燃費試験を国内法で定められた方法と異なる試験方法で測定し、データを不正操作していたことが判明した三菱自動車工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長兼COO:相川哲郎、以下、三菱自動車)は4月21日に、三菱自動車本社にて第141回となる企業倫理委員会(委員長:松田 昇)を開催した。
この「企業倫理委員会」とは、取締役会の諮問機関として、社外有識者のみで構成される諮問機関であり、今回以前の不正行為を踏まえた体質改善を目指して、設置されたもの。
「社外の目」「世間の常識」という視点から、取締役会に対して答申・提言し、企業倫理・企業風土の改革を推進するCSR推進本部に対し、指導・助言を行ってきた。
今回、同委員会では、(1)同社製車両の燃費試験における不正行為について。
また(2)2016年度「企業倫理実践プログラム」について。そして(3)2015年度コンプライアンス案件(総括)について、それぞれ三菱自動車側から説明を受け、企業倫理委員会からは三菱自動車に次のような意見を伝えた。
三菱自動車製車両の燃費試験における不正行為について
独立性のある「外部有識者のみ」による調査のための委員会を設置するとのことだが、可能な限り早く、不正の程度と範囲を明らかにして、誠実に対応してもらいたい。
・開発部門の社員は、ものを言えない環境で厳しい状況に置かれていないか。或いは、物言わぬ風潮が戻って来ているのではないか。
・自動車メーカーとして重大事であり、お客様に与える影響度は計り知れず、その責任は免れない。社長の指揮のもと、速やかに原因を究明し、再発防止を図り、けじめをつけ、信頼回復に努めて欲しい。
・会社の最大の危機はコンプライアンス問題である。三菱自動車の役職員は、社会人としての常識(リスク感覚)をもっともっと磨くべきではないか。
・これまでも何度も言って来たが、コンプライアンスは人づくりである。そのための教育は反復し、継続することが不可欠である。愚直に取り組んで欲しい。「コンプライアンス第一」の意識を末端まで浸透させるには、その教育が重要である。
2016年度「企業倫理実践プログラム」について
・コンプライアンスという言葉が宙に浮いているように思えてならない。内容が従来と変わらず、燃費試験における不正行為を踏まえた課題が反映されていない。今後の徹底的な調査を踏まえて、その教訓を織り込んだプログラムを策定してもらいたい。
・「和をもって尊しとなす」の考えは、コンプライアンスでは通用しない。間違っていることは指摘すべきであり、異なる意見を言える環境が必要である。
・会社存亡の危機と認識して、今、重点的に取り組まなければいけないことは何なのかを、改めて当委員会に説明してもらいたい。
2015年度コンプライアンス案件(総括)について
・発生したコンプライアンス案件の原因を深掘りし、今後の再発防止に繋げてもらいたい。
ところが、その企業倫理委員会開催の翌日22日、燃費データの不正車両が当初の軽自動車以外に「パジェロ」や「RVR」「アウトランダー」の他、電気自動車(EV)「アイ・ミーブ」など約10車種に上ることが判明した。
同社では、プラグインハイブリッド車(PHV)の「アウトランダーPHEV」、「ミラージュ」、「デリカD:5」の一部モデルに関しては問題がないとしている。
なお国交省は、三菱自の施設への立ち入り検査などで、不正な測定方法についても詳しく調べており、三菱自は今後、正しい方法で測定し直し、燃費に関するデータを国土交通省に提出する方針である。
ちなみにこうなってしまった経緯のひとつには、三菱自動車が燃費データの算出方法を、国内で定められた測定方法の「惰行法」ではなく、米国方式の「高速惰行法」で行っていたことにあるのではないかと見られている。
こうした想定を踏まえ、そもそも走行抵抗の計算値を利用したかどか、などを含めた計測基準策定を含めた経緯とその原因については、同社による追っての発表を待つ必要がある。
当メディアMOTOR CARSは、本記事末尾にある過去の関連記事でも述べたことだが、ものづくり企業として最も大事なことは、外からは見えない社内問題を、自身で改善していける力を持っていると言うことを、外に向かって示すことにある。
世界に冠たる自動車立国・日本の大手自動車メーカーとして、また世界レベルでも16位の事業規模を持つ同社ゆえに、その責務の行方とその根拠の掲示が今一度、問われている。
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