ランチア、新生ブランドの概念を「プーラHPE」に込める


ランチア(Lancia)は4月15日、本国に於いて記者会見を開き、その壇上で新生ブランド「Lancia」の旗揚げとなるコンセプトモデル「Pu+Ra(プーラ)HPE」を発表した。( 坂上 賢治 )

このPu+Ra HPEは、電動モーターを搭載したピュアEVで航続距離は700km以上、エネルギー消費量は100kmあたり10kWh以下とする性能基準を見据え、来たるべき市販モデルへの橋渡しとして公開したモデルとなる。

なお車体各部で特に内装の造り込みにあたっては、イタリア・ミラノの家具ブランド「カッシーナ/Cassina S.p.A.」とのコラボレーションを推し進め、イタリアらしさ溢れる「親しい人達との交流を演出する環境づくり」を見据えた〝暖かさと華やかさ〟を表したという。

ランチアが、このような空間作りを目指した理由は、あえて利便性を追求する事をしないイタリアのリビングのような寛ぎの空間を体現したためとしており、それは世界各国の都市で雨後の筍のように流行したシアトルスタイルのカフェとは異なり、バルで友人達と長い時間を過ごす事を好むイタリア人らしい生き方を、クルマのエクステリア&インテリアデザインへ移植したもの。

ちなみにイタリアの住宅では、美しい装飾品で飾られている設えが少なくないが、それはイタリア人が住宅というパーソナルスペースそのものを「社交の場」と見なしているためであり、今回ランチアは、そうしたSAVOIR VIVERE(サボア・ヴィーブレ/生きるためのノウハウ)を新たなブランドコンセプトして持ち込んだと言えるだろう。

そんなLancia Pu+Ra HPEについてルカ・ナポリターノCEOは、「本日、ランチアはPu+Ra HPEを発表します。このコンセプトカーは、ランチアを次の100年を目指すべく、作られた少なくとも今後10年間のブランドビジョンを示すクルマです。

この〝Pu+Ra〟はランチアの新たな新たなデザイン言語を指すもので、HPEはHigh Performance Electricの略語です、同時にHPEは1970年代にランチア・ベータに初めて使用され、スポーティさと実用性を併せ持ったhigh performance estateの頭文字からインスパイヤされたものでもあります。

また同車は、ステランティス傘下で初のS.A.L.A.バーチャルインターフェイスであるTAPE技術 (Tailored Predictive Experience) を採用したモデルであり、車室内で呼び掛けるだけでオーディオ、気候制御、照明機能などの車内環境を変化させる事が出来るクルマとなります。

そうした考え方の核心には、昨年11月発表の円や三角形の組み合わせで構成したデザインビジョンLancia Pu+Ra Zeroに沿ったものとなっています。

車体色のプログレッシブ グリーンは、ブランドの未来を見据えたプログレッシブさに加え、サステナブルさ表すグリーンを組み合わせて名付けたもの。

その青みがかったグリーンは、最新の液体金属顔料を使って生み出されたもので、かつてのランチアブランドのアッパーモデル〝ランチア・フラミニア・アズーロ・ヴァンセンヌ〟へのオマージュが込められています。

車体側面のバッジには、ブランドの新しいビジュアルアイデンティティを表現する新しいランチアのロゴが掲げました。このバッジには、過去のランチアが辿ってきた歴史的な特徴(ステアリング ホイール、バナー、シールド、スピア、レタリングなどのキーワード)を現代風に再解釈しています。

車体前面は、そうした見地から伝統のデザイン解釈をグリルデザインとして表現。それは3つの光線が交わる事で未来へと向かうブランドの先進性を表しています。

そこから続くルーフには、自然光を室内に取り入れるべく外界と繫がった円形の開口部を持ち、更にリアウィンドウには70年代のベータHPEを彷彿とさせるサンブラインド構造をフィーチャーした水平線を取り入れています。

インテリアデザインには、先の通りでカッシーナとのパートナーシップを継続。その出発点は、自宅にお客様をお迎えするイタリアの住宅のリビングルームを表現する事にあります(その理由は前述の通り)。

そのコンセプトは、ヴィコ・マジストレッティ(Vico Magistretti/イタリア・ミラノの建築デザイナー)がデザインしたマラルンガ・アームチェアにインスパイアされた天然のウール布張りのラウンドカーペットとフロントシートの造形でも明らかです。

独立した2つのシングル アームチェアは、独特のプロポーションと独特の大胆な色彩を与えました。幾何学的形状のウンドテーブル、センター コンソール、ダッシュボードにも同じコンセプトが取り入れられています。また個々の素材はサステナブル素材を活用。室内で乗員が触れる部分は環境に優しい素材となっています。

室内下部には、暖かく快適なビロードのようなヌバックとし、イタリアのインテリア企業のPoltrona Frau(ポルトローナ・フラウ/Cassina S.p.A.、 JANUS et Cie、 Karakter ApSの親会社)のクロムなめしのない認定サプライチェーンを介してイタリアで国内の生産材を使用しています」と話す。

加えて今後採用・搭載されるパワーユニットについてナポリターノCEOは、「2024年にハイブリッドと電気の両バージョンで新しいイプシロンを。2026年からは100%EVのみを発売し、2028年からは新しいデルタの登場と同時にEVモデルのみのブランドとなります。

そもそもランチアは、シティカー、フラッグシップ、コンパクト セダンという3つの主要カテゴリで自動車の歴史を塗り替える様々なモデルを生み出して来ました。

今後もランチアは、この3つのセグメントす全てで最上質の製品を提供します。コンパクトで機敏で運転も愉しめる新たなランチアは、時代を超越したエレガンス、イタリアンスピリット、イノベーションを追求していきます」と宣言した。

最後にLancia Pu+Ra HPEの公開に併せて、同コンセプトカーの予告映像の第一弾が、同ブランドのYouTubeチャンネルで公開されている。今後、こうしたエピソード映像が順次公開されていく予定であると結んでいた。