STマイクロ、次世代自動車向けの車載用マイコンを発表


STマイクロエレクトロニクス( STM )は4月18日、次世代の拡張可能メモリ「xMemory」を組み込んだ新しい車載用マイクロコントローラ(マイコン)「Stellar」シリーズを発表した。

同製品は、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発と電動化プラットフォームの進化という困難なプロセスを刷新する。

xMemoryを搭載したStellarマイコンは、メモリ拡張できる革新的なマイコン。コスト・パフォーマンスの優れた効率的なソリューションを提供し、メモリ容量の異なる複数のマイコンとそれに関連する開発・認定コストの管理が不要になる。

このシンプルになったメモリ拡張ソリューションにより、自動車メーカーは将来的な変更に対応できる設計を実現し、以降の開発サイクルで追加の技術イノベーションの余地を残すことができ、サプライ・チェーンの簡略化と共に、製品開発のコスト削減および期間短縮を実現できる。

xMemoryを搭載したStellarマイコンの最初の製品は、Stellar P6マイコンで、新しいドライブ・トレインのトレンドと電気自動車(EV)向けアーキテクチャを対象として、2025年内の量産開始を予定している。

これについてSTのグループ・バイスプレジデント兼 汎用・車載用マイクロコントローラ事業部ジェネラル・マネージャーを務めるルカ・ロデスキーニ氏(Luca Rodeschini)は、「STは、自動車市場におけるより容量の大きいメモリに対するニーズに対応するため、最小のビット・セルで最高のメモリ技術を開発しました。

xMemoryを搭載したStellarマイコンは、未来の自動車アーキテクチャを効率化することで、コスト・パフォーマンスをさらに高め、自動車メーカーの開発期間を大幅に短縮させるでしょう。

この革新的ソリューションにより、自動車メーカーは同じハードウェアを使用しながら、長期にわたって継続的に製品を刷新する余地のあるインフラストラクチャ / 機能を確保できます。

そのため、デジタル化と電動化の新たなイノベーションを安心して導入し、市場をリードしながら自動車のライフタイムを延ばせるようになります」と製品コンセプトを説明した。

更にBosch社のバイス・プレジデントを務めるアクセル・アウエ氏(Axel Aue)は、「組込み型相変化メモリ(PCM)技術を採用したStellarは、堅牢かつ柔軟なメモリ・コンセプトにより、高性能で適応性に優れた車載用マイコンです。

この技術により、車載アプリケーションでは、RRAMやMRAMなどのメモリ技術よりも高い優位性を得ることができます」と述べた。

更にムーア・インサイト&ストラテジー(Moor Insights & Strategy)社でプリンシパル・アナリストを務めるアンヘル・サグ氏(Anhel Sag)は、「エンジニアは、xMemoryを搭載したStellarのような拡張可能なマイコンを選択することで、ソフトウェア機能をサポートするために必要なコストの掛かるハードウェア再設計が不要になります。

ソフトウェアは、初期の開発段階や発売後のOTAアップデートでも、必然的に進化しますが、同じプラットフォームを現場でアップグレードできるため、市場投入までの時間と保守コストを大幅に削減できます。

このためxMemoryを搭載したStellarのようなソリューションは、ロジスティクスと部品コストの効率化も可能にします」と語った。

xMemoryを搭載したStellarマイコンのメリットは以下の通り

自動車メーカーは、車両を長寿命化、さらにデジタル能力を高めるため、ソフトウェアとハードウェアをプラットフォーム間で最大限に再利用するため、シームレスに統合する必要がある。

また、ソフトウェアが複雑になるに伴い、メモリがボトルネックになってくる。これは新しい機能や規制、大量のメモリを必要とするAI / 機械学習の機器。更にOver-The-Air(OTA)による更新などが加速されるためだ。

STのxMemoryは、開発段階または納車後でも使用可能なメモリ容量を拡張することでその課題に対処する。このようにアプリケーションの無制限のアップグレードも可能にするという。

結果、SDVのライフサイクルのスタート時に適切なマイコンを選ぶことで、将来的なソフトウェア開発にも対応できる十分な内蔵メモリが確保できる。

現在は、過剰な性能を持つ各種メモリを採用するとコストが増加するが、性能が不十分なメモリでは、メモリ容量の大きなマイコンを別に見つけて再び認定取得が必要になる場合があり、複雑さもコストも遅延も増大してしまう。

対してxMemoryを搭載したStellarマイコンは、価格競争力に優れているため、さらなる節約を可能にし、OEMサプライ・チェーンを簡略化する。また迅速な製品開発を実現します。製品を長寿命化し、プロジェクト間で最大限に再利用を活用でき、認定にかかる期間を短縮できるという。

PCMおよびStellarの技術情報
STは車載用マイコンにおけるFlashメモリから組込み型不揮発性メモリ(eNVM)技術への移行をリードしてきた。車載アプリケーション向けとして初めて認定された28nm eNVMを提供し、これがxMemoryの中核となっている。

STの組込み型相変化メモリ(PCM)は、RRAM、MRAM、FlashメモリなどのNVM技術で最高のPPA(消費電力、性能、面積)指数を持つ。業界最小のeNVMセルを搭載し、18nmおよび28nmノードで製造されるPCMは、その他の技術と比べて2倍のメモリ密度を実現。

この最新世代のPCM技術は、Arm®ベースのStellar PシリーズおよびGシリーズに採用され、Stellarは車載用システム専用であり、自動車の電動アーキテクチャを簡略化し、パワーと柔軟性、安全性を高める。

またStellarのポートフォリオには、統合マイコン(Stellar PシリーズおよびGシリーズ)と電動化マイコン(Stellar Eシリーズ)が含まれる。Stellar統合マイコンは、集中型のゾーン / ドメイン・コントローラおよびボディ・アプリケーションを対象とし、複数の独立した通信 / 制御ECU(電子制御ユニット)の機能を統合。Stellar電動化マイコンは、EVのトラクション・モジュール・パワー・コンバータを制御するために最適化されている。