長期的取引関係の確立に向けての体質改善指導であった。

ポルシェ コンサルティングは、設立当初からはっきりした方針を打ち出しており、1998年からポルシェコンサルティングの専務を務めいたエーベルハルト・ヴァイプレン氏は「私たちは常に、プロセスの最適化とコストの最小化を目指してきました。

それこそが、ポルシェAGの再建を通じて学んだことです。最大の目的は、相手企業と一緒になって、シンプルな、追加投資を必要とせず、即効性のある費用対効果の高いソリューションを見つけ出すことです」と述べている。

そして今やコンサルタントチームは、様々な専門分野の出身者から成る混成チームとなっている。

エンジニア、セールスパーソン、実務経験豊かな職長などで構成され、製品開発から仕入れ、生産、さらには流通に至るすべての付加価値創出チェーンをカバーすることができる。

そうしたポルシェコンサルティングの成功は、程なくシュヴァーベン地方の企業の「カイゼン」担当者の間で評判になった。

今日では、機械、電機、食品、建設、家具・什器など、多岐にわたる業種の企業がポルシェ コンサルティングの顧客として名を連ねている。

さらにポルシェコンサルティングは、小売りと金融サービス部門の経営コンサルティング活動にも乗り出し、成功を収めた。

現在、同社は戦略的なビジョン、スマートな遂行(strategic vision, smart implementation)」の方針のもと、世界中の自動車、航空宇宙、機械、プラントエンジニアリングなどの各産業の大・中規模の企業に対して、同社のエキスパートがアドバイスを提供している。

その他にも顧客は増え続け、自動車を出発点に対応していく産業領域を拡大。今は既存の枠内を超えて金融サービス、消費財、小売業、建設分野など、多岐に亘るまでになっている。