東大・NSK・BSの3法人、道路からEVへの無線給電に挑戦


東京大学(東京大学大学院・新領域創成科学研究科/藤本研究室)が取り組むJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の研究プロジェクトで、電動インホイールモーター車への走行中給電を目指す動きが始動した。

これはJSTの「電気自動車への走行中直接給電が拓く未来社会」に共同参画するNSK(日本精工)とBS(ブリヂストン)がこの8月、同研究・実用化の基本特許で3者が合意を結んだことから共同開発の体制づくりが固まったため。

同・共同研究は、東京大学の研究グループが全く新しい概念に基づく革新的な技術を創出するべく、自らでJSTに新構想を提案。これを2017年~2022年の研究テーマとしてJSTが採択したことが発端だ。

今共同開発で東京大学は、インホイールモーターへのワイヤレス給電コンセプトの立案と改良。これに加えて関連基盤技術の研究開発を担当する。

上記の複数の画像は去る2017年3月30日、東京大学大学院・新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループによる千葉県柏市の東京大学柏キャンパスでの実証実験の様子。
上記の複数の画像は去る2017年3月30日、東京大学大学院・新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループによる千葉県柏市の東京大学柏キャンパスでの実証実験の様子。

対してNSKは、同社が独自のインホイールモーター開発で得られた技術を活かし、より搭載性に優れたインホイールモーターユニットの開発と、給電インフラ自体の社会実装に関する諸問題や解決を導いていくための検討課題に取り組んでいく。

さらにブリヂストンは、給電を阻害しない有機材料の知見やタイヤ開発の技術を活かして、給電時にインホイールモーターへの電力伝送を高効率で行うためのタイヤ技術の研究開発を担当する。

今後、上記3者はそれぞれの立ち位置や役割を消化しながらインホイールモーターの設計・試作・評価・搭載車両の製作を行い、来たる2022年までにタイヤを含めた車両評価を行い、さらなる実証実験フェーズへのプロジェクトの移行を目指す。

ちなみに今日、日本の11億9000万トンにも及ぶCO2排出量のうち、自動車からの排出量がその15%にあたる1億7千600トンにのぼる。

勿論、そうした課題は世界各国でも充分に認識されており、例えば欧州では2020年に自動車のCO2排出量をより厳しく抑制する施策実施が予定されている。

これを踏まえて各国・地域の自動車メーカーやその関連メーカーでは、この厳しい課題提示に応えるべく、より洗練され優れたEV開発を推し進めているものの、電動化に伴う市場要請に伴いバッテリー装置を含む関連装置の製造や原材料、そもそものの原材料不足や技術者不足など、広範囲に亘る多様な要素で供給不足が発生するのではないかと懸念されている。

このような深刻な課題を何とか克服するため3者は、車両のホイール内にモーターを組込み、このモーター自体へ走行路面から直に給電させることで、より少ないバッテリー装置でも航続距離を伸ばせる技術開発を急ぐ。

東京大学、NSK、ブリヂストンの3者は、研究プロジェクトに関わる基本特許をオープン化することに合意しており、権利化された技術は無償で使用可能となる知財管理の仕組みも併せて整備。持続可能なモビリティ社会の実現に貢献していきたい考えだ。

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