2017年10月にインテルによる買収で子会社となったイスラエルのモービルアイは今秋、業績改善の兆しが見え始めた中国のプレミアムEVメーカーのニオ(NIO/上海蔚来汽車)とレベル4自動運転車の開発で協業すると発表した。(坂上 賢治)
ニオこと上海蔚来汽車は、2014年11月に高性能電気自動車メーカーとして設立。2018年に同社モデルのEP9はニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース:20.832km)で、市販EVで最速のラップタイム6分45秒25を樹立。同年9月12日にはニューヨーク証券取引所にも上場した。
現段階でニオは新型車の開発に専念しており、中国に於ける車両量産については江淮汽車が請け負っている。
そんなニオとモービルアイの今協業は、中国を皮切りにモービルアイが設計したレベル4(L4) AVキットの拡販を目指したもの。ニオは中国国内に於いて、モービルアイのAVキットを基にコンシューマー向けの車両開発に着手する。
併せてニオは自国内で、モービルアイの拡販向けにAVシステムを量産。同製品を運転手不在のライドへーリング・サービス(送迎配車サービス)向けに出荷。モービルアイがこれのセールスを展開していく。
より具体的にニオが車両搭載機能として想定しているユニットは、Mobileye AV Seriesに基づく自動運転システムで、Mobileye EyeQ® システム・オン・チップ (SoC)、ハードウェア、ドライビング・ポリシー、セーフティ・ソフトウェア、マッピング・ソリューションで構成されるL4 AVキットだ。今回モービアイは、同システム設計をニオに依頼する。
これを受けたニオは、自社車両へのユニット組み込みに加え、モービルアイが展開を目論む中国国内のMaaS向け市場のユニット量産を展開。さらにこれを立ち位置に、カーヘイリング・サービス向けロボットタクシーの世界提案車両の開発にも関与していく予定だ。
なおニオのコンシューマー向けプレミアム自動運転車の方は、まず中国にて展開された後、中国以外の市場にも拡大展開していく計画だという。
一方ニオにとっては、モービルアイの自動運転システムに関わっていくことは、同協業から得られる先進運転支援システム(ADAS)とレベル4の自動運転がもたらす高度な技術イメージを訴求できるため、少なくとも中国のプレミアム電気自動車市場で、最先端企業としての立ち位置の維持に役立つと考えているようだ。
今協業についてインテル コーポレーション 上席副社長でモービルアイ社長兼CEOアムノン・シャシュア氏は、「私たちは、個人向けならびにロボタクシー車両向けに自動運転のEVを開発する NIOとの協業および今後の可能性に多大な期待を寄せています。
私たちは、この協業を通じて中国やその他の市場において、道路上のさらなる安全をもたらすことができることに大きな価値を感じています。
また今後モービルアイが世界中で変革的なモビリティサービスを構築していく際にNIOと協力できることを楽しみにしています」と語った。
対してニオ創業者で会長兼CEOのウィリアム・リー(William Li)氏は「ニオは次世代の自動車会社、そして、ユーザー・エンタープライズを目指しています。
私たちにとってEVは出発点であり、コミュニティーをつなぎ、つながりを強くする基盤であると考えています。
モービルアイとともに、私たちの自動車の安全性と性能を高めていくことは、プレミアムでスマートなEVを提供し、喜びに満ちたライフスタイルをデザインするという、私たちのビジョンに沿っています」と話している。
結果、両社は中国を中心とした東アジアエリアを足掛かりに、自らの自動運転システムが世界のマスマーケットで拡散されていくことを狙っている。
実際、先の通り両社は、今合意について21世紀のモビリティ・ニーズに対応するために、世界規模での商用ロボタクシーの実用化を目指すモービルアイと、その車両を提供する自動車量産メーカーとの初のパートナーシップだと謳っている。
加えてモービルアイは今技術拡散によって、いずれは誕生するロボタクシーを使ったサービスは、世界中の都市部で環境汚染と渋滞を減らす一方で、道路上の安全と交通アクセスの向上に役立つと訴えている。