人とくるまのテクノロジー展、TDKは世界最薄クラスのハプティクス向け圧電アクチュエータを出展


先の2017年5月24日(水)から26日(金)まで、横浜市西区みなとみらい地区・パシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展2017」が開催され、ここに出展したTDK株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:石黒 成直、以下TDK)は、次世代自動車への実装を視野に、独自のソリューション群を紹介していた。

それらの製品範囲は、各種センサから受動部品、電源ユニットに至るまで広域に亘るもの。

ブース前ステージでは、これらに関わる磁気センサ、触覚フィードバック素子、正のDCバイアス特性を持ったセラミックコンデンサ等、車両搭載を想定した具体的に電子回路上の製品使用例や、各種デモ実演を実施。

出展ブース自体が、来場者が実際に見て、触って、納得できる体験型重視の展示スタイルであることから、多くのブース来訪者から関心を集めていた。

なかでも、同社が世界最薄クラスと云うハプティクス向けPiezoHapt™アクチュエータ ハプティクス技術(力や振動などの皮膚感覚フィードバックで情報を伝達させるテクノロジーをハプティクスと呼んでいる)は、デジタル機器を操作する上で、触感に訴えるタッチ・フィードバックを振動を介して実現するもの。

この技術により、ユーザー・エクスペリエンスを大幅に高める効果を発揮している。

例えば、カーナビなどのタッチ・スクリーン機器に、触感フィードバック効果を提供したり、タッチしたことを確認できるようにすることで、タイピングの正確さ・精度・生産性が大きく向上すると云う。

また同技術は、そうした「使い勝手」や「効率を改善」するという目的以前に、製品そのもの差異化や、楽しみを創造する先端技術として注目を集めており、既にスマートフォン・タブレット・携帯ゲーム機などの日常利用の製品以外に、医療・産業用分野に至るまで採用範囲が拡大していると云う。

と言うのは、一般に既存の振動発生に利活用されてきた偏心モーターや、リニアアクチュエーターは一定の厚みがあることが避けられないからで、例えばスマーフォンの場合では、その多くは厚みの制約上、ホームボタン近く配置されるのが一般的だった。

一方、同社のPiezoHapt™アクチュエータは、厚さが約0.35mmと薄いことから端末全体のどの位置にも配置が可能になる。

従ってデバイスの搭載位置に制約がなく、触った箇所を直接振動させることができるため、振動を介した多彩な表現力が実現可能になる訳だ。

これについて同ブースの担当者は、「このTDKのPiezoHapt™アクチュエータの主な特長は、積層圧電素子と振動板からなる薄型振動ユニットにあります。

これは従来デバイスの振動に用いられてきたモータ方式等と比較して、反応速度についても電圧の入力から約0.004秒で立ち上がるなど、大幅に高速であることが特徴です。

加えてパルス制御により、振幅並びに周波数を自由に変化させることができるため、周波数や電圧に応じた多彩な振動パターンを細やかに表現することができます」と語っていた。

ブースでは先の通りで、実際の展示製品を触れることができるデモンストレーションセッションで、多彩な振動パターンに対応することを確認した。

ちなみに、これまでも他社等で薄型のアクチュエーターは存在していたものの、比較的高い駆動電圧を必要としており、このため回路設計に於いて搭載は困難を極め、利活用用途は低かった。

一方、同アクチュエーターは、24V以下と低電圧でも伸縮する超極薄のピエゾ(圧電)素子を多積層することで、優れた振動表現を達成。振動の感覚をしっかり皮膚に伝えることが可能になっている(建石 修)。

主な用途
スマートフォンなどのディスプレイ、カーナビ、タッチパッド、コントローラなど

主要データ(2017年2月発表時)
製品名:PHUA8060-35A-33-000
振動板寸法[mm]:80 x 60 x 0.25
素子寸法[mm]:30 x 30 x 0.1
動作電圧[V] Max.:24
変位[μm]:55 typ. (200Hz, サイン波,無負荷)
使用温度範囲[℃]:-10 ~ 60
用途:一般グレード

主な特長と利点
世界最薄クラスの厚み 約0.35mm
低電圧駆動で瞬時に反応し、振動パターンの自由な変化が可能

生産・販売計画(2017年2月発表時)
サンプル価格 : 3,000円/個
生産拠点 : 秋田地区
生産予定 : 50,000個/月(2017年5月当初)
開発完了 : 2017年3月

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