試乗記。グッドイヤー歴代7代目の高性能スタッドレスタイヤを試す


Good Year最新のプレミアムスタッドレスタイヤ「ICE NAVI 7」、8月1日より販売開始

日本グッドイヤー株式会社(本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長:金原雄次郎)は、来る8月1日より、ICE NAVI 6の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ「ICE NAVI 7(アイス ナビ7)」を発売する。

これに先駆けて先の6月末、神奈川県横浜市の新横浜スケートセンターをシャットアウトして、報道記者向けの「ICE NAVI 7」試乗会が行われた。

なお、このICE NAVIシリーズは、1997年に初めて日本市場に導入されて以来、延べ20年の期間に亘って、日本国内ユーザーから一定の支持を得てきた。

プレス向け「ICE NAVI 7」体験試乗会の開催にあたり、ウエルカムスピーチを行う日本グッドイヤー株式会社・代表取締役社長の金原雄次郎氏

そして、このシリーズ製品を発売して記念すべき20年目の節目にあたる今年。

グッドイヤーは、スタッドレスタイヤの重要性を認識する層に向けて、高い氷上ブレーキ性能をさらに高めつつ、天候や時間帯によって刻々と変わる冬季の様々な路面に対応できるプレミアムスタッドレスタイヤとして、第7世代にあたるICE NAVI 7を発売するに至った。

装着サイズは、全67サイズを揃え、新車ならびに主な既存車種を幅広くカバーしている。なお価格はオープン設定になっている。

第6世代から、さらに雪上・雨天性能を高めたトレッドデザイン

さてまずは、車両装着にあたって、魅力のひとつになり得るフェイスデザインを観察してみたい。

そのトレッド面は、同社が「セブン・エフェクティブ・デザイン」と呼ぶもので、トレッド中央部には、ジグザグ状の切り返しを持つ5リブのブロックパターンが配されている。

このブロック間の縦方向には、氷上や雨天時に発生する水分の排水性を高めるために設けられた深めのストレートラインが4本走っている。

一方、横方向には、個々ブロック面の路面への接地タイミングをずらせることで、常に物理的に安定した接地面積を稼ぎつつ、それぞれのブロックが路面を捉えて、「推進力」並びに「制動力」を伝え易くする構造としている。

この中央部のブロックパターンに対して、左右のショルダー部は、車体を安定させるための大きめのブロックが配されており、そのブロックの表面上には、各々6本の細いジグザク形状の切り込み(サイプ)を長めに入れ込むことで、氷上路を捉えて、クルマを安定させる効果を狙っている。

製品プレゼンテーションを行うザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニーのアジア地区・消費財タイヤ、プロダクトディレクターのジェナー・パウエル氏

配合するシリカを細分化することで、タイヤ性能の差別化を図る

今回の試乗にあたって、製品プレゼンテーションを行った同社アジア地区・消費財タイヤ、プロダクトディレクターのジェナー・パウエル氏によると、「タイヤ素材の組成要素(コンパウンド)として配合する鉱物である二酸化ケイ素(シリカ)を、従来製品に比べ、より細分化(同社で云うところのエキストラ・コンタクト・コンパウンド)して配合しました。

これにより、氷面の細かな凸凹に於いて優れた密着性を確保。氷上に於けるブレーキ性能を、7%高める事に成功しました」と述べていた。

ちなみにこのシリカというのは、昨今のタイヤの高性能化には欠かせない配合成分になっているものだ。

シリカは旭化成などを筆頭に、日本国内でも各化学素材メーカーの稼ぎ頭になっている素材で、特にクルマに乗って、最初の走り出しや、氷上など、タイヤ全体が充分に暖まり切らない時に、トレッド面を柔らかく保つ効果がある。

これは自宅や駐車時から走り出した際のほか、雨の日や降雪時にも役立つものであり、タイヤ自体の柔らかさが、路面への密着効果を高めることから制動距離そのものを確実に短くできる。

またシリカの配合で、タイヤの摩擦係数のピーク値(車体を押し出したり、逆に静止させたりする力)を高くすることもできるというダブル効果を併せ持つ。

特に昨今の自動車は、タイヤをロックさせないように機械的にブレーキ力を調整するABS搭載が当たり前であるが、車体を止める際に、静止力の高いピーク性能域を、効果的に引き出せるABS車の場合は、特に制動距離が短くなる。

また併せてシリカには、微細に細かくさせた後にタイヤの組成内部に配合させる事によって、路面接触面の転がり抵抗を小さくする性質もある。この両性能を求めて、昨今のエコタイヤでは、シリカ配合が必須となっている訳だ。

競技用スケートリンクを氷上に見立て、冬期環境を想定したなかでの走りを試す

では、このような基礎知識を踏まえた上で、今回は氷上性能を試すため、完全にクローズ化されたフィギュアスケート競技でも利用されるリンク上で、車両を走らせる。

クルマは量産の標準車として、トヨタ自動車の「プリウス」並びに「C-HR」が用意された。

装着タイヤは、同社の新製品である「ICE NAVI 7」を履かせたグレー塗色の車体と、同社の従来製品である「ICE NAVI 6」を履かせたホワイト塗色の車体が、複数の組み合わせで用意されている。

その新旧タイヤを履いた同型車同士2台の性能対決は、極めて狭いスケートリンクのような環境下でも、充分に発揮されており、特に制動時のブレーキペダルを踏んだ時の初期制動時から完全停止に至るまでの間、「ICE NAVI 7」の場合は一貫して確かなダイレクト感が得られている。

その手応えは従来モデルとなる「ICE NAVI 6」と比較して、大きく進化した。この感覚は一般的なドライバーが、雪上や氷上でいきなり走り出した場合でも、明らかに実感できるほど明快だ。

具体的には、我々スタッフが乗車した感触で、同社が当初説明した「7%」という数値上の性能アップ率を上回るほどの実感が得られている。

したがって、もし販売店に於いて、冬期・ウエット環境の走りが経験できそうな場合は、是非ともタイヤ購入・交換前に試してもらいたい程、ハッキリした感触が得られるはずだ。

対して、交差点やカーブ時に於ける性能実感は、低い速度域に於いては、先のブレーキ時に比べると、得られる実感が比較的低めだ。

もちろん、スケートリンク上の堅く、水膜を持ったような路面に於いても、コーナリング時に慎重にステアリングの舵角を与えていく時点で、より負荷が高まっていく過程に於いて、車体がより小さく回り込んでいくような操舵の効きとダイレクト感は得られている。

ただこちらに対しては、屈曲率がより強いケース、実用速度域でも、より速度が高くなるケースに於いての方が、スリップ率が少ない感触や、操舵のダイレクト感覚並びに効果が強く実感できるだろう。

いずれにしても、氷上・雪上のブレーキ性能、コーナリング時の操舵感の確かさには、同社の従来製品同士の比較に於いても、手に取るように感じられる。

雨天での操舵感、加速・制動感と恩恵を実感できる設計思想

さらに氷上・雪上に限らず、今回のスケートリンクのように水膜が生まれやすい冬期の雨天時に於いても、「ICE NAVI 7」装着の実感と恩恵は確実に得られるだろう。

加えて、タイヤサイズが13〜19インチ、145/80扁平(率)から255/35扁平(率)に至る、67種が用意されていることから、適合車種が幅広いことも魅力のひとつに加えて良い。

と言うのは、結果的にいくら良質な操舵感覚や、加速感・制動力の手応えが得られていても、装着タイヤの対応車種が狭いとなると、我々メディアとしても製品を読者に勧め難いからだ。

但し実際には、店舗によっては商売上、売れ筋のタイヤサイズを中心に揃えることになると思われるため、自車に合わせたタイヤを迅速に履かせたい場合、店頭在庫の有無等は確認にした上で、ショップには向かいたい。

「ICE NAVI 7」の消費者へのコミュニケーション施策を語る日本グッドイヤー株式会社のマーケティング本部長、有田俊介氏

なお、自動車業界で永くキャリアを積んでいる同社マーケティング本部長の有田俊介氏によると、同製品の消費者へのコミュニケーション施策として、TVCMやWeb等のメディア、並びに店頭販促ツールを介して、「『冬のドライブを楽しく、安全に過ごすならグッドイヤー』というメッセージを発信します。

併せて既に『履き替えないタイヤに、履き替えよう』をキャッチフレーズで鋭意販売中のオールシーズンタイヤ『Vector 4 Seasons Hybrid』を加え、今後の冬タイヤの拡販を図ってまいります」と語っていた。

https://www.youtube.com/watch?v=-t5b2c-BjFU

【発売サイズ一覧は以下の通り】

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最後に、日本グッドイヤーは1952年創立されて以降、純国産(※)及び、輸入品のグッドイヤーブランドのタイヤを販売している。

(※)今回の「ICE NAVI 7」は、同社が欧州・北欧地域で供給し、好評価を得ているタイヤ設計を下敷きに、日本では地域によって降雪環境が異なる国内事情を踏まえた専用設計・開発を経て、日本国内の工場にて生産されている。

加えて日本グッドイヤー関連会社である日本ジャイアントタイヤ株式会社では、土木建築車両用・重機用オフロードタイヤを、兵庫県たつの市の拠点で生産しており、さらに旅客機を筆頭とする航空機タイヤのマーケティングと販売も行っている。

なお去る2015年10月1日付けで、住友ゴム工業との国際連携を解消したことを契機に、日本グッドイヤーは日本国内の乗用車タイヤの流通量を拡大させた。

以来、社内他部門との人材交流などの技術・事業連携を積極的に推し進めており、日本国内事業に於ける社内アライアンスの相互効果が、ここにきて明確になり始めている。これについては後々、今後の取材のなかで紐解いていきたい(坂上 賢治)。

日本グッドイヤー株式会社ホームページ: https://www.goodyear.co.jp/ 

https://www.youtube.com/watch?v=3npteWl4Cow