物質・材料研究機構ら、カーボンナノチューブ空気極により超高容量なリチウム空気電池を開発


リチウム空気電池はリチウムイオン電池容量の15倍、電気自動車でガソリン車並みの走行距離実現へ

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)らの研究チームは、リチウム空気電池の空気極材料にカーボンナノチューブ (CNT) を採用することにより、従来のリチウムイオン電池の15倍に相当する極めて高い蓄電容量を実現した。

掲示画像は、CNT空気極の概念図 (左) と、巨大容量の放電および充電特性 (右)」の状況を表している

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点、ナノ材料科学環境拠点 リチウム空気電池特別推進チームの久保佳実チームリーダー並びに野村晃敬研究員らの研究チームは、リチウム空気電池の空気極材料にカーボンナノチューブ (CNT) を採用することにより、従来のリチウムイオン電池の15倍に相当する極めて高い蓄電容量を実現した。

蓄電池は、電気自動車用電源として、あるいは太陽電池と組み合わせた家庭用分散電源として、今後急速に需要が拡大することが予測されている。

しかし現状のリチウムイオン電池は、小型で高電圧、長寿命という優れた特性にもかかわらず、蓄電容量に相当するエネルギー密度がほぼ限界に達しているという大きな課題があった。

そこで、この壁を突破する切り札として期待されているのがリチウム空気電池である。

リチウム空気電池は、あらゆる二次電池の中で最高の理論エネルギー密度を有する「究極の二次電池」であり、蓄電容量の劇的な向上と大幅なコストダウンが期待できる。

しかし従来から実施を重ねてきた研究に於いては、少量の材料で電池反応を調べる基礎研究が中心であり、実際のセル形状において巨大容量を実証した例はなかった。

そこで今回の研究チームでは、現実的なセル形状において、単位面積当たりの蓄電容量として30 mAh/cm2 という極めて高い値を実現した。

この値は、従来のリチウムイオン電池 (2 mAh/cm2 程度) の15倍に相当するものとなった。

この成果は、空気極材料にカーボンナノチューブを用い、空気極の微細構造などを最適化することによって得られた。

従ってこの巨大容量の実現には、カーボンナノチューブの大きな表面積と柔軟な構造が寄与していると考えられると云う。

また、このような巨大容量が得られたという事実は、従来の考え方では説明が困難であり、リチウム空気電池の反応機構の議論にも一石を投ずる可能性がある。

研究チームでは、今後この成果を活用し、実用的なレベルでの真に高容量なリチウム空気電池システムの開発を目指し、セルを積層したスタックの高エネルギー密度化、さらには空気から不純物を取り除くといった研究にも取り組んでいく構え。

なおこの研究は、JST先端的低炭素化技術開発・特別重点技術領域「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING) 並びに文部科学省委託事業「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発プログラム (~平成27年度) ・統合型材料開発プログラム (平成28年度~) 」の支援を受けて行われた。

また、研究の一部は、池谷科学技術振興財団H27年度研究助成の支援を受けて行われた。

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