トヨタ、米国トップ大学へ5000万米ドルを投じ、人工知能の研究加速へ


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トヨタ自動車、マサチューセッツ工科大学およびスタンフォード大学と連携研究センターを設立

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)は、米国のマサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory : 以下、CSAIL)およびスタンフォード大学のスタンフォード人工知能研究所(Stanford Artificial Intelligence Laboratory : 以下、SAIL)と、人工知能に関する研究で連携していくことに合意した。

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今後5年間でトヨタは、両大学との人工知能研究に約5000万米ドルの予算を投じ、CSAILおよびSAILそれぞれと共同して連携研究センターを設立する。

一連の研究は、交通事故死の低減や、事故を予防するクルマの開発に大きな役割を果たす

両連携研究センターに於ける人工知能研究では、クルマやロボットへの応用を目指す。

具体的には、1)様々な環境における物体の認識、2)高度な状況判断、3)人と機械との安全な相互協調などを実現するための研究を推進していく意向。

CSAIL所長のダニエラ・ラス(Daniela Rus)教授は、「我々の研究チームでは、周囲の環境を認知し、安全な走行を実現するための先進的なクルマのアーキテクチャーを研究する。

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ダニエラ・ラス教授は、上記一連の研究について、交通事故死の低減や、事故を予防するクルマの開発にも大きな役割を果たすと考えている」と述べた。

研究では、スタンフォード大の視覚情報処理および機械学習、大規模データ解析技術を駆使

一方、SAIL所長のフェイフェイ・リ(Fei-Fei Li)教授は「我々は、スタンフォード大学が誇る視覚情報処理および機械学習、大規模データ解析などの技術に基づいて、クルマが様々な状況下で物体や人の動きを認識、予測し、安全で適切な判断をするための技術に取り組んでいく」と語った。

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また、トヨタは、DARPA Robotics Challenge*1の元プログラムマネージャー、ギル・プラット(Gill A. Pratt)博士を招聘し、同博士の協力のもとクルマやロボットの知能化研究を強化していく。

本連携研究センター設立には、同博士も関わっており、両連携研究センターで今後実施する研究やその活用も博士の助言を得ながら推進していく。

トヨタは、今後の産業技術の基盤を担う人工知能研究の強化体制を加速していく

トヨタは長きに亘り、交通事故の更なる削減や高齢化社会の進展といった社会的な課題を背景に、安全を確保しながら、より多くのお客様に移動の自由を提供するため、自動運転技術や高度運転支援システムの研究開発に取り組んできた。

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ロボットの技術開発においても1970年代から産業用ロボットの開発に着手し、2000年代以降はパートナーロボットや生活支援ロボットの開発を進めるなど、その技術を積み重ねてきた。

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一方、コンピュータ科学や人工知能技術は、運転支援やロボット技術に更なる革新をもたらす可能性が高いだけでなく、社会活動全般に大きな変革をもたらすことが期待されている。

このような背景のもと、トヨタは今後の産業技術の基盤を担う人工知能に関する研究開発をより一層強化する。本連携研究の成果は自動車やロボット、情報サービスなど将来の製品開発に幅広く応用していく。

今連携は、モビリティに関わる課題を人工知能技術で解決していく、画期的な試みに可能性がある

今回の連携研究に関し、トヨタの専務役員で技術開発本部長の伊勢清貴は「今回の連携では、クルマに留まらず、お客様の暮らし全般をより良いものにすることを目標に、研究に取り組んでいく。

人工知能研究の最先端を走る米国のトップ2大学および、プラット博士との協力のもと、これまでにない新たなテーマに挑戦し、トヨタの研究開発を大きく飛躍させていきたい」と述べた。

また、プラット氏は「今回の連携研究は、モビリティを取り巻く課題を人工知能技術により解決しようとする、これまでにない画期的なものだ。

トヨタおよび両大学が力を合わせて相乗効果を生む今回の取り組みに参加できることを、大変うれしく思っている」とのコメントを寄せた。*1 米国国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助用のロボット競技大会

<米国カリフォルニア州での記者会見の模様(英語のみ)>
https://livestream.com/Toyota/PressConference

連携研究記者会見 伊勢専務役員あいさつ文和訳
(米国カリフォルニア州)

マサチューセッツ工科大学およびスタンフォード大学との連携研究に合意したことを公表でき、大変うれしく思っております。

今回トヨタは、今後5年間で約5000万ドルを投じて各大学に連携研究センターを設立し、それぞれのセンターで人工知能やロボット技術に関する研究に取り組みます。

さらにDARPA(米国国防総省 国防高等研究計画局)の元プログラム・マネジャーであるギル・プラット博士をトヨタにお迎えしたこともご報告いたします。博士には両センターでの連携研究にもご協力いただきます。

多くの方がご存知の通り、プラット博士はこの研究分野を先導されている中心人物のお一人です。今回、博士のご協力のもとでトヨタの研究開発を強化できることをとてもうれしく思っています。

自動運転にも応用されている人工知能やロボット技術に関するトヨタの研究開発の歴史は何十年にも亘ります。今回の発表はそのさらなる一歩につながるものです。

人工知能研究は将来のモビリティに変革をもたらす可能性を秘めています。クルマの安全性を向上させ、渋滞を緩和するだけでなく、皆さんの暮らしをより良いものにするでしょう。

また人工知能は世界中の技術革新を支える原動力となっています。それは自動車という領域にとどまらず産業活動全般に影響を与える可能性があるものです。

我々はこの技術領域の重要性や、自動車会社だけでなく多くの企業が技術開発にしのぎを削っていることも理解しています。

したがって本日のご報告は、人工知能やロボット技術に関し、これまでにない取り組みの始まりをお伝えするものです。

今回の連携は大変重要な取り組みだと考えております。プラット博士の協力のもと、その重要性に見合った形で、しっかりと研究に取り組んでまいります。

そして今回のMITとスタンフォード大との連携はその重要な端緒となるものです。両大学は米国トップレベルの大学であるだけでなく、人工知能研究で最先端をいく大学です。

今回の連携は我々にとって研究を強化するだけでなく、相互に知見を共有し、新たな技術を前進させるまたとない機会だととらえております。

本年4月に初めてプラット博士とお会いした際、博士に将来のモビリティのありかたについて尋ね、彼と私の意見は同じであるということがわかりました。

それは人を助け、人の暮らしをより良いものにするのはもちろん、楽しいものでありつづけるであろうというものです。

私自身、この新しい挑戦が私たちに何をもたらすのか、ワクワクしております。今後皆さまに、更なるご報告ができればと思っております。

両大学やプラット博士とともに、素晴らしい成果を生み出せると信じています。

ギル・プラット博士についての概略(英語) http://newsroom.toyota.co.jp/en/detail/9283610/
ダニエラ・ラス教授についての概略(英語) https://www.csail.mit.edu/user/876
フェイフェイ・リ教授についての概略(英語) http://vision.stanford.edu/feifeili/