地味なマイナーチェンジでありながら、実際は「人間中心の開発哲学」をさらに加速。ステアリングの操舵感覚も大きく刷新
マツダ株式会社(本社:広島県安芸郡府中町、社長:小飼雅道、以下、マツダ)は、スポーツコンパクト『マツダ アクセラ』を大幅改良。新世代となる車両運動制御技術「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS(スカイアクティブ ビークル ダイナミクス)」の新搭載に加え、クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」を追加し、既存の「SKYACTIV-D 2.2」と併せて2種類のクリーンディーゼルエンジン搭載車を設定した。
https://www.youtube.com/watch?v=JPmJJP953Nk
上記ラインナップ車両の販売開始時期は、「SKYACTIV-D 1.5」搭載車・「SKYACTIV-G 1.5」搭載車・「SKYACTIV-HYBRID」搭載車が7月14日。「SKYACTIV-D 2.2」搭載車は2WD(FF)車が8月。AWD車は9月発売となる。
車両発表の場所は、神奈川県横浜市神奈川区の「マツダR&Dセンター横浜」。そこに国内報道陣を集めて実施され、その席上でマツダの小飼雅道(こがい まさみち)代表取締役社長兼CEOは、「マツダは『お客さまの人生に於いてかけがえのない存在となり、お客さまと特別な絆を持ち、お客様から選ばれ続けるオンリーワンのブランドになること』を目指して来ました。
そのためには今後も、お客様の心を動かす『人間中心の開発哲学』に基づいた次世代技術を考え、造り続け、それをモデルチェンジなどの事業上のタイミングなどには捉えられずに、常に反映させてまいります。
また、今回も発表させて頂いた当社のクリーンディーゼルエンジンは、今後も私共にとって重要な環境技術のひとつと考えており、日本のお客様へのご提案を筆頭に、世界に向けてもグローバル規模でクリーンディーゼルエンジンの更なる普及を目指してまいります」と語り、単一車両のマイナーチェンジでありながら、社長自らがその志を語るという異例の意気込みと、未来に向けて、夢の実現に対する抱負を語った。
実際、今回発表された新型アクセラは、単なるマイナーチェンジの範疇を超える新技術が盛り込まれ、当日は車両発表と併せて、特設の試乗コースが用意され、人馬一体感を大きく高めるとされる「G-Vectoring Control(G-ベクタリング コントロール)」の真意を確かめる機会も用意された。
コースは、マツダR&Dセンター横浜から、みなとみらい地区の市街地を駆け抜けて、首都高速に入り、第1京浜経由で再びR&Dセンター横浜に戻ってくるというもの。
乗り込んだのは、従来の22Lディーゼルに加え、新たに追加搭載されたクリーンディーゼル「SKYACTIV-D 1.5」エンジン搭載車。
これにより、6速ATのFFに限られるものの230万円からという価格帯で、ディーゼル搭載のアクセラが選択できるようになった。
なおこれまでの2Lガソリン・エンジン搭載車はハイブリッドのみ。対して2.2Lディーゼルは、フルタイム4WDの他、6MTも選択肢に加わった。
エンジンを始動してまず最初に気づくのは、ディーゼルエンジン特有のノック音が大きく抑制されていること。
最初乗り込んだ段階では、ディーゼルエンジン特有のエンジン音が捉え難く、ガソリンエンジン搭載車と思ってしまうほど静粛性が高い。
本来、ディーゼルエンジンは、特有の高圧縮ゆえにエンジン燃焼時の加振力が発生する。これに加え、エンジン各部の共振によるノック音が目立つもの。
https://www.youtube.com/watch?v=A5ZBxtOCeKk
しかし同車の場合、ピストンピン内部に「ナチュラル・サウンド・スムーザー」と呼ばれる独自のダンパーが組み込まれていること。さらに燃料噴射タイミングを変化させ、エンジン加振力に対して逆位相共振を発生させることでノック音を大幅に低減させている。
それでいて1.5Lという決して大きくないエンジンボリュームでありながら、ディーゼルユニットゆえの分厚いトルク感がごくごく低回転域から愉しめる。
今回アクセラでは、同シリーズ内のディーゼル車販売比率を現行の1割から5割まで引き上げ、昨今、拡大の機運が見え始めているディーゼル市場の取り込みを狙っており、おそらくこの15Lユニットがその牽引役になると見られる。
https://www.youtube.com/watch?v=yBTfoq5XE10
また今回新搭載されたG-ベクタリング コントロールは、ステアリングを操作していく際の「操舵角度(舵角)と、操舵スピード(切り込んでいく速度)」、各駆動輪に掛かる「重力加速度(タイヤ接地面への荷重)」から、駆動輪に掛かるトラクション(タイヤの駆動トルクを路面に伝える能力)を素早く変化させるものだ。
つまりG-ベクタリング コントロールとは。タイヤ(駆動輪)がスリップせずにクルマを前に進ませる力や能力を高める。
要はカーブを曲がる際に、前後・左右間で、荷重が軽くなる側のタイヤ設置面の状況を、センサーがリアルタイムに感知。
軽くなる側の駆動トルクを適切に抜くことで、無駄な駆動ロスやスリップ要因を取り除き、スムーズなコーナリングを実現する仕組みとなっている。
具体的には、例えば左にステアリングを切り込んだ際、カーブの内側となる右側車輪は荷重が軽くなることから、左側に比べ小さくコンパクトに曲がる必要がある。
この際、右内側車輪の駆動トルクを抜くことで、カーブに適した駆動トルクの差が生まれ、コーナリング姿勢がより安定するようになる。
今回のアクセラの場合、こうした横方向に加え、前後方向の加速度による姿勢変化も統合的にコントロールする。
これによる効果は、実際の運転を行っているドライバーよりも、後席や助手席に乗る乗員に大きな安心感が与えられる。
と云うのは、ドライバー自身はカーブの場面で、自身がステアリングを握っている事から、あらかじめカーブである事を認識しながらステアリング切っている。
ゆえにカーブに伴う車体の姿勢変化に事前に対処(心構え)できているものだ。
一方、クルマに同乗している他の乗員は、車両に乗せられた荷物と同様、単にクルマに乗せられているだけであるから、カーブに差し掛かる際の心構えが出来ない。
このためどうしても、運転者に比べるとカーブによる車両の姿勢に遅れがちな対応となってしまう。そしてこれが、これまでクルマに同乗する乗員のドライブに関わる不快感の原因になっていた。
新型アクセラでは、こうした場面の同乗者の不快感軽減に大きな役割を果たす。実際の乗り心地の変化に関しては、下記の映像を閲覧すれば一目瞭然である。
https://www.youtube.com/watch?v=SdVFkvcL5o4
この車両挙動の姿勢制御は、日常域から緊急回避シーンまで一貫した効果を発揮する。乗員にかかる加速度の変化を、より滑らかにつなぐことで、体の揺れが減り、乗り心地も改善する訳だ。
乗員の姿勢変化の大きさは、ドライブ時に於ける疲労度軽減に大きな効果を発揮するから、小さな子供を伴ってのドライブを筆頭に、ファミリードライブであれば、運転する父親の評価も上がるだろうと思われる。
またこれは、通常走行時の乗り心地の改善だけに留まらない。例えば、降雪、降雨時などの滑り易い路面での操縦安定性が大きく向上する。
というのは、走行時には先のG-ベクタリング コントロールの他、SKYACTIV-D搭載車の場合、エンジン過給圧の制御も最適化する「DE精密過給制御」が、この走行安定性の確保に対して、さらに貢献を果たすからだ。
これは、アクセル操作に対するクルマの反応がやや遅れてしまう様な軽負荷領域で、運転者の意思に沿った一体感のある走りを可能にする。
こうした効果は、一般道による走行でも充分認識できることから、ディーラー等に於ける試乗の際は、是非、ひとりではなく家族や近しい友人などを伴って運転されることをお勧めしたい。
ちなみに余談だが、このG-ベクタリング コントロールは、日立オートモティブシステムズ株式会社が永年、神奈川工科大学と産学連携活動の末、温めてきた「G-Vectoring」が開発のベースとなっている。
ただし、基となったG-Vectoringは当初、ステアリングをドライバー自身が操作し,それに対して違和感なく自動で加減速させるシステムとしていた。
マツダでは、この設計上の着眼点に大いに注目したものの、減速機能の連動では、同社が望む「人馬一体」感の醸成には、繋がり難かった。
そこで優れたG-Vectoringの設計の着眼点を活かしつつ、独自の姿勢制御システムとして「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS思想」に基づく、マツダ独自のG-ベクタリング コントロールを生みだした。
また現時点で、マツダのG-ベクタリング コントロールは、GPS(Global Positioning System)や、道路の付帯施設などのインフラ環境から得られる環境情報。
さらに車両に搭載されたカメラやレーダ等から得られる外界情報などを一切用いずに、車両単独として運動性能を高めるというシンプルかつ、言い方は悪いが極めて地味なものだ。
しかし今後は同技術に、これまで用いていない多彩な外界情報とのリンクの拡がりを考えていくと、自動運転を含む運転補助システムの基盤として、大きな可能性が広がっている。
そうした意味で、マツダはこうした基盤技術の熟成に於いて、現時点では他のライバルメーカーに対して比肩できないほど高い優位性を持ったと言えるだろう。
なお今回のマツダ「新型アクセラ」改良の概要は以下の通り。
- 衝突回避支援・被害軽減技術
– ブレーキ自動制御で衝突被害を軽減する「アドバンスト スマート・シティ・ブレーキ・サポート」
– 従来のスマート・シティ・ブレーキ・サポート[前進時](SCBS F)では近赤外線レーザーセンサーだった検知デバイスをフォワード・センシング・カメラに変更。検知対象を車両のみから、歩行者まで拡大した上で、作動速度域を約4~30km/hから、車両検知で約4~80km/h、歩行者検知で10~80km/hまで拡大した。
- 理想的なドライビングポジションを追求した装備を追加
– (1)運転席10Wayパワーシート&シートメモリーの改善:シートポジションと連動してアクティブ・ドライビング・ディスプレイの角度、明るさ、ナビの表示設定なども登録可能にし、理想的なドライビングポジションを素早く設定可能。
– (2)人間工学に基づく新型ステアリング:ドライバーの意図を正確に車両に伝え、路面やタイヤの状況などを正確にドライバーへフィードバックするため、全周で一貫した握り心地を提供する新型ステアリングホイール。
- SKYACTIV-Dのノック音自体を抑制:心地よいエンジンサウンドを追求するべく、ノック音の原因であるエンジン燃焼による圧力波(エンジン加振力)と、部品の共振周波数(構造系共振)との関係に着目し、特に音量が大きい周波数帯別に静粛性を向上させる技術を標準装備した。
– (1)「ナチュラル・サウンド・スムーザー」
周波数帯3.6kHz付近のノック音の原因である燃焼時のピストンとコネクティングロッドの振動を減衰させるピストンピンに組み入れたダンパー。
– (2)「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」
周波数帯1.3kHz、1.7kHz、2.5kHz付近で発生するノック音は、エンジン加振力と構造系共振のピークが重なる事で増幅していることが判明。燃料噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御し、エンジン加振力を構造系共振と逆位相にさせ、ノック音を低減させた。
– (3)その他
路面状況や天候、ドライバーの意図から車の状況を先読みし、前後輪トルク配分を最適に制御する新世代4WDシステム「i-ACTIV AWD」を「SKYACTIV-D 2.2」搭載車に設定した。 - ドライバーが意のままに操れる「人馬一体の走り」を追求したダイナミクス性能を確保するべく、「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」の第一弾「G-Vectoring Control(G-ベクタリング コントロール)」を初採用した。
- 人間中心設計のHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)の進化・深化
最小の視線移動で情報確認ができる「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」をカラー化する等で視認性を向上。
– (1)ディスプレイインターフェイスの刷新:上側を走行環境情報、下側を車両情報に棲み分け、視認時の迷いを低減。
– (2)ディスプレイのカラー化、高輝度化、高精細化:高コントラスト化させ、読み取りやすさを向上。
- 「MAZDA PROACTIVE SAFETY」の考え方に基づき、安全運転を支援する「i-ACTIVSENSE」
– (1)危険認知支援技術
速度標識の見落としを防ぎ安全運転をサポートする「交通標識認識システム(TSR*6)」を初採用
– (2)自動速度認識機能
走行中にフォワード・センシング・カメラで速度標識を認識し、制限速度をアクティブ・ドライビング・ディスプレイに表示。
– (3)制限速度自動認識
制限速度超過をディスプレイ内のグラフィック点滅で通知。ブザー警告も設定可能。
– (4)進入禁止標識、一時停止標識も判読。
– (5)夜間視認性を高める技術
「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)*4」を採用
– (6)「グレアフリー(防眩)ハイビーム」
左右各4ブロックに分割されたLEDを個別に点灯・消灯できる方式をハイビームに採用。
ハイビームでの走行を基本として、対向車や先行車のランプなどを検知すると、その部分を含むブロックのLEDのみを消灯。前方車両のドライバーに眩しい思いをさせることなく、ハイビームの優れた視認性を確保。
– (7)40km/h以上時に作動する「ワイド配光ロービーム」
40km/h以下で走行時に、これまでのロービームでは光が届かなかった左右方向を照らし出し、夜間の交差点などでの視認性を向上。
– (8)「ハイウェイモード」
95km/h以上で走行時にヘッドランプの光軸を自動で上げ、より遠方の視認性を向上。 - 水平基調の造形で広がり感を追求したエクステリアデザイン
– ワイド&ローなスタンスを際立たせ、大人の落ち着きを感じさせる精悍かつ品格のあるプレゼンスを実現。
– 「機械の持つ精緻な美しさの追求」をテーマに、力強い陰影のコントラストと表面の緻密さを高次元で両立することで、リアルな金属質感を実現した新色「マシーングレープレミアムメタリック」を採用。
– その他、新色の「エターナルブルーマイカ」と「ソニックシルバーメタリック」や、デザインテーマ「魂動」のイメージカラー「ソウルレッドプレミアムメタリック」など、全9色を設定。
- スポーティさと上質さが際立つインテリアデザイン
– ひとつひとつ細かな質感アップを積み重ね、スポーティでありながら落ち着きと品格のあるインテリアを表現。
– インストルメントパネルの中央から左右への広がり、ダッシュボードからドアトリムへのつながりを強め、左右方向のワイド感と前後方向のスピード感を際立たせる造りこみに注力。
– 「SKYACTIV-D 2.2」搭載車には、電動パーキングブレーキ(EPB*8)を採用し、上質ですっきりとしたコンソールデザインを実現。大人の落ち着きを感じさせる精悍かつ品格のあるインテリア空間を実現。