フルサイズクラス由来の運転支援機能や快適性を付与
独アウディは6月16日(独・インゴルシュタット発)、当地に於いて3代目コンパクトSUVの新型Q3を初披露した。2011年に初デビューしたQ3は、これまで200万台超が販売され、アウディのコンパクトセグメントを支えるだけでなく、今やアウディの屋台骨を支える最量産車種のひとつとして重要なポジションを占めるクルマになっている。
当地に於ける受注開始は夏頃の予定で販売は今秋10月を想定。ハンガリー・ジェールおよびドイツ・インゴルシュタットの工場で生産される予定としている。
まず標準モデルのパワーユニットは、マイルドハイブリッドを組み合わせた1.5リッター4気筒ガソリンのTFSI 110 kW(150 PS)・トルク360 Nm。これに7速Stronic(Sトロニック)を組み合わせた前輪駆動となっている。
なおエンジンユニットは、低・中負荷時に第2および第3シリンダーを一時的に休止させるシリンダーオンデマンド(COD)システムを搭載した。
よりパワフルな仕様は、2.0リッター4気筒ガソリンTFSI 195 kW(265 PS)・トルク400 Nm、これに7速Stronic(Sトロニック)を組み合わせたquattro(4駆)システムとした。
長距離走行により適したプラグインハイブリッド(PHEV)ユニットのe-hybridは、エンジンと電動モーター(85 kWおよびトルク330 Nm)を組み合わせたシステム全体で200 kW(272 PS)および400 Nmの最大トルクを発揮する。
その構造は総電力容量25.7 kWhの高電圧バッテリーを搭載しながらも外形寸法は従来モデルとほぼ同一、しかし蓄電容量はほぼ2倍の正味容量19.7 kWhになっている。
バッテリーは96個の角形セルで構成され、4つのモジュールに分割されており、従来よりも多くのエネルギーを蓄えることができる。セル化学の最適化とパッケージの改善により各モジュールの充電容量は従来の37 Ahから73 Ahへと向上したという。
これにより、WLTPテストサイクルでの電動航続距離は、最大119 km(参考値)に到達。Audi Q3 SUV e-hybrid 200 kWは、理想的な条件下で最大50 kWのDC充電に対応し、電動走行による快適な移動を可能にする。
なお10 %のバッテリーを80 %まで充電するのに掛かる時間は30分未満。Audi独自の充電サービスであるAudi chargingにより、ヨーロッパ28カ国における多数の充電ポイントへのアクセスが可能としている(オプション)。
新しいダンパーシステムによる快適性とパワーの両立
エンジンに加えてドライビングダイナミクスも大幅に改善したという。特に新開発の標準サスペンションは、日常使いに適していて俊敏性に拘った。用意されるサスペンションシステムは、スチールスプリングサスペンション、スポーツサスペンション、そして2バルブダンパーコントロール付きサスペンションとなっている。
上記のダンパーコントロール付きサスペンションは、路面の状態およびその時の走行状況に合わせて連続的に反応。その際、ステアリング、ブレーキング、アクセルなどのパラメーターを考慮に入れ、理想的な減衰力が各ホイール毎にコンマ数秒で計算され、ショックアブソーバーにより調整される仕組みだ。
より素早く反応する2バルブダンパーにより、ボディとサスペンションの連携がよりスムーズかつ高精度になった。
同時に、伸び側および縮み側のステージを個別に独立して制御することができるためドライビングダイナミクスもそれに合わせて最適化される。
更にオプション装備のプログレッシブステアリングシステムで、その俊敏さに磨きかが掛かる。具体的にはステアリングを切り終わるにつれて、ステアリング比は大幅に減少し、より高い取り回し性が実現される。
ステアリングの動きは、よりダイレクトにホイールへと伝わり、ステアリングホイールを通して応答性がより明確に体感できるようになるため、より豊かなステアリングフィールが得られる。
ボディ造形に見られるエクステリアでは、先代モデルよりボリューム感を持つ丸みを帯びたセクションと直線を組み合わせることで押し出し感を強調している。
側面から見ると、ヘッドライトとリヤライトの間にある水平のショルダーラインが、車両を視覚的に2つの部分に分けており、これが光と影を織り成している。
フロントセクションには、鋭さを感じさせるデジタルマトリックスLEDヘッドライトが組み込まれた。これにはAudi Q3で初めてマイクロLEDモジュールが使用されている。このマイクロLED技術の採用により、照射性能が大きく向上、路上での強いコントラストが確保される。
ライトにはガイダンス機能を持たせており、LED技術を用いたデジタルデイタイムランニングライトは、片側につき23個のセグメントで構成。個性的なライトシグネチャーを生み出して道路上でAudiであることを、ひと目で認識できるようにした。
一方のリヤセクションには、オプションのデジタルOLEDリヤライトが搭載できる。これは連続するLEDライトストリップと発光するフォーリングスによって生み出されるもの。こうしたライティングテクノロジーも新しいAudi Q3を主張する一部となっている。
高いCd値の背景は、高速走行時の音響快適性の確保にある
タイヤ幅は215mmから235mmへと拡大さたのに伴い、ホイールデザインも刷新された。標準で17インチから最大で20インチまでのラインナップを用意。
Audi Sportでは、19インチおよび20インチサイズで合計5種類のホイールデザインがあり、5アームトライポッドデザインの20インチホイールやマルチスポークSデザインの20インチホイールもここに含まれる他、ブラックメタリックのダーク仕様も用意される。
空力性能と車両全体の静粛性は、先代モデルと比べて大幅に改善された。空気抵抗係数(Cd値)0.30。更により重点が置かれたのは主に音響快適性にある。
インテリアは、合計9種類のパッケージが用意される。インテリアはユーザー中心の設計であるだけでなく、サステナビリティも考慮して設計された。
木材部分には、成長が早く耐久性のある木材を使用。Impressumクロスのインテリア要素は、100%再生ポリエステルで作られている。
Expedition、Impressum、シングルカラークロス、マイクロファイバーのファブリックもすべて再生ポリエステルとなる。ベルベット調ベロアのフロアマットは、使用済み漁網やカーペットの端材、産業廃棄物から作られた完全再生ナイロン繊維のEconylで作られる。アウディはこのように、Audi Q3においても将来志向で効率的な資源利用に注力している。
また新しいステアリングホイールコントロールユニットを搭載したことで、その分、センターコンソールに多くの収納スペースが確保できている。ちなみにステアリングホイールコントロールユニットには、2つの新しいステアリングコラムレバーが初統合されている。
右側のレバーはシフトセレクターとして、左側のレバーはライト機能およびワイパー操作用のコントロールエレメントとして機能する。また、Audiのコンパクトセグメントでは初めてフロントサイドウィンドウにアコースティックガラスをオプションで装備可能とした。
これは車両内のシーリングと断熱の最適化と組み合わせることで、調和のとれた音響コンセプトが実現されるもので、これにより優れた室内音響が確保されたという。
Audi Q3は日常における理想的なデジタルパートナーに
そんなAudi Q3のインフォテインメントシステムは、オペレーティングシステムとしてAndroid Automotive OSを使用する。YouTubeなどのサードパーティ製アプリは、Audi Application Storeから利用可能。MMIに直接統合されているため、使用の際にスマートフォンは不要となる。
学習型音声操作アシスタントのアウディアシスタントは、さまざまな車両機能を操作するために活用できる。
このアシスタントはAIによって強化されており、車両に直接統合されている。今回初めてMMIのセンタータッチディスプレイにアバターが表示される。更に作動中にはヘッドアップディスプレイまたはアウディバーチャルコクピットにもアイコンとして表示され、アウディアシスタントが理解した入力内容は、メーターパネルにも表示される。
トランク容量は488リッター。シートベンチを折り畳むと収納スペースは最大1,386リッターに拡大する。シートベンチは前後にスライド可能で標準で角度調整も可能。牽引能力では最大2,100kgまで応えられる。けん引車のヒッチ(トウバー)部分の最大垂直荷重は90キログラムだ。
先にも記述した通りだが、この新型Audi Q3は今年10月に発売予定で、ドイツ国内では夏からオーダーが可能。車両生産はハンガリー・ジェールおよびドイツ・インゴルシュタットの工場で共同生産される。
最後にAUDI AG CEO ゲルノート デルナー氏(Gernot Döllner)は、「Audi Q3は、初代モデルの発売以来、全世界で累計200万台以上販売された、アウディで最も売れているモデルのひとつで、製品ポートフォリオの中でも高い地位を占めています」と述べた。
更にこれに併せてAUDI AGで技術開発担当取締役を務めるジェフリー ブーコ氏(Geoffrey Bouquot)は、「Audi Q3の第3世代の登場で、重要なモデルファミリーはアウディのプロダクト・イニシアティブの一環として刷新され、また、力強いプラグインハイブリッドおよび効率的な内燃エンジンを導入して、アウディのラインアップを強化します。
この新型モデルは、効率性、ドライビングダイナミクス、快適性を兼ね備えています。効率的で部分的に電動化された内燃エンジンに加えて、Audi Q3は、快適性とダイナミクスのバランスを可能にする新しいアダプティブサスペンションを提供します。
またコンパクトセグメントのAudi Q3のインテリアには、フルサイズクラスのデジタルステージを採用しています。革新的な操作コンセプトと多数のアシスタンスシステムが、安全性と快適性を高め、Audi Q3を日常における理想的なデジタルパートナーにしています」と付け加えた。