富士通テン、車両全周囲立体モニタの技術で科学技術賞


https://www.youtube.com/watch?v=Obg9VExbg1w

車載カメラの3D合成­技術で高い評価を獲得

2015年4月7日、富士通研究所(本社:神奈川県川崎市、社長:佐相秀幸、以下、富士通研究所)、富士通テン(本社:兵庫県神戸市、社長:山中明、以下、富士通テン)、ソシオネクスト(本社:神奈川県横浜市、会長兼CEO:西口泰夫、以下、ソシオネクスト)の3社は、文部科学省が主催する「平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「車の周囲を3次元的に見せる全周囲立体モニタ技術の開発」で科学技術賞(開発部門)を受賞。

また、併せて富士通研究所は、「エレクトロニクス実装用電子セラミック材料とプロセスの研究」で科学技術賞(研究部門)を受賞したと発表した。

カメラ画像を3D­合成し、モニター上に360度画面で表示

今回受賞した技術は、車両の前後左右に取り付けた4台の車載カメラの画像を、3次元グラフィックス処理技術を用いて3D­合成し、ダッシュボード上のモニター上にクルマの360度画面として表示できる技術だ。

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富士通研究所が公開した車両全周囲の表示映像

同技術は、ドライバーの視界を補助する周辺監視システムの「マルチアングルビジョン」として富士通テンが提供し、すでに自動車メーカーに採用されているもの。

具体的なシステムの使い方や様子は「百聞は一見に如かず」、ソシオネクストがYouTube上でアップした映像(全周囲立体モニタシステム:5分33秒)を、本稿トップに掲載したので確認されたい。

ITS世界会議ニューヨーク2008で世界から注目された技術

このシステムの優位点は、車両周辺直近の狭い範囲だけではなく、遠景まで含む広範囲の状況を360度、立体感のある全周囲立体映像として合成。ドライバーが見たい方向から自由に滑らかに視点を動かしながら表示できる部分にある。

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本技術は、2008年11月16日に米国ニューヨークで開催された「ITS世界会議ニューヨーク2008 (15th World Congress on Intelligent Transport Systems & ITS America’s 2008 Annual Meeting and Exposition)」において世界発表され当時、大きな反響を呼んだ。

独自開発の動画処理チップと3次元の合成映像技術の結晶

車両の全周囲を映像として統合するシステムには、3社グループによる独自の動画処理チップを採用しており、これが車両周囲に取り付けた4台のカメラ映像を、仮想的な3次元の立体曲面に統合してフラット・スクリーン上に投影する。

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(出典)富士通テン技報52号(2010/12)p12-p18

 

このシステムを使うと「車両の全周囲の映像を自由な視点・視線からモニターに表示し、表示映像の切り替え時において滑らかな視線移動ができる」という。

現代のカーデザインの流れではすでに必要不可欠な仕組み

ちなみに、車両周囲の360度視界をありがたく感じるのは、今や自動車の運転に不慣れな初心者や高齢者だけではない。

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(出典)富士通テン技報52号(2010/12)p12-p18

現代のクルマは、車両の安全性の確保という意味でも、デザイン上の造形造りという面でも、クルマのルーフを支えるピラー(柱)が幅広かつドライバーの着座位置よりも次第に遠くなってきており、かつパワーユニットのコンパクト化も相まって車体の前端が一層低くなるなか、狭い場所に駐車するのはベテランドライバーであっても難しくなっている。

政府や行政におけるクルマの安全に対する要請にも応えられる

また北米では、自動車周辺で遊ぶ子供など、自動車周辺での事故防止を視野に2013年から後方車載カメラの装着を義務化する“Cameron Gulbransen Kids and Transportation SafetyAct(KT法)”が施行されている。

同法は、全米高速道路交通安全委員会(NHTSA)に対し、自動車の広角的な後方視点に関する基準の策定を義務付けているが、今回のシステムはこれに先行して開発が進められ、自動車の安全技術において先駆的役割を果たしてきている。

文部科学省では、同賞について「科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者」に与えられるもので、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としており、2008年に発表された技術がこの2015年になって、ようやく認められたかたちだ。

科学技術賞対象もモバイル機器進化に不可欠な技術

また併せて、富士通研究所が受賞した科学技術賞(研究部門)は、日本の科学技術の発展に寄与する高い独創的な研究または発明を行った者が対象。

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このほど受賞した「エレクトロニクス実装用電子セラミック材料とプロセスの研究」では、セラミックスの表面凝集エネルギーを高めたナノ粒子を中間原料に用いることで、樹脂の耐熱温度以下、かつ金属の融点以下で結晶性に優れた電子セラミック結晶膜を形成する手法を見出し、その膜形成のメカニズムを解明。

セラミック膜にドライエッチングおよび化学エッチングによる微細孔加工技術および多層化プロセスを導入することが可能となり、従来困難であった銅を内部配線とした多層セラミック構造を低温で形成できるようになったことが、受賞の対象になったものとみられる。

製造コストと環境負荷の低減に大きく寄与するという期待

より具体的には、今日、携帯端末を筆頭にウエアラブル電子機器の高性能化のため、折曲げ可能なフレキシブルな薄い樹脂シート上に膜状の受動素子を形成することが求められている。

しかし、従来、受動素子の構成材料であるセラミックスは製造プロセス温度が高く、脆いため、このような受動素子の機能を有するセラミック膜を樹脂シート中に組み込むことが困難だった。

これを銅を内部配線とした多層セラミック構造で低温形成できるようにした。この結果、電子機器の極小・薄型・高性能化できるだけではなく、製造コストと環境負荷の低減に大きく寄与すると期待されている。

文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進などにおいて顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めている。(坂上 賢治)

受賞者および受賞技術は以下の通り
[科学技術賞] 開発部門
案件名:「車の周囲を3次元的に見せる全周囲立体モニタ技術の開発」

受賞者:清水誠也(ソシオネクスト 戦略営業統括部)
・水谷政美(富士通研究所 応用研究センター 自動車研究所 イノベーションマネージャー)
・河合淳(富士通研究所 メディア処理研究所 主任研究員)
・鶴田徹(富士通研究所 メディア処理研究所 プロジェクトディレクター)
・山田浩(富士通テン 先行開発企画部 主査)

[科学技術賞] 研究部門
案件名:「エレクトロニクス実装用電子セラミック材料とプロセスの研究」

受賞者:今中佳彦(富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所 主管研究員)

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