TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかる選手と山本雄紀選手、3期生の後藤正太郎選手と松下拓未選手が、4月24日〜27日のFIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦「ラリー・イスラス・カナリアス(スペイン、グラン・カナリア島)」に出場した。
小暮選手は、WRC初開催のターマック(舗装路)ラリーで何度かトラブルに遭遇しながらも15位で完走。山本選手は最終日にクラッシュを喫しリタイア。松下選手はWRC3クラス4位、後藤選手は同クラス5位で完走した。
ラリー・イスラス・カナリアスは、今シーズン3戦あるWRC初開催イベントのひとつであり、大西洋に浮かぶ北西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島を構成する島のひとつ「グラン・カナリア島」が戦いの舞台になった。
ステージの路面は全てターマック(舗装路)で、島の広い範囲に設定された山岳ステージは、ツイスティなセクションもあれば、ハイスピードなセクションもあるなどバリエーションに富み、ドライバーにとっては非常に走り甲斐のあるラリーとなった。
路面は全体的にスムースでコーナーをインカットする場所も少ないため、路面コンディションは比較的安定していたが、片側が岩壁、片側は崖という区間も多く、非常にチャレンジングなステージで戦いが続いた。
小暮選手と山本選手が、このラリーに出場するのは今回が初となり、ターマックラリーでの経験が豊富なWRC2のライバルたちとの戦いは、彼らにとって大きな挑戦となった。
Rally2車両のエントリーは非常に多く、過去に何度もこのラリーに出ているドライバーや、有力な選手も多く出場。オープニングから非常にハイレベルな戦いが続く中で、経験が不足しているにも関わらず、山本選手と小暮選手は初日の金曜日のデイ1から安定したペースを保ち、何度かクラストップ10内のタイムを記録。結果、それぞれクラス9位と11位で初日を終えた。
土曜日のデイ2で、山本選手はペースを更に上げ、山岳ステージのSS12では4番手タイムを記録してクラス8位でデイ2を走破。
小暮選手も一時はクラス10位につけていたが、一日の最後のステージの直前にメカニカルトラブルが発生し、走行継続を断念した。
しかし小暮選手とコ・ドライバーのトピ・ルフティネン選手は最終日のデイ3でラリーに復帰し、WRC2クラス15位で完走した。
山本選手とコ・ドライバーのジェームズ・フルトン選手は最終日も好ペースを維持したが、最終ステージの1つ前でコースを外れてバリアに衝突し、少し早めにラリーを終えることになった。
チャレンジングプログラムの3期生である後藤選手と松下選手は、昨年の初めにプログラムに参加して以降、ターマックラリーに関しては今回が2度目の出場となり、WRCでも2回目となるスタートをルノー・クリオRally3と共に切った。
彼らのメインターゲットは、3日間のラリーを通じて経験を積むことだったが、両名とも落ち着いたドライビングを披露。
WRC3カテゴリーをリードする経験豊富な選手たちと比べても、比較的良いペースを着実に築くことができた。その成果は、何度か2、3番手のタイムを刻んだことでも証明され、特にラリー最終日のパワーステージでの好結果と、クラス4位と5位という最終リザルトに繋がった。
松下選手とコ・ドライバーのペッカ・ケランダー選手は、すぐ後ろにつけていた後藤選手とコ・ドライバーのユッシ・リンドベリ選手を1.5秒差で抑え、初出場のラリーをフィニッシュした。
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ミッコ・ヒルボネン氏(チーフインストラクター):
今回のラリーは、私たちのドライバー全員が初めて経験するものでしたし、新しいタイヤについて学ぶ機会でもあったので、興味深くエキサイティングなものでした。
このようなクリーンなターマック路面でのラリーは久しぶりでしたし、全員が良いパフォーマンスを発揮していたと思います。
山本は最終日に不運なミスを犯すまで、本当にポジティブで安定した走りを続けていました。彼はこのラリーで大きな進歩を遂げ、週末を通じてタイムも向上していました。
小暮もまた良いスタートを切り、序盤は山本と順位を争っていました。ただし、ブレーキングのテクニックにやや苦労していたので、今後、継続して改善に取り組む必要があります。
松下と後藤は、このようなラリーに参加できることに興奮していましたし、二人とも素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。
ターマックでの経験が豊富なフランスの速いドライバーたちと比べても、彼らは週末を通じて大きく成長し、最後まで競い合っていました。プレッシャーに耐えながらミスを犯さずにプッシュする方法を学ぶ上で、それは素晴らしい経験になったと思います。
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小暮ひかる選手:
レーシングサーキットのような、クリーンで流れるようなコーナーが続く、このラリーのステージを走れることに興奮していましたし、金曜日の朝から良いフィーリングを得られていました。
ただし、自分のスピードにはあまり満足できなかったので、より自信を深めるためにドライビングスタイルを変更し、午後のステージでは改善が見られました。
しかし、土曜日は自分のドライビングが原因のアンダーステアに苦戦し、午後にはいくつか技術的な問題が発生したので、最終的にはクルマを止めなくてはなりませんでした。日曜日の朝にもトラブルが起こりましたが、気持ちを切り替え、今後のためにステージから学びを得ることに集中しました。
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山本雄紀選手:
非常にポジティブな週末でした。このラリーを楽しみにしていましたし、実際にステージの走行を楽しむこともできました。
スタートから上手く対応できたと思いますし、それほど激しくプッシュしていなかったにも関わらず、ラリー中にタイムが良くなっていったのは嬉しかったです。
日曜日の最終ステージの1本手前で、コ・ドライバーとの間でペースノートに関する誤解があり、自分が走っている位置を見失ってしまい、ターンインが遅れバリアにぶつかってしまいました。
良い結果に近づいていたので残念でしたが、自信は全く失っていませんし、この週末の成果には誇りを持っています。今回は本当に多くのことを学ぶことができました。
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後藤正太郎選手:
本当に良いラリーでした。ターマックラリーへの出場は今回が2回目だったので、ゼロからスタートしたような感覚でした。
どこでブレーキをかけるのか、どこを狙うのか、どこを見るのかなど、このような道でどのように走るべきかを学ぶ必要がありました。
初日はトップのドライバーたちと比べて、自分がなぜこんなに遅いのか全く分かりませんでしたが、その後ペースが改善されたので本当に良かったです。
自分たちのクラスでトップのドライバーたちは、このような路面での経験が豊富だったので、そのことを考慮すれば自分には速さがあったのではないかと思います。
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松下拓未選手:
素晴らしい週末になり、ラリー期間を通じて大幅に上達することができました。金曜日は少し苦戦しましたが、土曜日から大きく改善し、タイムを上げて上位に近づくことができました。
日曜日はクルマのバランスが非常に良く、リヤが上手く旋回しているように感じられ、タイムも良好でした。
ステージは本当に素晴らしく、ハイスピードでコーナーも良い流れでしたが、時々非常に速いセクションの後に、かなりツイスティなセクションが続くため、その点を考慮してドライビングを調整する必要がありました。そのことが、今回もっともチャレンジングな部分だったと思います。
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ラリー・イスラス・カナリアスの結果(WRC2クラス)
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1 Yohan Rossel/Arnaud Dunand (Citroën C3 Rally2) 3h01m50.5s
2 Alejandro Cachón/Borja Rozada (Toyota GR Yaris Rally2) +29.5s
3 Nikolay Gryazin/Konstantin Aleksandrov (Škoda Fabia RS Rally2) +47.7s
4 Efrén Llarena/Sara Fernández (Citroën C3 Rally2) +2m03.5s
5 Diego Ruiloba/Ángel Vela (Citroën C3 Rally2) +2m11.4s
6 Emil Lindholm/Reeta Hämäläinen (Škoda Fabia RS Rally2) +2m35.6s
15 小暮 ひかる/トピ・ルフティネン (Toyota GR Yaris Rally2) +16m33.0s
R 山本 雄紀/ジェームズ・フルトン (Toyota GR Yaris Rally2)
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ラリー・イスラス・カナリアスの結果(WRC3クラス)
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1 Mattéo Chatillon/Maxence Cornuau (Renault Clio Rally3) 3h14m39.9s
2 Arthur Pelamourgues/Bastien Pouget (Renault Clio Rally3) +28.1s
3 Ghjuvanni Rossi/Kylian Sarmezan (Ford Fiesta Rally3) +1m37.1s
4 松下拓未/ペッカ・ケランダー (Renault Clio Rally3) +1m59.4s
5 後藤正太郎/ユッシ・リンドベリ (Renault Clio Rally3) +2m00.9s
6 Igor Widłak/Michał Marczewski (Ford Fiesta Rally3) +11m31.9s
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次回の2期生と3期生の次戦は、5月15日から18日にかけて開催される、WRC第5戦「ラリー・ポルトガル」となる。
WRCのクラシックイベントであるこのラリーの路面はグラベル。ポルトガル北部のポルト近郊、マトジニョスのサービスパークがラリーの中心となり、周辺の山岳地帯が戦いの舞台となる。
ステージは全体的に砂利や砂に覆われているが、その下層には硬質な岩が隠れており、ドライバーたちはコンディションの変化に上手く対応しながら走行する必要がある。