日産、自動運転を具現化する未来のEV「Nissan IDS Concept」公開


日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス ゴーン)は、東京モーターショーの会場に於いて進化した車両制御技術、安全技術と最新のAI(人工知能)技術を統合した自動運転技術を背景に、自動運転車の実用化をリードするべく「ニッサンIDSコンセプト」を公開した。

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同車は、日産ブランドが目指す自動運転の方向性を示したクルマであり、電気自動車(ゼロ・エミッション)の将来を予見させるコンセプトカーである。

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202X年、この「ニッサンIDSコンセプト」の技術は、現実のクルマに搭載され、世界の様々な街で見かけるようになると日産では云う。

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日産が目指す自動運転コンセプト「ニッサン・インテリジェント・ドライビング」

かつて2013年8月、社長兼CEOのカルロス ゴーン氏は「2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載予定である」と発表したが、同車はこの計画に沿った中間発表モデルという位置付けだ。

そして今回、東京モーターショーの会場に於いて日産は、「人は移動することで人生を豊かし、進化していくと考えています。

移動時間に更なる価値をもたらすことが、我々の大きな目標であり、普遍的なポリシーです。

自動運転という技術が、人生を豊かにする上で果たせる役割について、私たちは幾度も検討を重ねてきました。

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そして、ある時にはアクティブに運転を楽しみ、そしてある時には運転から解放され、より創造的な時間を楽しめるものこそが、日産自動車の自動運転車であるという結論に達したのです。

このような自由で創造的な移動を実現するのが、ニッサン・インテリジェント・ ドライビングというコンセプトです。

日産が守り続けてきたポリシーを未来へと繋ぐため、私たちはニッサン・インテリジェント・ドライビングには、次のような機能が必要であると結論付けました」と云う。

ニッサン・インテリジェント・ドライビングに求める機能とは

同社が云うその機能とは、上記に続けて「自動運転時には、クルマが様々な運転操作を行うのはもちろん、加速やブレーキング、コーナリングなど、あらゆる場面においてドライバーの思いのままに動くこと。

それこそ、ドライバーが日々のストレスから解放され、心身ともにリラックスした状態で移動する上で欠かせない事です。

そして自らステアリングを握る時は、ドライバーが安心して意のままにクルマを操れるドライビングフィールを提供できること。

このいずれもが、ニッサン・インテリジェント・ドライビングの技術によって、実現できるのです。

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クルマがもっとパートナーになる、『Together We Ride』。日産自動車が目指す自動運転のベクトルはこれがキーワードになりまか。

ニッサン インテリジェント ドライビングは、ドライバーの『認知』『判断』『操作』をサポートすることによって、現在発生している交通事故の約9割の原因である人的ミスを補い、より安全で、効率的、且つ楽しいドライビングを実現することができるのです」とたたみ掛けた。

「ニッサンIDSコンセプト」が実現する自動運転

加えて、「ニッサンIDSコンセプト」の自動運転は、ベルトコンベアのようにA地点からB地点まで移動することだけを目指すものではないという。

クルマに運転を委ねる時、加速やブレーキング、コーナリングなど、あらゆる場面においてドライバーの好みに合わせて走行し、安心してドライバーや同乗者が快適に移動できる空間を提供することが、自動運転に欠かせない。

では、“人にとって心地よい走り”とはどのようなものか?ドライビングの好みは千差万別である。キビキビ走るのが好きな人もいれば、のんびりクルージングしたい人も居る。

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ステアリングの切り方、アクセルの踏み込み方、ブレーキを踏み始めるタイミングも、個々のドライバーによって違う。

こうした要素に関して、「ニッサンIDSコンセプト」に搭載したAIは、ドライバーの走り方や癖を学習していくのだと云う。

自動運転となるPDモード(パイロットドライブモード)でドライバーが同乗者との会話や、車窓の風景をリラックスしながら楽しんでいるとき、「ニッサンIDSコンセプト」はドライバーの好みを熟知したパートナーとなり、まるでドライバー自らが運転しているかのような感覚と同時に、ミスのない信頼できる走りを提供する。

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また「ニッサンIDSコンセプト」をドライバーの意思で操作する、MDモード(マニュアルドライブモード)にすれば、ドライバーは自らの意志でクルマを操り、リニアな加速や安定感のあるコーナリングを楽しむことができる。

但しMDモードであっても、「ニッサンIDSコンセプト」は密かにドライバーをアシストしている。

多くのセンサーで車両の状況を常時モニタリングし、ドライバーの思い通りの走りをアシスト。また、万が一危険が差し迫った場合にもクルマが最適な回避方法をアシストする。

日産が考える自動運転『Together We Ride』を具現化したデザイン
このような「「ニッサンIDSコンセプト」の要となったのは“人とクルマのコミュニケーション”にある。

自動運転の実現にはドライバーはもちろん、社会とも積極的なコミュニケーションが必要になるが、同社デザイン・ダイレクターの森田 充儀氏は、「このクルマのデザインは『Together We Ride』という日産が目指す自動運転の方向性から生まれました。

ニッサンIDSコンセプトは、PDモードとMDモードで、異なる2つのインテリアを持っています。

これは、私たちが考える自動運転を表現する上で、絶対に必要な考え方でした」と開発過程の一端を振り返った。

ドライバーの意志でトランスフォームする2つのインテリア
室内空間に於いても、「ニッサンIDSコンセプト」は、ロングホイールベースの恩恵を受け、ハッチバックでありながらも、大人4人がゆったりくつろげる室内空間を確保した。

自動運転となるPDモードを選択した時、ステアリングは姿を消し、インストルメントパネル中央に大型のモニターが姿を表す。

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天然素材やメッシュ調レザーを使ったインテリアは、柔らかく落ち着いた光で優しく照らされ、中抜け構造のAピラーは、死角の低減や走行中の開放感を与えていく。

4つのシートは内側に少しだけ回転し、すべての乗員が同じ風景を共有することで、まるでリビングルームでリラックスしているような心地よい空間の中で、乗員全員が豊かなコミュニケーションを取ることができる。

MDモードを選択すると、ルーミーなインテリアはドライバーがドライビングを楽しむための空間へと変化する。

すべてのシートは前方を向き、乗馬で使う手綱をイメージしたステアリングや、メーター、ヘッドアップディスプレイなどが出現。そして、インテリア照明は、運転に集中できるブルーに変わる。

走りへの期待が高まるこのトランスフォームは、2つのフロントシートの間にある“PDコマンダー”で操作。PDコマンダーは、自動運転中にドライバーがフィジカルに操作することができる唯一のスイッチとなる。

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また、PDモードとMDモードではヒューマンマシンインターフェイス(HMI)デザインも異なる。

「ニッサンIDSコンセプト」のAIと、音声やジェスチャーによるコミュニケーションですべての操作が完結するPDモードでは、インストルメントパネルに大型のモニターだけが配置される。

これに対し、MDモードでは大型モニターが姿を消し、ヘッドアップディスプレイにはスムーズに走るための走行ラインや、フィールドインフォメーションなどが映し出す。このHMIデザインは、ドライバーがストレスフリーなドライビングを楽しむことができるようデザインされている。

清潔感と安心感を与えるデザインで“路上の良き存在”に
エクステリア面に於いても「ニッサンIDSコンセプト」のスタイリングでは、EVらしいクリーンさ、清潔さを表現した。

それを象徴するのが、グリルに施した氷柱パターンだ。アイスブロックを積み上げたようなデザインは、見る人にピュアな透明感をイメージさせ、快適なインテリアをしっかりガードする安心感を表現したブルーイッシュサテンシルバーのボディカラーと相まって、周囲の人々に清潔感や安心感を与える。

日産では、社会に対して安心感を与え、受け入れられることは、自動運転を実現する上で欠かすことのできないものだと云う。

「ニッサンIDSコンセプトは、光とメッセージを使い車外にクルマの意思を伝えることで、社会と調和します。

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ボディサイドに入った特徴的な水平基調のライン。インテンション・インジケーターと名づけたこのLEDのラインは、ニッサンIDSコンセプトの周囲にいる人を検知すると、ラインが青く発光し、更に人に向けて白い点滅する光でクルマが相手を認識していることを知らせます。

インストルメントパネル前方には、外向きのディスプレイを配置しました」

つまり、ここには「ニッサンIDSコンセプト」から歩行者など車外の人たちに向けて、おさきにどうぞなど、クルマの意思を伝えるメッセージが流れるのだと云う。

EVでの長距離運転を実現するために“究極の空力”を追求
先の森田氏は、EVである「ニッサンIDSコンセプト」に欠かせない空力性能を追求したデザインについて次のように述べている。

「ニッサンIDSコンセプトが現実になるとき、EVは1回の充電での長距離走行が可能となるでしょう。

そのためには、バッテリーの進化はもちろん、空力性能も非常に重要になります。ニッサンIDSコンセプトには、今まで培った空力技術を余すところなくデザインに取り入れました。

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フルカーボン製ボディは、全高をわずか1,380mmに抑え、空力抵抗係数(CD値)を低くすることに貢献しています。

横から見ると、大径タイヤが走りの良さとスポーティーさをイメージするスタイリングを実現していますが、転がり抵抗と空気抵抗を限りなく減らすべく、175サイズという非常に細いタイヤを採用しています。

足回りの軽快感を表現したホイールには、細かいフィンのようなレイヤーデザインを施しました。これが、走行中にホイール表面のエアフローに小さな気流の渦を作り、空気をスムーズに受け流すのに役立っています」と語っている。