東芝、リチウムイオン二次電池「SCiB™」を搭載したワイヤレス充電中型EVバスの実証走行を開始


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株式会社東芝(本社:東京都港区、代表取締役社長:室町正志)は、ケーブルを使用しなくても充電が可能なワイヤレス充電システムを開発し、長寿命、高出力なリチウムイオン二次電池「SCiB™」を搭載した中型EVバスの実証走行を6月1日から開始した。

このEVバスは、日本で初めて高速道路を走行するワイヤレス充電のEVバスであり、川崎市と全日本空輸株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:篠辺修、以下、ANA)の協力を得て、川崎市殿町(注1)と羽田空港内ANAの拠点間約11kmを走行する。

同社では、実証走行を通じて、ワイヤレス充電の利便性やCO2削減効果の検証などを行う。

ワイヤレス充電システムは、ケーブルを使用することなく地上の電源装置から車内に搭載された蓄電池に電気を送ることができるシステムである。

運転席でのボタン操作のみで充電ができるため、充電時の安全性と利便性を向上させることができる。

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ワイヤレス充電装置

従来型の電磁誘導方式(注2)よりも送受電パッド間が離れた状態で送電することができる磁界共鳴方式(注3)に、さらに同社独自の充電パッド構成を採用することなどによって、送電パッドと受電パッドが左右20cm、前後10cmまでずれていても充電することが可能となった。

なお、放射エミッション値(注4)の基準を満たしているため、電波を利用する周囲の設備に影響を与えない。

同EVバスは、15,000回以上の急速充放電を繰り返しても劣化の少ない長寿命特性を持つ「SCiB™」を搭載しているため、観光地や空港の巡回バスなどで求められる高頻度かつ短時間の充電に適していると云う。

今回の実証走行の片道分の距離を走行するのに必要な電力を約15分で充電する。また、「SCiB™」の高い出力と、駆動装置の性能向上によって、高速道路での走行を実現した。

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今回実証走行を行うEVバス

今回の実証走行は、環境省委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環として、2014年度から進めているもので、ワイヤレス充電技術は、早稲田大学理工学術院紙屋雄史教授研究室と共同で開発した。同技術を搭載した小型のEVバスは2016年2月に実証走行を開始している。

同社では、「今後も、ワイヤレス充電技術をはじめとした先端技術の研究開発を進めるとともに、『SCiBTM』を多様な交通インフラに展開することで、環境負荷低減と都市交通における利便性向上の両立に貢献していきます」と述べている。

(注1) 国家戦略総合特区に指定されている川崎市殿町キングスカイフロント地区

(注2) 電磁誘導方式: 送電・受電パッドそれぞれのコイルを近づけ、送電側のコイルに電流を流すことで、受電側のコイルの中にも磁流を発生させ、受電側のコイルに電流を流して電力を伝送する方式

(注3) 磁界共鳴方式:電磁誘導による電力伝送に加え、送電・受電パッドの共振周波数を同じにすることで共鳴現象を発生させ、伝送距離や位置ずれ許容範囲を向上させた方式

(注4) 放射エミッション値:電力伝送システムから周囲に放射される不要な電磁波の強さ

今回の実証システムの概要
システム構成 :中型EVバス1台、ワイヤレス充電システム1式
EVバスの仕様(参考値)
サイズ:全長8.9m、幅2.3m、高さ3.0m
重量:8,220kg
定員:45名
電池搭載量:52.9kWh
航続距離:約89km(高速走行で空調を使用しない場合)
最高速度:時速94km(車両性能試験結果)
送受電パッド間の距離 10cm~11cm
送受電パッドの位置ずれ許容範囲 左右20cm、前後10cm
1回あたりの充電時間 15分程度

実証走行の概要
実証走行の期間 :2016年6月から2016年12月まで(予定)
実証走行の区間 :川崎市殿町と羽田空港内のANAの拠点間約11km
実証走行の頻度 :1日あたり3往復
実証走行中の利用者 :ANAおよびANAグループの従業員