富士経済、CFRP/CFRTPの世界市場を調査


総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(本社:東京都中央区、代表取締役社長:清口 正夫)は、既存材料を代替、採用アプリケーションの増加、マテリアルベースでの低コスト化、短時間成形加工技術開発の進展など、今後さらに普及が加速するとみられるCFRP/CFRTPの世界市場を調査した。

その結果を「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2018」にまとめた。

この調査では、PAN系炭素繊維に各種樹脂を含浸させて成形加工した複合材料「CFRP」と「CFRTP」について、業界構造をはじめ、タイプ別や用途別、需要エリア別の動向のほか、課題・問題点、開発動向などを分析し、世界市場の現状と将来を展望した。併せて、炭素繊維やマトリクス樹脂をはじめとしたキーマテリアル、中間基材、成形加工装置、接着剤などの炭素繊維複合材料関連市場についても調査・分析した。

さらに、主要な炭素繊維/中間基材/成形加工メーカーに加え、主要ユーザーである航空機メーカーや自動車メーカーの事例分析を行った。

<調査結果の概要>
1.PAN系炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場
※端材利用:端材利用CFRP/CFRTP。加工時に発生する端材を利用したリサイクルPAN系炭素繊維複合材料

CFRPは、PAN系炭素繊維にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させて加工した複合材料である。

市場は2017年に1兆3,639億円が見込まれ、2030年には4兆3億円が予測される。航空機用途が4割以上を占める。

需要は航空機や風力発電ブレード、自動車、スポーツ・レジャー用品用途などが中心であり、今後も堅調な増加が期待されるが、特に自動車用途が増加する。自動車用途は骨格・構造部品で採用が増加し、2030年に数量ベ1兆4,254億円、2016年比9.3%増、4兆3,864億円、2016年比3.4倍というペースで航空機用途と並ぶ規模へと成長する。

自動車メーカー各社が利用技術の研究を進めており、短時間成形技術の改良が進むとみられ、成形コストが低下することから需要が増加すると予想される。

航空機用途はBoeingやAirbusなどの航空機生産計画に伴い安定的に市場成長していくとみられる。水素タンクや圧力容器(CNG)用途は水素タンクの需要がFCV市場に連動して増加するため、2030年にかけ市場拡大が予想される。

風力発電ブレード用途は、今後市場拡大が期待される洋上風力発電プロジェクトにおいて、5MWクラス以上の大型ブレードが用いられることから軽量化を目的に採用が有力視されている。

採用には低コスト化が焦点である。建築・土木用途は、中国や欧米の建造物や橋脚などをはじめとする補強で需要が増加している。

CFRTPは、マトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を使用したPAN系炭素繊維複合材料である。CFRPの課題である成形加工時間を大幅に短縮することが可能であり注目されている。

短/長繊維(繊維をカットした不連続繊維)のペレット加工品と連続繊維のラミネート加工品があり、現状、短/長繊維のペレット加工品は、ATMなどの自動機器の静電・摺動部品、掃除機やエアコン、ノートPC、カメラなど家電・OA製品、自動車のフレーム部品などで採用されている。

新たな用途として車載センシングカメラ向けがあり、自動運転技術の搭載普及とともに伸びが期待されるなど、今後も堅調な需要増が予想される。

連続繊維のラミネート加工品は、航空機用途などで限定的な需要となっているが、2025年から2030年にかけて自動車の骨格・構造部品で採用が本格化し自動車用途が急増するとみられる。

端材利用CFRP/CFRTPは、加工時に発生する端材を利用したリサイクルPAN系炭素繊維複合材料である。

石油・ガス搬送などにおける海中パイプ、各種電子部品における静電対策部品、スポーツ・レジャー用品など、多用途で小口分散的に需要が発生している。自動車分野ではBMWが採用している。

また、中国自動車メーカーのCheryは、大手リサイクル炭素繊維メーカーのELG Carbon Fibreと共同でEV向けに端材利用CFRPの研究開発を進めている。

自動車分野は部品・部材のリサイクルニーズが強く、今後採用が広がると想定される。航空機用途ではAirbusが採用目標を掲げている。

主要用途の世界市場
自動車用途は燃費規制への対応として、軽量化による燃費向上を目的に今後採用が増加していく。自動車メーカーによるCFRP/CFRTPの利用技術が向上し、2025年前後から量産モデルへの採用が本格化すると予想される。

EVやPHVをはじめ、車体価格が500万円から1,000万円クラスの準高級車クラスでも燃費向上を目的に採用が徐々に進むとみられる。いずれも自動車メーカーでは開発コスト削減を目的に車体プラットフォームを共通化させているため、採用開始後は急激な需要増加が予想される。

長期的には端材利用CFRP/CFRTPの市場も拡大する。現在、市場は端材利用CFRPのみであるが、CFRTPが2025年から2030年にかけて本格的な実用化時期を迎えることから、端材利用CFRTPの採用も始まるとみられる。

2030年に自動車用途の市場は6,631億円が予測されるが、その6.8%にあたる452億円が端材利用CFRP/CFRTP市場となる。

航空機用途は自動車用途と違い量産性が求められないことから、加工性よりも品質を重視した材料選定が一般的である。

航空機用途で採用されているのはほぼCFRPである。CFRPは一次構造材をはじめ、二次構造材、内装材、ヘリコプター、軍事機などで幅広く採用されている。

CFRTPはエンジンなどの耐熱部品や小型の一次構造材部品に採用されている程度で、今後も熱硬化性樹脂では対応できない水準の高耐熱性や機械特性が要求される部位への採用が中心になるとみられる。

市場は、Boeing「787」やAirbus「A350 XWB」といった機体重量に占める炭素繊維複合材料比率が50%程度の機体が増産されており、年率10%を超える伸長が続いている。今後、短・中期的には、Boeing「777X」といった大型機に加え、Boeing「797」やAirbus「A320」の次期モデル、三菱航空機、United Aircraft、COMAC、Bombardier、Embraerなど
によるリージョナル/ビジネスジェットの生産が本格化するため需要の増加が期待される。

長期的(2030年前後)には、Boeingの「737」シリーズの次期モデル「Y1」プロジェクトやAirbus「A320」の次期モデル「Airbus NSR」プロジェクトなど、前継機より炭素繊維使用量が多い機体の生産が開始されるとみられ、市場拡大が予想される。

なお、端材利用CFRP/CFRTPに関しては試験的な利用など、市場は限定的である。今後は、Airbusが2020年から2025年にかけて生産工程で発生したCFRP端材の多くをリサイクル産業に流通させ、一部を航空機部品で採用することを計画しており、2025年前後に市場が本格的に形成されるとみられる。

圧力容器用途は、大半がCFRPで、CFRTPは僅少である。2016年は、2015年に引き続き原油価格が低調だったことからCNG(圧縮天然ガス)タンクの需要が伸び悩んだ。

一方、韓国では拡大の遅れが見られたが、日本や欧米ではFCV市場が拡大したことから、車載用/水素ステーション用高圧水素タンクの需要が増加した。

今後は中東諸国の原油減産計画や世界各国におけるディーゼル自動車の廃止政策などによってCNGタンクの需要の回復が期待される。また、FCV用高圧水素タンクの需要が市場拡大をけん引すると予想される。

2.PAN系炭素繊維の世界市場
繊維形態としては、連続繊維と繊維がカットされた不連続繊維(5mm前後以下の短繊維と5mm前後以上の長繊維)に大別される。

短繊維は成形性や分散性に優れる一方、成形品の機械強度は長繊維と比較して低い。長繊維は成形品の強度や弾性率、耐摩耗性、摺動性、熱伝導率、電気伝導性、電波遮蔽性、寸法安定性などに優れるが、射出成形時のサイクル性が低下し、成形コストが上昇する上、加工技術のハードルも上昇する。

連続繊維は複合材における炭素繊維の含有率が高くなるため、不連続繊維に比較して機械強度に優れた成形品が得られる。

2017年の市場は前年比9.3%増の1,980億円が見込まれる。現状はCFRP向けが大部分を占めている。

今後もCFRP向けは伸びる。一方、CFRTP向けは2025年頃から自動車用途でCFRTPの採用が本格化しはじめることから伸び、2030年には数量ベースで全体の20%近くを占めるまでに増加するとみられるが、自動車業界は価格要求が強いことから、金額ベースの市場構成比は11.4%にとどまると予測される。

【調査方法】
富士経済専門調査員による参入企業及び関連企業・団体などへのヒアリング及び関連文献調査、社内データベースを併用
【調査期間】
2017年10月~2018年1月

資料タイトル : 「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2018」
体 裁 : A4判 468頁
価 格 : 書籍版 180,000円+税
PDF+データ版 190,000円+税
書籍/PDF+データ版セット 210,000円+税
ネットワークパッケージ版 360,000円+税
発行所 : 株式会社 富士経済
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