ポルシェ919ハイブリッド、2017年のFIA世界耐久選手権(WEC)でハットトリックを狙う


ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:オリバー・ブルーメ、以下、ポルシェ)は、昨年度のFIA世界耐久選手権(WEC)を制した2台の919ハイブリッドで、タイトル防衛を目指し2017年シーズンも参戦する。

ポルシェにとって、FIA世界耐久選手権(WEC)シリーズはル・マン24時間レースが含まれるため、スポーツカーメーカーとして同社の事業戦略上、重要なタイトルとなっている。

主催者のFIAとACOが、2月3日に開いたプレス カンファレンスに於いて、ポルシェによる2台の車両、そして新たなドライバー編成のチームによるエントリーが承認された。

今シーズン、2台のポルシェ919ハイブリッドのうち、カーナンバー1には、ニール・ジャニ(33歳、スイス出身)、アンドレ・ロッテラー(35、ドイツ)、およびニック・タンディ(32、英国)の3人がステアリングを握る。

このなかでジャニは、2016年のWECワールドチャンピオンであり、6月のル・マン24時間でも優勝を果たしている。

ロッテラーは、2012年にアウディで世界選手権のタイトルを手にしているほか、ル・マンで過去3回の総合優勝を誇る経験豊富なドライバーである。そしてタンディは、かつて2015年のル・マンでポルシェに勝利をもたらしたチームの一員である。

ハットトリックを目指す2017年体制は、安定感あるチーム構成に

一方、カーナンバー2には、2015年のワールドチャンピオン、ティモ・ベルンハルト(36、ドイツ)と、2人のニュージーランド出身ドライバー、アール・バンバー(26)に加え、ブレンドン・ハートレー(27)がトリオを組む。

バンバーはタンディと共に2015年のル・マンで優勝を果たしたドライバーであり、またハートレーは2015年のWECでベルンハルトと共にタイトルを獲得している。

対してポルシェは、900 PS(662 kW)超のパワーを持つLMP1マシン、919ハイブリッドの完全な見直しを行い、2017年シーズンにル・マン24時間と、FIA世界耐久選手権の3年連続制覇を目指す構えだ。

「私達はハットトリックを狙います」とLMP1担当副社長のフリッツ・エンツィンガー氏は力強く宣言し、ヴァイザッハで働く260人強のチームと共に究極のゴールを目指している。

2015年と2016年の両年、ポルシェはチームにとって17回目と18回目にあたるル・マン総合優勝を手に入れると共に、マニュファクチュアラーとドライバーの両部門でワールドチャンピオンのタイトルを2年連続で獲得した。

最新マシンは3月31日のアウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァで発表される

この成果にエンツィンガー氏は、「シリーズ全9戦の1戦1戦が厳しいチャレンジです。勝利を手にするためにはマシンのさらなる信頼性向上が基本的な必要条件となります。

シリーズ中の6時間レースの場合、高速で延べ6時間に亘って、クラスが異なるために速度差の大きな多数のマシンの間を縫うように走行しなければならないため、毎戦が予断を許しません。最終的にはわずか何秒かの差が勝利の分かれ目になることもあるでしょう。

そしてシリーズの頂点を極めるのが、ほかのレースの4倍もの長い時間で争われるル・マンです。

この24時間レースは、ドライバーとマシンの双方を極限まで追い立てます。2017年シーズンは、最上位のLMP1カテゴリーに於いて昨年も競い合ったトヨタが手ごわいライバルとなることでしょう。

われわれは隅々まで改良を施したポルシェ919ハイブリッドと6人のトップドライバーから成るチームで、ライバルを迎え撃ちます」と述べた。

ポルシェのプロトタイプマシン、919ハイブリッドの進化がどのようなマシン造りに結実するのかについては、来る3月31日にアウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァでの発表を待たねばならない。

その後、4月1日と2日にイタリアで開催されるFIA WECプロローグに於いて、全チームが合同で公式テストを行う。

今年のチームマネージャーは、アンドレアス・ザイドル氏が引き続きテクニカルディレクター代理も務める。

WECは新技術への挑戦として理想的なプラットフォーム

WECでは、クラス1ル・マン プロトタイプ(LMP1)部門に於いて、効率性に関して独自のレギュレーションが定められている。このためWECは、ポルシェにとっては極めて理想的なプラットフォームとなっている。

2014年に、ポルシェがこのモータースポーツの最高峰のひとつに復帰するきっかけとなったのが、このレギュレーションであった。

他のレースにはない高い自由度が、エンジニアに与えられる同レギュレーションにより、従来とは異なるドライブ コンセプトを取り入れることが可能となった。

そのためには先進的なテクノロジーを導入して、ハイブリッド化、エンジンのダウンサイジングによる高効率化、広範囲におよぶ軽量化などに取り組むことも求められる。

その結果、WECは、ポルシェAGが市販スポーツカー向けの革新技術を開発し、テストするための理想的なプラットフォームになったのである。

ポルシェ919ハイブリッドのドライブ コンセプト

919のハイブリッドドライブは、ライトサイジングターボ(小排気量およびターボ化)テクノロジーと、効率的な直噴システムを組み合わせた2リッターV型4気筒エンジンと、2つの異なるエネルギー回生システム(前輪のブレーキおよび排気ガスエネルギー)からの電力を蓄えるリチウムイオンバッテリーで構成されている。

919ハイブリッドは、プロトタイプカーとして唯一、ブレーキング時だけでなく、加速時においてもエネルギー回生を行い、システム合計で900 PS(662 kW)を超える出力を誇る。

またポルシェは、すでにこのハイブリッドカーが備える特徴の多くをロードゴーイング スポーツカーの開発にも活用している。

その代表例が電圧800Vの技術を使った純粋な電気自動車のコンセプトスタディ、ミッションEである。このクルマの大きな特徴のひとつは極めて短い時間で充電が可能な点にある。ポルシェは同4ドアスポーツカーを2020年までに市販に移していく予定だ。

2017年WECスケジュールは以下の通り

(※)3月31日:モンツァにてポルシェ919ハイブリッドを披露(イタリア)
(※)4月1-2日:モンツァプロローグ(イタリア)

  • 4月16日:シルバーストーン6時間(英国)
  • 5月6日:スパ・フランコルシャン(ベルギー)
  • 6月4日:ル・マンテストデー(フランス)
  • 6月17-18日:ル・マン24時間(フランス)
  • 7月16日:ニュルブルクリンク6時間(ドイツ)
  • 9月3日:メキシコ6時間(メキシコ)
  • 9月16日:サーキット・オブ・ジ・アメリカズ6時間(テキサス州、米国)
  • 10月15日:富士6時間耐久(日本)
  • 11月5日:上海6時間(中国)
  • 11月18日:バーレーン6時間(バーレーン)