WRC初開催のターマックに5台のGRヤリスラリー1が挑む


TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は、4月24日(木)から27日(日)に掛けて、スペインのカナリア諸島で開催される2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦「ラリー・イスラス・カナリアス」に参戦する。

メンバーは、エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組(GR YARIS Rally1 33号車)、カッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手組(69号車)、セバスチャン・オジエ選手/ヴァンサン・ランデ選手組(17号車)、勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組(18号車)に、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ選手/マルコ・サルミネン選手組(5号車)を加えた合計5台のGR YARIS Rally1で参戦。

WRC初開催となるターマックラリーで、開幕4連勝を狙う。2025年のWRCは、3つの新しいラリーが年間カレンダーに加わるが、ラリー・イスラス・カナリアスはその最初のイベントとなる。

ラリーの舞台となるのは「グラン・カナリア島」。大西洋に浮かぶ、北西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島を構成する島のひとつであり、漁業の基地や美しいビーチリゾートがあることで知られている。

ラリー・イスラス・カナリアスの前身となるイベントは1977年に初めて開催され、以降、スペイン国内ラリー選手権や、ERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)の一戦として行われてきた。

そして49回目となる今年は、いよいよWRCのシリーズ入りを果たし、島北東部の都市ラス・パルマスのサービスパークを基点とするターマック(舗装路)ラリーとして行われる。

スペインでのWRC開催は2022年の「ラリー・スペイン」以来となるが、本土の北東部コスタ・ドラダ(黄金海岸)を舞台としていた過去の大会とは大きく異なる場所での戦いとなる。

今シーズン、TGR-WRTは第1戦ラリー・モンテカルロでオジエ選手が、第2戦ラリー・スウェーデンと第3戦サファリ・ラリー・ケニアでエバンスが優勝して開幕3連勝を達成。

チームはマニュファクチャラー選手権で26ポイント差をつけて首位に立ち、エバンス選手はドライバー選手権で36ポイント差を築きシリーズをリードしている。

今大会では彼らふたりと、元世界王者のロバンペラ選手の3名がマニュファクチャラーズポイント獲得ドライバーとして参戦。ラリー・スウェーデンで2位表彰台を獲得した勝田選手は、自己ベストリザルトの更新と、ドライバーズポイントの獲得を目指す。

また、今季がトップカテゴリーフル参戦初年度のパヤリ選手は、5人のドライバーの中で唯一このラリーへの出場経験があり、ERCとして開催された2021年大会にRally4カテゴリーのクルマで出場した。

ラリー・イスラス・カナリアスのステージは、島の広い範囲に展開し、その多くがアップダウンの激しい山岳地帯を走行する。全体的に非常にツイスティなコーナーが続き、片側は岩壁、片側はガードレールやガードストーンに囲まれたスリリングなセクションも多くある。

路面は全体的にスムーズで、一部に溶岩石を含む舗装が施された路面は摩擦力が非常に高いため、グリップレベルは安定している。しかし、そのためタイヤへの負荷はかなり大きく、ドライバーはタイヤの摩耗を上手くコントロールしながら走る必要がある。また島しょ部という立地により、天候の急変も予想される。

ラリーはラス・パルマスがホストタウンとなり、サービスパークはグラン・カナリア・スタジアムの隣接地に設けられる。最初の走行セッションであるシェイクダウンは24日木曜日の午前中に行なわれ、同日の夜9時から始まるセレモニアルスタートでラリーは開幕。競技は翌日の25日金曜日から始まる。

金曜日のデイ1は、島の中心部に設けられた3本のステージを、サービスパークでのミッドデイサービスを挟んで各2回走行。26日土曜日のデイ2は島の北部が主舞台となり、3本のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。

その後、一日の終わりにはラス・パルマスでスーパーSSとして1.80kmのショートステージが行なわれ、バスケットボール・アリーナのコート内もステージとして走行する。7本のステージの合計距離は124.08kmとなり、デイ2は3日間で最長の一日となる。

最終日となる27日、日曜日のデイ3は島の南側エリアが舞台となり、2本のステージを各2回走行。その間にはレーシングカート・サーキットでスーパーSS、SS16「コスタ・カナリア」が行われる。

SS15の再走ステージとなる、最終のSS18「マスパロマス2」は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定された。18本のステージの合計距離は301.30km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1082.20kmが予定されている。

なお、今大会には全部で9台のGR Yaris Rally2がエントリー、今回がWRC2初陣となるドライバーもいる。スペイン国内選手権王者のアレハンドロ・カチョン選手(スペイン)は、トヨタ・スペインからのエントリーとなり、テオ・マルティン・モータースポーツが用意するクルマのステアリングを握る。

また、昨年ERCで選手権2位を獲得したマシュー・フランチェスキ選手(フランス)はAMDモータースポーツから出場。かつてトヨタのWRCワークスドライバーとしても活躍した、アルミン・シュワルツ選手の息子であるファビオ・シュワルツ選手(ドイツ)も、初めてGR Yaris Rally2でWRC2に挑む。

その他にも、TGR WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀選手と小暮ひかる選手、ディエゴ・ドミンゲス選手(パラグアイ/テオ・マルティン・モータースポーツ)、カルロス・モレノ選手(スペイン/レースセブン)もWRC2にエントリー。

WRC2シリーズリーダーのオリバー・ソルベルグ選手(スウェーデン/プリントスポーツ)とゲオルグ・リンナマエ選手(エストニア/レッドグレイ)もGR Yaris Rally2で出場するが、今大会に関してはWRC2のポイント獲得対象外となる。

以下は参戦メンバーのコメントとなる

ユハ・カンクネン(チーム代表代行)
チームの全員がラリー・イスラス・カナリアスでの新たな挑戦を楽しみにしています。WRCとして開催されるのは今回が初めてですが、最後に参加したのは10年前ながら、実は私自身も過去に6回出場した経験があるラリーなので、再び参加するのがとても楽しみです。

ステージは非常に走りやすく、ドライバーたちもきっと楽しむことができるはずです。我々のドライバーの多くはこのラリーへの出場経験がありませんが、開幕戦以来の出場となるセバスチャンも含むラインナップは強力ですし、チームもしっかり準備を進めてきました。シーズンの序盤は良いスタートを切ることができたので、もちろんこの勢いを維持できることを期待しています。

エルフィン・エバンス選手 / スコット・マーティン選手 (GR YARIS Rally1 33号車)
今シーズンの開幕から良いラリーが続いていますが、私のアプローチは何も変わりません。ただ良い戦いをして、可能な限りのベストな結果を目指すだけです。このラリーのステージの特性としては、全体的にとてもクリーンで、非常にツイスティなコースが予想されます。

近年WRCのターマックラリーの多くは、路面がダーティなコースが多かったため、このような本格的なレーシングスタイルのコースのラリーを走る機会を失っていました。

コーナーのカットがほとんどないため、ステージの出走順は大きな影響を与えないでしょう。そのため、出走順トップで走ることの優位性はほとんどないと思います。おそらく全員が同じようなコンディションで走行することになり、公平な戦いになるでしょう。

カッレ・ロバンペラ選手 / ヨンネ・ハルットゥネン選手(GR YARIS Rally1 69号車)
これまで出場してきた他のターマックラリーとは大きく異なるであろう、新しいターマックラリーに出ることに興奮しています。ERCとして開催された過去のイベントの映像を見た限りでは、安定したコンディションのとても良いラリーで、思い切り楽しむことができそうです。

このような初めて走る道で、新しいペースノートを作成するのはきっと大きな挑戦になるでしょうし、速く走るためには全てにおいて正確さが求められます。

先週のスペインでのテストでは確実に進歩することができましたし、ターマックでのフィーリングも良くなりました。自分たちにとってはトリッキーなラリーが何戦か続いたので、状況を好転させて良い結果を出したいと思っています。

セバスチャン・オジエ選手 / ヴァンサン・ランデ選手(GR YARIS Rally1 17号車)
新しいラリーに出場するのは、いつだって心躍ります。誰も道を知らない状態から仕事をスタートしなくてはならないというのは、ラリーの本質のようなものです。全てのステージを新たに探索することになるレッキは非常に大変でしょうし、良いペースノートを作成することがこのラリーで速く走るための鍵となります。

ただし、過去にはこのような状況が私に合っていたので、今回も上手く対応し上位争いに加われるよう頑張りたいと思います。ステージはとても美しく見えますが、大西洋の島なので天候が急変する可能性もあります。グリップの高いサーキットスタイルのステージに戻れるのは楽しみですし、優勝争いに加われるように頑張ります。

勝田 貴元選手 / アーロン・ジョンストン選手 (GR YARIS Rally1 18号車)
他のドライバーから聞いたところ、ラリー・イスラス・カナリアスは最も素晴らしいターマックラリーの一つということなので、本当に楽しみです。コーナーのカットや路面のダートがほとんどない純粋なターマックラリーなので、クルマの最大パフォーマンスと空力性能を存分に発揮し、走りを思い切り楽しむことができそうです。

自分の過去のサーキットレースでの経験を思い出させるようなコンディションなので、それが良いパフォーマンスを発揮する助けとなることを願っています。また、今回のラリーでも新しいタイヤを使うことになるため、ステージでどのようなパフォーマンスを発揮するのか確認し、できるだけ上手く適応していく必要があります。

サミ・パヤリ選手 / マルコ・サルミネン選手(GR YARIS Rally1 5号車)
ケニアからカナリア諸島に舞台が移ることは、チャンピオンシップ内の2つのラリー間で最もコントラストが大きく変化するような状況だと思います。自分は4年前にRally4車両でこのラリーに出場したことがあり、とても気に入りました。

サーキットレースに最も近いラリーの一つだと思いますし、特にいくつかのステージは道幅が広く、路面がとてもクリーンでコーナーをカットをする場所も少ないのが特徴です。先週のテストではドライとウェットの両方のコンディションで走ることができ、クルマにいいフィーリングを感じることができました。

ケニアでは問題が起こらないように走ることが鍵となり、それが結果に繋がりました。しかしここでは大きな問題が起こる可能性が低いので、自分たちにとって楽しいラリーになることを願っています。

WRC 第4戦 ラリー・イスラス・カナリアス 2025 マップ

最新情報
TOYOTA GAZOO Racing WRTのSNSアカウント
∇Facebook: https://www.facebook.com/TOYOTAGAZOORacingWRC
∇X:https://x.com/TGR_WRC (@TGR_WRC)
∇Instagram:https://www.instagram.com/tgr_wrc/ (@TGR_WRC)
∇YouTube:https://www.youtube.com/@TOYOTAGAZOORacingJPchannel