ヤフージャパン、NVIDIA・GPU160基搭載のディープラーニング専用スパコンを開発


ヤフージャパン+HPCシステムズ+エクサスケーラーが開発したスーパーコンピュータ「kukai(クウカイ)」、従来比225倍の処理性能に加え、省エネ国際順位で堂々第2位を獲得

ヤフー株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮坂 学以下、Yahoo! JAPAN)は、NVIDIAのパートナー企業のHPCシステムズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:小野 鉄平)からユニット供給を踏まえ、液浸冷却技術を持つ株式会社ExaScaler(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:木村 耕行)とディープラーニングに特化したスーパーコンピュータ「kukai(クウカイ)」を開発した。

この「kukai」は、NVIDIAの最新GPU「Tesla P100」を160基を連装した上で、電気伝導性がない不活性液体(粘体のフッ素系不活性液体が一般的)を冷媒にシステム基板全体を浸漬(しんせき)することで全てを均質に冷却できる構造になっている。

そんな独自の冷却技術を備えた同機は、「GREEN500(世界で最もエネルギー消費効率の良いスーパーコンピュータを定期的にランク付けし評価するプロジェクト)」で発表されたスパコンの省エネ性能ランキングで、世界第2位を獲得した。

GPU搭載の旧ディープラーニング機比で、演算処理性能が理論値で225倍に到達

そんな「kukai」は、GPUを使用した旧ディープラーニング機比での演算処理性能が、理論上で約225倍に達すると云う。消費電力あたりの処理性能も、世界トップクラス値を記録。同規模の最新GPUサーバ比で15%の電力コスト削減を実現している。

「kukai」のより詳細なスペックは、2017年上半期時点でスパコン業界が想定していた目標値10GFLOPS/Wを大きく凌駕する14.04 GFLOPS/W(ギガフロップス/ワット。1ワット当たりで処理できる1秒間の演算回数)。処理性能では、460.7TFLOPS(テラフロップス。1秒間の演算回数)を記録。

一般に、液浸冷却技術を搭載したスパコンは静穏性が高く、かつ省スペース性もあるため、特別な計算機室を用意せずとも運用できる程コンパクトなものになるケースが多い。

従って同機も、既存のスーパーコンピュータと一線を画した使い勝手に於いて優位性を持っており、今後のスパコンの在り方次第では、新たな運用の可能性を切り拓くものとなった。

NVIDIAの最新GPU「Tesla P100」を160基を提供したHPCシステムズは、江東区有明の『第1回 AI・人工知能EXPO』に出展

ちなみにYahoo! JAPANによるディープラーニングへの取り組みは、2015年5月、Yahoo! JAPANが自社で開発した音声認識エンジン「YJVOICE(ワイジェイボイス)」へサービスとして初実装したのが最初。

以降、ニュースなどコンテンツ配信の個別最適化(パーソナライズ)の精度向上のため導入していた。しかし、ディープラーニング処理に膨大な電力が求められること。

諸外国に比べ、日本国内は電気料金が高額であることから、これまでの活用は一部領域に限られていた。

今回Yahoo! JAPANが、液冷のスパコンを開発した理由は、「ビッグデータ」処理について「マシンパワー」を有する領域で高度に処理技術を保有している一方で、今回、ディープラーニングによる能力拡張を目指したのだと云う。

6月28日から30日まで、東京ビッグサイトで開催される『 第1回 AI・人工知能EXPO 』、第1回開催とあって出展規模は限られるが、その分、出展意欲の高い企業が集積したようだ。

なお、NVIDIA製GPU「Tesla P100」を160基を提供したHPCシステムズは、6月28日から東京ビッグサイト開催の『 第1回 AI・人工知能EXPO 』にて、NVIDIA製最新鋭システムの出展・説明を行っている(小間番号34-27)。

同社は、今回のエクサスケーラーへのユニット供給に見られるように、自動車関連企業に対するNVIDIA製システム取り扱いで知見を保有しており、同業界に於けるディープラーニング機導入・プロジェクト運用について、ビッグサイト会場で専任スタッフを配置していると云う。

株式会社センスタイムジャパンの画像認識技術展示

なお、この第1回 AI・人工知能EXPOに於ける主な自動車関連企業では、株式会社日立製作所(小間番号32-33)の他、香港資本でディープラーニング技術による画像認識技術を出展している株式会社センスタイムジャパン(小間番号32-10)。

当初は、太陽電池の研究開発で創業された半導体エネルギー研究所

有機ELや二次電池AI制御等を展示する半導体エネルギー研究所(小間番号17-17)、運輸企業向けソリューションを取り扱うAOSデータ株式会社(小間番号17-25)などがある。