アウディ、デトロイト発の「Audi h-tron Quattro Concept」車両概要公表


アウディ ジャパン株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:大喜多 寛)は1月11日(米国中央時間)、米国ミシガン州デトロイトで開催中の北米国際自動車ショーに於いてアウディAGが発表した燃料電車「Audi h-tron quattro concept(アウディ h-トロン クアトロ コンセプト)」の車両概要を公表した。

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Audi h-tron quattro conceptは、最大出力110kWを生み出す燃料電池と、瞬間最大出力100kWのバッテリーを組み合わせて推進力を得る。このため水素調達プロセスを除けば、車両単体として完全なゼロエミッションを達成している。

その水素の充填自体は、空の状態から満タンまで約4分で終了するとされ、満タンからの最大航続距離は600kmとなっている。

また併せて、アウディAGでは、自動運転と自動駐車の技術的蓄積を蓄えつつあり、同車リリース以前の2017年時点で発売を予定しているフラッグシップセダン「Audi A8」に、これらを搭載・市販化していく予定であるという。

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Audi e-tron quattro conceptと共通のフロアアッセンプリーを使用

Audi h-tron quattro conceptは、2015年のフランクフルト モーターショーでデビューしたクロスオーバー型EVのAudi e-tron quattro conceptと共通性が高い。

どちらのモデルも、アウディの縦置き動力源向けモジュールである第2世代のMLB evo(※)に基づいており、今モデルでも、異なる技術を使用したモデルであるが実質的に同一のフロアアッセンブリーを使用している。

(※)MLB evoとは、縦置エンジン用プラットフォームの「MLB」の改良版。改善ポイントは100kgに到達する車台の軽量化にある。高張力鋼板+アルミ素材の積極利用等により実現させている。

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このAudi h-tron quattro conceptでは、アウディとフォルクスワーゲンが開発した第5世代の燃料電池技術を搭載した。

各種素材の軽量化はさらに進んだようで、車重が低減し、パフォーマンス、レスポンス、サービスインターバル、そして燃費の全てが向上した。特にエネルギー効率は60パーセント向上し、この領域に限っては、既に内燃エンジン搭載車を凌駕した燃料電池車となった。

0-100km/h加速7秒以下、最高速度は200km/hに達する

積層構造となっている330の燃料電池セルは、車両前方に搭載されており、700バールまで加圧された3つの水素タンクは、パッセンジャーコンパートメントとラゲッジスペースの下に収納されている。

ちなみにすべてのタンクは、複数の層からなる構造となっている。具体的には気密性の高いポリマー製タンクが、カーボンファイバー強化プラスチックで包まれ、さらにその外側にはグラスファイバー強化プラスチックが被せられている。

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燃料電池ユニットが供給する電力は、電力放出効率が高められたリチウムイオン電池に蓄えられる。総重量が60kg以下に抑えられたリチウムイオン電池は、パッセンジャーのコンパートメント下に収められ、低重心化に貢献する。また減速時には、エネルギー回生によって電力が蓄えられる。

気になる動力性能は、最大550Nmのトルクによって0-100km/h加速7秒以下、最高速度は200km/hに達する。

車両単独でも年間1000kmの航続距離に値する電力を蓄積する

燃料電池または高圧バッテリーから供給される電力は、リアアクスルに搭載された出力140kWと、フロントアクスルに搭載された出力90kWのふたつのモーターに供給され、電動quattroシステムを構築している。

そして車体のマネジメント システムが、その時々の状況に応じて前後のモーターに配分されるエネルギーを調整し、最大のパフォーマンスと燃費性を両立させる。

加えて室内空調用のヒートポンプや、大型ソーラーパネルを搭載したルーフが、最大で1年につき1000kmの航続距離向上を実現させるに相当する320Wの電力を生み出すことで大幅な燃費向上も実現している。

2017年にAudi A8へ搭載されるドライバーサポート機能

Audi h-tron quattro conceptは、その名が表している通り、これまでアウディが自動運転のために開発したレーダーセンサー、新方式ビデオカメラ、超音波センサー、レーザースキャナなど、あらゆる技術を集約して搭載し、自動運転の将来についてのコンセプトも提言している。

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現在では、各種ドライバーアシスタンスシステムは個別にコントロールされている場合が多いが、将来的にアウディはすべてのセンサーからの情報をドライバーアシスタンス中枢システム(zFAS)に集約して一元的にコントロールするシステムに統合する。

同システムのコンピュータが、車両からリアルタイムに収集されるすべての情報を、ドライバーアシスタンスシステムおよび自動運転システムに活用していく。これらの機能は、駐車時から最大60km/hまでの高速道路での渋滞走行をカバーする。

アウディは、この仕組みを2017年にアウディのフラッグシップセダンであるAudi A8に採用して市販化に移す構えだ。

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全高を抑えたボディフォルムはCD値、0.27を達成する

Audi h-tron quattro conceptは、全長4.88m、全幅1.93mと大柄ながら、全高は1.54mに抑えられた。

フロントから力強い個性を発揮するテールレンズに向かって、まるでクーペの様にテーパー状となったダイナミックなラインがシルエットを印象づけている。

さらに張り出したブリスターフェンダーによるショルダーのフォルム、大型フェンダーや力強いサイドシルなども、逞しいキャラクターを強く表現している。

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こうしたデザインにも関わらず車体のcd値は0.27。特に高速走行時に車両周辺に発生する気流の抜けに腐心したという。さらに、ドアミラーに搭載されたカメラの形状も、エアロダイナミクスと燃費を向上させるものとなっている。

対してヘッドライトの上部セクションには、新型の超高解像度マトリクスレーザーライトを搭載。ボディサイドと上部にブルーの光を放つライトには有機ELを利用している。

またシル部には、リモートコントロールキーを持った人が車両に近づいた際に白く点灯するマトリックスLEDライトの帯を搭載。

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車両が自動運転モードとなっている際、ブルーの水平方向の光がこのシルのサイドの部分に点灯する仕組みだ。フロントのライトセクションと同じく、リアのライトセクションも2つのパートに分かれる。アッパーゾーンでは9つの赤い有機ELユニットがテールライトを構成し、その下にも3つのユニットが存在する。

乗員をもてなすセンサー機能に加え、車両情報を伝える表示機能も充実

Audi h-tron quattro conceptは、最大4人の乗客に快適な環境を提供し、最大500リッターものカーゴスペースを備えている。

乗車の際には、2つの小型センサーが車両に近づくドライバーの持つ荷物の状況を判断し、必要な場合にはテールゲイトに装着されたモニターに、アシストに関するメニューを表示する。

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ドアを開けると、そこは明るくオープンなイメージで統一されたインテリアテイストとなっている。ドライバーの正面には、非常に薄く、あらゆる形状で映像を表示することが可能な有機EL技術を利用した3つのディスプレイがある。

さらに、ダッシュボードのセンターには、有機ELを利用したアウディ ヴァーチャルコクピット用の2つのタッチスクリーンがあり、ドライバーは左側のスクリーンを利用してライトと自動運転機能を操作していく。

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一方、右側に設置された大型スクリーンは、各種のエンタテインメント、ナビゲーションの操作に加え、ドライブシステムのステイタスが表示されている。またステアリングのスポーク部分にはタッチセンサーが埋め込まれている。

ドライビングモードのセレクターレバーは、センタートンネル上部のコンソール上に位置。セレクターレバーの前にはドライブステイタスやエアコンディショナー、各種設定状況を表示する2つの有機ELディスプレイを配置した。

この2つ有機ELディスプレイの内のひとつは、ジェスチャーコントロール機能を持たせており、ドアトリムの前方部には、デジタル エクステリアミラーが装着されている。

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リアパッセンジャーシートは、快適性に優れたセパレートタイプだ。リアパッセンジャーは有機ELを利用したアウディ タブレットを介してドライバーと情報共有が可能となっている。なおこのタブレットは、リアシートに於けるエンタテインメントシステムとしても機能する。

水素供給の手段の一端も提案。完全なゼロエミッションの実現を目指す

なお気になる水素燃料の製造工程だが、これはドイツ・ヴェルルテにあるAudi e-gas製造工場から供給される。

この調達手段を利用することで、新ヨーロッパドライブサイクル(EDC)基準で100kmあたり水素消費量は約1kgとなる。

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Audi h-tron quattro conceptのエミッション性能は、単に排出ガスがゼロであるだけでなく、こうしたグリーンパワーの製造元から供給される水素を用いた場合、地球温暖化に悪影響を与える二酸化炭素の排出量もゼロで走行可能となる。つまりアウディでは、ドイツ北部にあるAudi e-gas工場を通じ、この実現を可能にする手段を用意していると謳っている。

そもそも2013年より、同工場では水から水素と酸素を分離する工程で、風力発電によって得た電力を利用してきた。

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さらに次工程では、CNG車のAudi A3 g-tronならびにA4 g-tronの走行に使用される燃料であるAudi e-gas(化学合成メタンガス)を上記工程で抽出された水素にCO2を反応させ生成する。

ドイツ国内に於いて、既に少なくないこれらの車両のユーザーが、既存のCNG供給ネットワークを通じて、ほぼCO2ニュートラルな走行が可能となるAudi e-gasカードを利用している。そして将来的には、これらの生産過程で生まれる水素を利用した究極の環境走行が可能になるというのである。

Audi h-tron quattro conceptの主な特徴

<テクノロジー>audi-japan-detroit-departure-of-audi-h-tron-quattro-concept-vehicle-summary-publication20160113-2 audi-japan-detroit-departure-of-audi-h-tron-quattro-concept-vehicle-summary-publication20160113-3

  • 回生電力の蓄電や加速力アシストに有効なリチウム-イオンバッテリーを持つ燃料電池システム。
  • エネルギー効率向上に有効な新素材を活用した、第5世代の燃料電池システム。
  • 航続距離600kmを誇る、100kmあたり水素約1kgの低燃費。充填所要時間はわずか4分。
  • 燃料電池 ユニット:燃料電池ユニット単体での最高出力110kWに加え、二次電池の最大出力100kWを保有。システム全体の最大トルクは550Nm。
  • 0-100km/h加速は7秒以下。最高速度は200km/h(リミッター制御)。
  • 電動quattroシステム:前後のアクスルに独立したモーターを設置。インテリジェントコントロールシステムが、両モーターの出力を自在にコントロール。
  • 3つのタンクに700barの高圧で貯蔵される水素の最大蓄積容量は約6kg
  • アダプティブ エアサスペンション スポーツと22インチホイールを装備。
  • 自動運転とパーキングシステムをドライバーアシスト システム(zFAS)が統合制御

<エアロダイナミクスとエクステリアデザイン>

  • リアセクションに向かって絞られた低いグリーンハウスのスポーティなSUVデザイン。
  • 全長4.88m、全幅1.93m、全高1.54mの5ドア。
  • アンダーボディ、サイド、リアのエアロパーツを可動式、ドアミラーに替わり小型カメラを使用するなど、徹底したエアロダイナミクスを追求し、Cd値0.27を達成。
  • 際立った風切音の制御。
  • マトリックスレーザーテクノロジーを使用したヘッドライトに加え、前後ライティングに有機EL採用。
  • 世界最大の車載ソーラーパネルを採用。最大320wの発電により、最大で1年につき1000kmの航続距離向上を実現。

 

<インテリア>audi-japan-detroit-departure-of-audi-h-tron-quattro-concept-vehicle-summary-publication20160113-20audi-japan-detroit-departure-of-audi-h-tron-quattro-concept-vehicle-summary-publication20160113-24

  • 最適なパッケージング:4名分のゆったりとしたスペース。荷物の素早い収納を可能とする“ラゲッジ バトラー”機能付き、容量500リッターの大型ラゲッジスペース。
  • 効率の高い室内空調を実現するヒートポンプ。
  • 操作と表示の双方を向上させた、先進的インテリアデザイン
  • インストルメンタル パネルに曲面有機ELを採用した、アウディ ヴァーチャルコクピット。
  • 有機ELを採用したアウディ タブレットによる、モバイル リアシート エンタテインメント。
  • スポークにタッチセンサーを内蔵したステアリング。
  • 多様なネット接続を可能にする、LTE経由によるオンライン コネクト。