米・トヨタリサーチインスティテュート、ベンチャー投資ファンドを設立


人工知能等の分野で優秀な人材と協働し、主要革新技術の開発・導入を加速へ

トヨタ自動車株式会社の子会社で、米国で人工知能等の研究開発を行っているToyota Research Institute, Inc.(以下、TRI)は、1億ドルを投じ、ベンチャー企業への投資を目的としたベンチャーキャピタルファンド(以下、本ファンド)を設立すると公表した。

TRIのCEOであるギル・プラット(Gill A. Pratt)は「トヨタの歴史は、1930年代には織機から自動車事業に進出し、90年代には初代プリウスにより世界初の量産ハイブリッド乗用車を実現したほか、今後も自動運転・モビリティやパートナーロボットを実用化していくなど、その時代の常識を覆す技術革新の連続だといえる。

TRIの研究が拡大していく中で、今こそ、世界トップの起業家精神に溢れた優秀な人材との連携を拡大することが極めて重要だと認識している。

TRIは、トヨタと目標を共にする『人々の暮らしを豊かにしたい』というベンチャー起業家の志を実現するべく尽力しており、今回のファンドの設立は、その重要な一歩である」と述べた。

同ファンドは、TRIが設立する新会社「Toyota AI Ventures」が運営し、人工知能、ロボティクス、自動運転・モビリティサービスおよびデータ・クラウド技術の4分野で、設立から間もない有望ベンチャー企業への投資を行っていく。

また、米国カリフォルニア州のTRI本社で助言やサポートを提供することを通じ、選り抜きのベンチャー企業の育成支援も企図している。これらにより、ベンチャー企業を指向する優秀な人材とも協力する機会を得ることができると考えている。

ファンドの運営にあたっては、TRIの研究開発業務から分離した投資知識や経験の豊富な専属マネジメントチームにより、リスクやリターンを伴うベンチャー企業投資において意思決定を迅速に行っていく。

また、投資先候補から様々な提案を受けて投資先を決定するだけではなく、自ら研究開発における重要な課題を特定し、その解決を図るための起業を支援する投資モデルも模索していく。

TRIのデータ・事業開発担当バイス・プレジデントであり本ファンドのマネージング・ダイレクターに就任するジム・アドラー氏(Jim Adler)は「TRIだけで全てを解決しようとするのではなく、多くの革新的な技術を生み出すベンチャー企業の成功を後押ししたいと考えている。

起業家が抱える課題の一つに、適切な商品を適切な市場に向けて開発できているのかを判断する難しさがあるが、私たちはそうした課題の解決を手助けできると考えている。

彼らが成功することで私たちも成功できるのであり、起業家のニーズに合った形で支援できるよう取り組んでいきたい」と述べた。

なおこのファンドは、まずはTRIが実施済みの以下の3社に対する投資を引き継ぐが、今後さらなる投資先を検討していく。

社名と概要は以下の通り

Nauto
カリフォルニア州「シリコンバレー」を本拠とするIT企業で、事故防止に向けドライバーの運転行動や道路環境をモニタリングし、運転行動の向上などにつなげるシステムを企業向けに提供。

AI搭載のセンサーを、組み合わせたデバイスをフロントガラス裏に取り付け、車内外の様々な視覚情報を入手することで、有益なデータや知見を提供する。

TRIは2016年8月、Nautoが実施した総額1200万ドルの資金調達に、出資元の一つとして参加した。

SLAMcore
自動運転車やドローンなどの技術が周辺地図情報、位置情報を生成するためのアルゴリズムを開発する英国企業。

こうした情報の生成に必要な電力量を極力抑えることで、エネルギーを走行や飛行に最大限使えるようにすることを目指している。TRIは2017年3月、同社の資金調達に、出資元の一つとして参加した。

Intuition Robotics
イスラエルに拠点を置き、一人暮らしの高齢者等が自宅にいながら家族や友人と交流できるロボット「ElliQ」などを開発。

直観的に操作できる技術の開発を通じ、高齢者がアクティブに生活できる社会の実現を目指している。TRIは2017年5月に、Intuition Roboticsが実施した総額1400万ドルの資金調達に、出資元の一つとして参加している。