FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第18戦ブラジルGP(開催地:サンパウロ・インテルラゴス、11月13~15日)の決勝レースが11月15日、1周4.309kmのオートドロモ・ホセ・カルロス・ペースを71周する形で行われた。
前日の予選では、ニコ・ロズベルグ(メルセデス)が5戦連続のポールポジションを獲得。僚友のルイス・ハミルトン(メルセデス)が2番手で定番のフロントロウ独占。これにセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が続く。
バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)は、予選4番手と好位置につけていたが、フリー走行時のレッドフラッグ提示中に他車を抜いたことで3グリッド降格の7番グリッド。
予選9番手のダニエル・リカルド(レッドブル)は、新エンジンの搭載により10グリッド降格の19番手。
予選11番手のフェリペ・ナッサー(ザウバー)は、Q1でフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)の走行を妨害したとして13番グリッドに降格。
10番グリッドからスタートする筈だったカルロス・サインツ(トロ・ロッソ)は、トラブルに見舞われてピットレーンスタートに。エンジントラブルで予選走行が叶わなかったフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)は20番グリッドからのスタートとなった。
スタート直前の気温は26度、路面温度41度、湿度70%の曇り空。ピレリから用意されたドライタイヤはミディアムコンパウンド(プライム)とソフトコンパウンド(オプション)で、大半のドライバーがソフトコンパウンドを選択した。
レースはここの所の定番で、ハミルトン(メルセデス)が、ロズベルグ(メルセデス)を抜きに掛かるが、ロズベルグは踏ん張ってトップポジションを死守。
ピットレーンからコースインしたサインツ(トロ・ロッソ)は、早々にコース上でマシンが潰えてリタイヤとなった。
結果、イエローフラッグが出て、レース初旬はロズベルグ(メルセデス)、ハミルトン(メルセデス)、ベッテル(フェラーリ)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、ボッタス(ウイリアムズ)、ダニール・クビアト(レッドブル)、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、マックス・フェルスタッペン(トロ・ロッソ)と続く。
19周目にハミルトン(メルセデス)はトップを走るロズベルグ(メルセデス)に急接近する。しかしかわすまでには至らず、ほぼ等間隔でロズベルグ(メルセデス)、ハミルトン(メルセデス)、ベッテル(フェラーリ)、ライコネン(フェラーリ)という並びで膠着状態になる。
以降33周目にマルドナド(ロータス)とマーカス・エリクソン(ザウバー)が接触。マルドナドに5秒のペナルティが科された。
周回数も50周に迫る頃、ハミルトン(メルセデス)は幾度となくロズベルグ(メルセデス)との僅差を詰める。
しかしロズベルグは、終盤になってペースアップを敢行して後続を引き離しに掛かる。結果、ロズベルグはハミルトンを7.7秒引き離した状態でチェッカーフラッグを潜った。
ロズベルグに続いたハミルトンの後方に、3位ベッテル(フェラーリ)、4位ライコネン(フェラーリ)が続き、5位ボッタス(ウイリアムズ)、6位ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、7位クビアト(レッドブル)。
これに続いたマッサ(ウイリアムズ)は、レース前のタイヤ測定でトレッド温度が規定値を超えていたため脱落。これによって8位はグロージャン(ロータス)。
9位フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、10位マルドナド(ロータス)、11位リカルド(レッドブル)、12位ペレス(フォース・インディア)、13位ナッサー(ザウバー)、14位ジェンソン・バトン(マクラーレン)、15位アロンソ(マクラーレン)、16位エリクソン(ザウバー)、19位ウィル・スティーブンス(マノー・マルシャ)、20位アレキサンダー・ロッシ(マノー・マルシャ)となった。
ニコ・ロズベルグ(1位)
「また素晴らしい観衆の前で素晴らしい勝利を飾れた。歴史ある偉大なサーキットで勝てて嬉しい。
終始レースをコントロールできた。また最後は、ルイスにマージンを持って勝つことができた。チームの3ストップ戦略にも感謝したい。
アブダビもこのままプッシュし続けたい。僕がなりたいのは1番だ。だから、本当はもっと腕を上げなければならなかったが、それが充分ではなかった。
それと、この瞬間も僕の想いは、パリ襲撃事件に影響された人々の家族や、友人たちと一緒であることを伝えたい」
ルイス・ハミルトン(2位)
「インテルラゴスのコースは好きだけど、オーバーテイクするのは難しいコースだ。今回はニコのすぐ後ろまで迫っれたけれど、DRSゾーン(可変リアウイング)の長さが足りず、オーバーテイクが出来なかった。
つまるところニコは素晴らしいレースをした。最近は予選でもいい仕事をしている。シンガポールからクルマが少し変わり、ちょっと彼の方に傾いたようにも思える程だ。
でも、僕が目指す道は、最終戦でトップに返り咲くだけだ。またチームが決めた3ストップ作戦については、正しい判断だと信じている。
とにかくブラジルファンの前で走れたことは素晴らしかった。彼らの心は本当に愛情に満ちている。素晴らしいレースを作り上げてくれたオーガナイザーにも感謝したい。また来年会おう」
セバスチャン・ベッテル(3位)
「いいレースだった。何も失うものがないメルセデスがプッシュしていたことを踏まえれば、接近戦が演じられたこと自体に成果がある。
最もエキサイティングなレースではなかった。しかし限界までプッシュする努力はしたから、全体としてはハッピーだ。
メルセデスは強いパワーユニットがあり、2人のドライバーがいい仕事をしていることも知っている。だからこそ彼らを打ち破り難いのだが、僕らのチームにも変化が起こっている。
僕らはリズムに乗り、いくつかの表彰台を達成し、シーズン2戦目で勝利も得た。他の誰よりも進歩していると思う。
これから冬の間に他のライバルも大きく前進するチャンスがあるけれど、僕らは、みんなよりも大きなステップを踏み出したい。
僕はフェラーリ1年目のドライバーとしては、他のどのドライバーよりも数多くの表彰台フィニッシュを遂げたらしいから、来年は13回の表彰台のすべてを優勝に変えられたらいいと考えている」
ジェンソン・バトン(15位から14位に繰り上がり)
「15位(繰り上がりを知る前)で喜べるはずがないけど、レース自体はそこそこ楽しめた。クルマをプッシュできたし、コーナーではほかの人たちと戦えた。
自分たちの弱点がどこかは分かっているから、ポジティブな面に集中したが、今日は走っていてクルマの感触が興味深かった。
入賞圏から12秒遅れで終わったけれどもクルマの信頼性は高く、実際のフィニッシュ順位よりも、ライバル達に近づいたと感じている。
確かにトップに大差をつけられていることは認めよう。実際、彼らにパスされる時は、その速さに恐怖すら感じるほどだ。特にストレートではね。
しかし、中団勢として考えれば、僕らはコーナーでは結構コンペティティブだ。そこはちょっと楽しめる。
火曜日にはファクトリーに戻るから、クルマの開発をさらに続けたい。まだ改善の余地は大いにあるけど、正しい方向に進んでいる手応えはある。
そこは期待できるし、自分がインプットできるのを楽しんでいる。僕は、ロン(デニス)と彼のリーダーシップに対し、それからウォーキングと、さくらにいるチームに対して強い信頼を置いている。
みんなハードにプッシュしている。冬の間に必ず大きな進歩を遂げるよ。来シーズンが本当に楽しみだ。
僕らは一生懸命に仕事をしている。今までにほかのどのチームよりも多くのパーツを製造したはずだし、それらは機能している。ここでも新しいフロントウイングを使ったから、火曜日にMTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)に戻ってデータを分析し、それが前進につながったかを確認したい。
できれば次のレースのアブダビでは、もう少しいいところを見せたい」
フェルナンド・アロンソ(16位から15位に繰り上がり)
「最近のレースではリタイアに苦しんでいたから、今日の僕らの一番のプライオリティはフィニッシュすることだった。
2台ともチェッカーフラッグを受けて、データを収集できたというのはいいニュースだ。
来年に向けて、特にシャシー面でいいデータが得られた。これが前進のための最善の方法だ。空力的にシャシーはすでに大きく改善している。コーナーのスピードがいい。
でも、僕らにはまだパワーが足りない。残念ながらクルマはスタートで100%機能している状態じゃなかった。
ギアによってパワーが違うクルマをドライブするのは時々不思議な感じがするよ。時にはあるギアを避けて走らないといけないこともあった。
たぶん、予選後に新品のエンジンを載せて、セットアップの時間がまったくなかったからだと思う。とにかく、2015年のレースはあと1つだけ。2016年に100%の状態で仕事を始めるのが待ち切れない」
エリック・ブーリエ(マクラーレン・レーシングディレクター)
「過去に、他のどのチームよりも多い12回もブラジルGPを制しているチームにとって、15位と16位(繰り上がりを知る前)だった今日の結果は当然ながら到底受け入れられるものではない。
しかしながら、今回もまた、ジェンソンとフェルナンドが実に力強く、実に巧みに走り、状況に立ち向かっていったが、彼らの努力は上り坂のメインストレートで妥協を強いられた。
メインストレートはずっとマシンの持つパフォーマンスを最適化するのに不利だった。
とはいえ、Hondaのパワーユニットは規則正しく機能し、レースを通して一切の信頼性が揺らぐことはなかった。この成果は、われわれが将来築いていく発展的な未来を意味している」
新井康久氏(株式会社本田技術研究所 専務執行役員 F1プロジェクト総責任者)
「初めに、今日のレースのためにFIAの協力を得てフェルナンドのマシンを準備してくれたマクラーレン・ホンダのメカニックたち、エンジニアたちへの感謝を述べたいと思います。
レース自体はプラクティスセッションほどイベントフルなものではなかった。大部分のマシンがスタートと同じ位置でフィニッシュし、われわれは15位と16位(繰り上がりを知る前)でした。
われわれが中団勢と戦うためには、レース週末の3日間をフルに利用し、マシンとパワーユニットの両方をセットアップできるようにしなければなりません。しかし、ブラジルGPではこの貴重な時間のほとんどを失ってしまいました。
2015年のラストレースはアブダビ。ここは1年前にマクラーレン・ホンダが結束した場所です。ここで自分たちの進歩を示し、現在の能力を最大限に発揮することが重要になると考えています」