国土交通省は7月6日、先に米国内で発生したテスラ車による死亡事故のニュースを受けて、現在実用化が進みつつある自動運転並びに、運転支援技術についての見解を発表した。
それによると、あくまでも同車が実現している機能は、自動運転レベルに於ける2段階目に過ぎず、それに伴う運転者の責任義務を強調している。
実際、同車の自動運転機能は、現在、高速道等で一般的に利用されているいわゆる「オートクルーズ機能」を発展させたものであり、そこに操舵機能等の自動運転要素が付与されているもの。
テスラが、現状のごく限られたカメラやセンサー等によって得た情報を元に、自動運転に近い技術を実現していることについては、同社が秀でたソフトウエア開発環境を持っている事の裏付けでもある。
また同社は、これらのサービス提供を母国の米国内だけに留めず、日本国内を含む世界市場に持ち込みなど、積極的な攻めの姿勢を見せている。
これは日本国内の自動車メーカーにとっても、結果的にテスラが自動運転搭載車の先陣を切って、国内行政の壁を突き崩す役割を担う事になることから、得られる利も多い。
そうした中、同省は日本国内に於ける産業政策上の国益確保を踏まえ、自動運転化への流れを加速させてきた。しかし今回、自らこの技術進展に関して慎重姿勢を見せる結果となった。
但し、同省の今発表の通りで、自動運転は今年まさに「自動運転元年」を迎えたばかり。
直前に迫る日本国内メーカーによる自動運転関連技術の発表を控え、急速ではないものの、今後も着実な自動運転技術の進展が見られるようになるだろう。
なお、同省発表の概要は以下の通り。
5月に米国において事故が発生したテスラの「オートパイロット」機能を含め、現在実用化されている「自動運転」機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であり、運転者に代わって車が責任を持って安全運転を行う、完全な自動運転ではありません。
本年5月、米国において、テスラモーターズ(Tesla Motors、以下「テスラ」という。)社製の自動車が、「オートパイロット」(Autopilot)機能を使用しての走行中に側方から進入したトレーラーに突入し、運転者が死亡する事故が発生しました。この事故の詳細については、現在、米国当局が調査中です。
テスラ社製の「オートパイロット」機能を含め、現在実用化されている「自動運転」機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であり、運転者に代わって車が責任を持って安全運転を行う、完全な自動運転ではありません。
このため、運転者は、その機能の限界や注意点を正しく理解し、機能を過信せず、責任を持って安全運転を行う必要があります。
国土交通省・警察庁では、今回の事故を踏まえ、ユーザーへの注意喚起を改めて徹底することとし、国土交通省では、本日、(一社)日本自動車工業会及び日本自動車輸入組合に対し、自動車の販売時等に、自動車ユーザーに対して上記の点を十分に説明するように周知しました。
お手持ちの車について不明点がある場合や、車を購入される際には、ディーラー等において、その運転支援技術の機能や注意点について、ご確認ください。
【参考】テスラ社製の自動車に搭載された「オートパイロット」機能
テスラ社製の自動車に搭載された「オートパイロット」機能は、通常の車と同様、運転者が前方・周囲を監視しながら安全運転を行うことを前提に、車線維持支援、車線変更支援、自動ブレーキ等を行う機能に過ぎません。
(※)「官民ITS構想・ロードマップ2016」(平成28年5月20日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)における自動運転のレベル分けでは、レベル2に相当。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20160520/2016_roadmap.pdf
また、天候や周囲の交通の状況等によっては、これら機能が適切に作動しなくなることや、作動を突然停止することがあります。
したがって、運転者が、「オートパイロット」機能を使用中に注意を怠たることは、極めて危険です。また、万が一事故が発生した場合には、原則として運転者がその責任を負うこととなります。
以上