FIAフォーミュラE世界選手権( E-Prix )2024-25、第7戦モナコ( 開催地:モナコ・モンテカルロ、開催期間:5月3~4日 )の決勝が5月4日( 日曜日 )に1周3.340kmのモンテカルロ市街地コースで行われた。
第7戦は、スイス人ドライバーでのセバスチャン・ブエミ選手(エンビジョン・レーシング)がモナコで3度目の優勝を果たした。ブエミ選手の戦歴を振り返ると78レース前の2019年(ニューヨーク戦)以来の優勝となる。
レースでブエミ選手は、雨天の滑り易い路面コンディションと戦い、グリッド8位からレース終盤に於いてモナコ公国での待望の勝利を収めた。
今回ダブルヘッダーとなった6戦で勝利したオリバー・ローランド選手(日産フォーミュラEチーム)は2位となり、ドライバーズワールドチャンピオンシップで首位の座を守った。
ローランド選手は、今レースでも鉄壁のディフェンス力を発揮していたが、セーフティーカーが入った際に稼いでたアドバンテージを失った。しかし23周目にベルニュ選手、24周目にマヒンドラ・レーシングチームのニック・デ・フリース選手を出し抜き、ブエミ選手から約4秒遅れの2位でチェッカーを受けた。
3位には、ニック・キャシディ選手(ジャガーTCSレーシング)がトップ3に入り、今シーズン初の表彰台を獲得した。キャシディ選手は、序盤に築いた強力なエネルギーの優位性が終盤に役立ち、14位から3位まで順位を上げて2024/25シーズン初の表彰台を獲得した。
次いでアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手がポルシェ勢最上位の4位に。デ・フリース選手は最終的に5位となってマヒンドラのレース活動に貢献した。ジャン=エリック・ベルニュ選手(DS・ベンスキー)は、上位に食い込むチャンスを失い最終的に6位となった。
より具体的な筋書きでは、まずドライバーラキングで首位につけているローランド選手が、前6戦の好調さを保ち、雨天となった7戦の予選でポールポジションを獲得した。
空けた決勝日、雨は収まったが、路面はまだ濡れていた。従って全車、慎重なスタートを切る。
そのなかで第6戦の勝利で自信を深めたローランド選手がホールショットを決めた。2番手にデ・フリーズ選手、3番手にベルニュ選手が続く。
依然コースがところどころ濡れていることから、各車ストレートスピードを活かすべく序盤からアタックモードを積極的に活用。
5週目にベルニュ選手は、アタックモードを温存しているローランド選手を交わして首位に立つ。
しかし7周目にはクラッシュの発生により、一時的にフルコースイエローが提示される。更に13周目にはセーフティーカーが出動した。
15周目になってようやくレースは再開されたが、各車の隊列は急激に接近したことから、アタックモードを活かして順位が大きく入れ替わる。
18周目にローランド選手は、温存していたアタックモードを使って、ベルニュ選手、デ・フリーズ選手らとの首位争いの末、トップへと返り咲く。
その後、追撃するデ・フリーズ選手が、再びアタックモードを使いローランド選手を攻略。しかし混乱に乗じてブエミ選手が抜きん出て首位に立ち漁夫の利を得る。
結果、ブエミ選手は4秒以上の貯金を蓄え、ローランド選手突き放してゴールラインを潜った。
ブエミ選手は快心の勝利に喜んだが、これによりローランド選手は日産の母国である東京に向け、ドライバーズランキングで115ポイントを獲得。ダ・コスタ選手の67ポイントを大きく上回ってランキング暫定首位で東京へ凱旋する。
FIAチームズ世界選手権では、ポルシェが133ポイント、日産が126ポイントで僅差でトップに立っている。またFIAマニュファクチャラーズ世界選手権では、日産がポルシェを191対163で上回っている。
ちなみにエンビジョン・レレーシングチームはFIAチームズ世界選手権の最下位(優勝は2023年のモナコ大会以来)であったが、今回のブエミ選手の勝利によりチームランキングで暫定9位に浮上した。
なお次戦のABB FIA フォーミュラE 世界選手権は、2週間後の5月17日と18日に東京のお台場でダブルヘッダーで開催される見込みだ。
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以下はポディウムに立った選手達のコメントとなる
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1位/エンビジョン・レーシング16号車のセバスチャン・ブエミ選手
もう二度と勝てないんじゃないかと思っていた瞬間もありました。今回は、少しの幸運、適切なタイミング、適切なマシン、そして良いチームという歯車が噛み合い、勝つ事ができて本当に嬉しいです。
序盤はアントニオ(フェリックス・ダ・コスタ)とマックス(ギュンター)との争いとなってかなりトリッキーな状態でしたが、最終的にはアタックモードのタイミングが良かったので、ギャップを作ることができ、オリ(ローランド)が2回目のアタックモードを取った時に勝利を確信しました。
レースでは、ターン3と4で路面が乾いている場所を読むことができました。他にもラップタイムを稼ぐ余地は沢山ありましたが、今日は自信を持って取り組むことができました。未来永劫、勝利数は変わらないと思っていましたので、今勝利を得られて、とても誇りに思います。
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2位/日産フォーミュラEチーム23号車のオリバー・ローランド選手
正直に言うと、彼(ブエミ)がアタックモードに入った時、自身がもっとやるべきことがあると分かっていたような気がします。なのに、(自身が)アタックモードに入ったことで、結果、大きくタイムロスしてしましました。
それでも、モナコで1位と2位を獲得できたのはこれ以上ないほど嬉しいです。とにかくプッシュし続けなければなりません。来週は東京戦ガ待っています。ダブルヘッダーに向けて思いっきりプッシュして、その後も正しい方向へ進み続けたいと思っています」。
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3位/ジャガーTCSレーシング37号車のニック・キャシディ選手
「本当に素晴らしい気分です。用意されたクルマの仕上がりは素晴らしかった。なので今回、3位に甘んじた結果は自身の戦略上の課題です。従ってチームには感謝しています。
とにかく今年のスタートは本当に厳しいものでした。これまではツキに見放された気分でしたが、今回の3位で肩の荷が下りたような気分です。
チームの貢献を心から誇りに思います。実際、心の中では飛び跳ねて喜びたい気分です。本当に嬉しい。このポディウム以上に特別な場所はありません。今後もこうした好結果を継続していけることを願っています」。
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最後に、2025年モナコE-Prix第7戦には、映画、テレビ、音楽、スポーツ、コンテンツ制作など、様々な分野の著名人が多数集った。
シンガーソングライターのカミラ・カベロ氏は、ポルシェのセーフティカーが先導するホットラップで、モナコ・サーキットのスリルを堪能した。
『HOMELAND 』や『エミリー、パリへ行く』のルシアン・ラヴィスカウント氏、そしてマーキュリー賞ノミネートのプロデューサーでジェイミー・エックス・エックスでの役柄で知られる俳優デヴィッド・ヘアウッド氏は、有名なモナコ港に停泊するフォーミュラEヨットの快適な空間から、ダブルヘッダーレース2戦目を愉しんだ。
スポーツ界からは、ツール・ド・フランスで4度の優勝、オリンピックで2度のメダリストとなっているプロ自転車選手のクリス・フルーム氏、そしてフォーミュラ1世界チャンピオンに2度輝いたエマーソン・フィッティパルディ氏、そしてGEN3フォーミュラEカーを運転する機会を得た息子のエマーソン・フィッティパルディ・ジュニアも参加した。
自動車愛好家やコンテンツクリエイターも多数参加した。人気YouTubeクリエイターのYesTheory氏(アンドレッティチームと共に「フォーミュラE:エボセッション」に参加)や、レーシングドライバーのセバスチャン・メルローズ氏、そして自動車プレゼンターのエマ・ウォルシュ氏もイベントに登場した。
加えてフォーミュラEは、モナコのSheCanHeCanと提携し、モータースポーツ界に於ける女性達に立ちはだかる障壁を打ち破るべく、身体上の不利益がパフォーマンスに与える影響に焦点を当てた。
両団体は共同で「ジェンダー平等のための変革を推進する」を主催した。それはケイティ・マニングス、デビッド・クルサード、ベス・パレッタ、そしてNEOMマクラーレンのステファニー・エンステンを招いた若者向けのパネルディスカッションで、若者の意識を刺激し、機会均等の機会を訴えた。
5月2日に開かれたモナコ・ヨットクラブが主催するソートリーダーシップ・サミットには、スポーツ、サステナビリティ、政治、ビジネスのイノベーターが集結した。モナコ大公アルベール2世財団をナレッジパートナーとして迎え、専門家たちがスポーツと社会の未来を形作る戦略も共有した。
他にもフォーミュラ E のドライバー達は、モナコ国際学校を含む学校と交流し、プリンセス グレース病院を訪問して患者とスタッフを激励した。