拡大するSiCウエハーの世界市場は6,195億円(4.3倍)に
総合マーケティングの富士経済( 本社:東京都中央区日本橋、社長:菊地弘幸 )は5月21日、AIや再生可能エネルギーなどの普及に伴いパワー半導体の用途が多岐に亘るようになったことで、需要の増加と多様化が進んでいるパワー半導体向けウエハーの世界市場を調査した。また、その結果を「2025年版 パワーデバイス向けウェーハ市場の最新動向・技術トレンド
」にまとめた。
それによると同調査ではパワー半導体向けウエハー8品目を対象に、市場の動向やトレンド、技術課題・方向性、製品展開・開発状況を把握し、将来を展望。主要パワー半導体メーカーのウエハー調達・アライアンス動向、ウエハーメーカーの設備投資動向なども整理したという。
1.SiCウエハーの世界市場
まずSiCウエハーについては、絶縁破壊電界強度に加えて、熱伝導性や電力変換などの性能面に於いても、シリコンウエハーを上回る特性を持つ。そこで、パワー半導体向けに外販されるベアウエハーを対象としている。
2024年は、SiCパワー半導体の需要鈍化の影響を受けたものの、中国ウエハーメーカーを中心に販売が増加したことから、販売数量(㎡)は前年比81.9%増となった。
一方、中国ウエハーメーカーによる安価な製品の販売が増えたことで、6インチウエハーの単価が下落し、市場は同46.1%増に留まった。
2025年は、パワー半導体メーカーがSiCパワー半導体8インチラインの設備投資を先送りにしていることなどにより、販売数量(㎡)、市場は、共に前年比20%増程度に留まるとみられる。今後は、8インチウエハーの販売増加による市場拡大が予想される。
但し、中国ウエハーメーカーが安価なウエハーを展開していることから単価が下落しており、販売数量(㎡)は順調に伸びるものの、市場は販売数量(㎡)ほどの伸びにはならないと予想される。
現状では、4インチ、6インチ、8インチのウエハーが展開されているが、6インチウエハーが販売数量(枚数)の9割以上を占める。
主要パワー半導体メーカーが6インチウエハーによる生産を行っているため、今後も6インチウエハーが中心になるとみられる。
4インチウエハーは、中国など一部エリアでの展開であるため引き続き減少し、8インチウエハーは、中国などで外販が始まっているため2026年以降急激に増加すると予想される。
次々世代半導体ウエハーとして、ダイヤモンドウエハー、窒化アルミニウムウエハー、二酸化ゲルマニウムウエハーの開発が進められている。
ダイヤモンドウエハーは、単結晶ウエハーやヘテロエピ成長によるウエハーの開発が進められており、2026年から市場が立ち上がると予想される。
現状は1インチウエハーや15mm角の単結晶ウエハーの開発が進められているが、ウエハーメーカー各社は2インチウエハーの早期実用化を目標に掲げている。
2インチウエハーの実用化によって、ダイヤモンドパワー半導体の市場形成が加速するとみられる。
窒化アルミニウムウエハーは、4インチウエハーのサンプル出荷が既に開始されており、使用可能領域も拡大していることから、今後の本格量産が期待される。
二酸化ゲルマニウムウエハーは、6インチエピウエハーの展開が予定されており、2030年にかけて販売が開始されるとみられる。
調査結果の概要
シリコンウエハー市場は、シリコンパワー半導体市場に連動して2024年は縮小したが、2025年以降は堅調な拡大が予想される。
SiCウエハー市場は2024年にシリコンウエハーの市場規模を上回った。欧米を中心としたEV化の失速、中国メーカーの台頭による単価の下落が懸念されるものの、今後も拡大が予想される。
GaN単結晶ウエハー市場や酸化ガリウムウエハー市場は、6インチウエハーの実用化により拡大が予想される。ダイヤモンドウエハー、窒化アルミニウムウエハー、二酸化ゲルマニウムウエハーといった次々世代ウエハーは、開発が進められていることから今後の市場形成が期待されるとしている。
調査対象
ウエハー
・シリコンウエハー
・SiCベアウエハー
・SiCエピウエハー
・GaNウエハー
・酸化ガリウムウエハー
・ダイヤモンドウエハー
・窒化アルミニウムウエハー
・二酸化ゲルマニウムウエハー
事例分析
・主要ウエハーメーカー6社