1938年に有機赤色顔料の専門メーカーとしてスタートした冨士色素グループ傘下のGSアライアンス( 本社:兵庫県川西市、代表取締役:森良平 博士/工学 )は6月17日、EVを開発、製造する企業として8輪EV・Eliica(エリーカ/インホイールモーター車)開発の清水浩氏を迎え入れ、新会社e-Gle Techを設立した。*写真は8輪EVのEliicaと第3世代車のWil(撮影:坂上賢治)
日本国内に於いて、急速なEV普及に賛否両論があるなか、国際エネルギー機関( IEA )の予測では世界のEV市場は2030年までに新車販売に占める割合は40%に到達すると予測。世界のEV保有台数は2億5,000万台に達すると予測している。
なかでも近年、中国・欧州・北米がEV市場を牽引している。対して日本でのEV普及率はまだ低い。これは充電インフラが少ないこと、航続距離が短いこと、価格そのものが高いことなどの課題があるため。
しかし将来的には、技術の進歩や各国の政策に係る後押しにより、EVの価格は次第に低下し、充電インフラも整備されることでEVの普及は加速すると予想されており、これを受けて日本政府も国内で2035年までに新車販売を100%電動車とする目標を掲げている。
そうした折りEV企業では、中国のBYDをはじめとする中国企業や、EV分野での先駆者イーロン・マスク氏率いる米テスラ社などが世界シェアを寡占しており、日本メーカーのEVの販売台数は限られている。
そのような状況下でGSアライアンスは、20年以上前に米テスラ社より先にEV「Eliica」を開発した清水浩氏の構想を汲み取り、新会社を設立する。
かつて清水浩氏は、慶應義塾大学発のベンチャー企業としてベネッセコーポレーション、ガリバー・インターナショナル( 現・IDOM )、ナノオプトニクス・エナジー( 現・ユニモ )、丸紅などの出資を得てEVの普及を目指す「シムドライブ」を設立。
しかし当時のインホイールプラットフォームは、当時の自動車産業にとって車体形態の全てを変えることを意味したこと。また日本企業の閉鎖的な思考から協力者が不在となったこと。量産に至るまでの資金不足などで量産には至らず、世界初のEV企業の看板を米テスラ社に譲ることになった。
一方でインホイールモーターは、ホイール(車輪)内にモーターを内蔵し、ギアを介さずに直接駆動させることで、従来の駆動モーターシステムに比べて効率的であること。省スペース化(バッテリービルトイン式フレーム)や車両設計の自由度向上があること。燃費、航続距離の向上が可能などの複数のメリットがある。
他方で、ばね下重量が重くなり乗り心地が悪くなる、ひとつのモーターが故障したら危険、振動(衝撃)に弱い、コストが高くなるなどの課題があったが、現在では、それらの課題も解決してきた。
またインホイールモーターを開発している企業は他にもあるが開発途上、仮にインホイールモーターを作れても、それを一気通貫で実際にEVと組み合わせて完成車とする技術を持つ企業は、まだ国内外に見受けられない。
そうしたなかで清水浩氏は、既に量産まで至らなかったものの実際にインホイールモーターを使用したEV試作車をこれまで十数台開発。うち9台は公道を走行することができる認証も取得しており、実技術を有している。
そこでGSアライアンスは、清水浩氏のインホイールモーターの技術を用いるEVを開発・製造する企業として新たにe-Gle Techを設立し、グループ会社した。
今後は清水浩氏の保有技術と、GSアライアンスのペロブスカイト太陽電池、白金レス(フリー)の燃料電池、植物由来のセルロースナノファイバーなどの技術を組み合わせ、新たなEV開発を目指す。併せて将来的にはモーターの性能を左右するネオジム磁石やインバーターの研究開発を進める可能性もあるという。
会社概要
会社名: GSアライアンス株式会社(冨士色素株式会社グループ)
代表者: 代表取締役 森良平博士(工学)
本社所在地: 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容: カーボンニュートラル、脱炭素、SDGs課題に取り組む環境、エネルギー分野の最先端技術の研究開発
URL : https://www.gsalliance.co.jp/