海外進出を加速させる日本の自動車用品販売ビジネス


国内自動車用品市場のシュリンクが続いている。その要因を短期的に診れば、観測史上まれに見る暖冬下でのスタッドレスタイヤ、ホイール、チェーンなどの冬季商品の需要減少にある。

しかし実際には、国内の自動車販売の低迷が長期的に続き、本来、ビジネスの主力であるべきカーナビゲーションや、車内アクセサリーなどの需要減少に歯止めが掛からない。

例えば、同業界最大手の株式会社オートバックスセブン(本社:東京都江東区豊洲、代表取締役社長執行役員:湧田節夫、以下、オートバックス)の2016年3月期第3四半期(累計)の国内に於ける売上高は、前年同期比で既存店3.4%の減少、全店2.7%の減少となった。

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その内訳を覧ると「カー用品販売」は、ドライブレコーダーなどの注目商品の拡販目指したものの、国内の自動車販売の低迷により、カーナビゲーションや車内アクセサリーなどの需要が大きく減少している。

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一方、「車検・整備」に於いては、車検実施台数が前年同期比6.1%増加の約43万台となった。

またTV等のプロモーションによる「車買取・販売」では、買取査定台数と成約台数が増加し、中古車販売業者向け販売が伸長している。併せて個人向けの新車・中古車販売が前年実績を上回り、総販売台数は前年同期比17.6%増加の約19,300台となった。

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これらの結果、グループの第3四半期累計の連結業績は、売上高は前年同期比1.8%減少した。

ただし同社の場合は内部努力により、販管費(前年同期比1.5%減少)や営業利益(同11.6%増加)の改善を図り、経常利益の4.9%増加という数字を挙げている。

こうした流れから同社は、「メンテナンス会員の拡大」並びに「車検予約の獲得」等の一般消費者の車両メンテナンス関連の事業強化を進める一方で、ASEAN地域を中心に出店を拡大し、中長期的な視点で海外事業を成長事業として見据えた活動を精力的に進めている。

先の1月13日には、フィリピン企業で自動車整備事業を営む Motech グループと資本・業務提携することで合意し、調印を行うなど、海外に於ける事業展開は積極的。

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目下、同社の海外事業は、不採算店舗の閉店などの再構築を終えたところで、今後は、現地企業との提携やM&Aも視野に出店ペースを加速させていく意向だ。

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タイで精力的に多展開を進める店舗網。写真は「オートバックスパラマサーム店」

具体的には経済成長と共に、2013年の自動車保有台数(※)で、710万台(対2011年比 +39.0%)と、自動車の普及が急速に進むタイでは首都バンコクを中心に、新興住宅街やショッピングモールに隣接する場所に、小規模小商圏型の店舗を展開。オートバックスブランドの認知・浸透を加速させている。

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店舗内部は日本国内店舗と同じ眺め

気になるアイテム数は、メンテナンス商品を中心に1,000程度に絞り込んでいるものの、日本ブランドのアクセサリー商品が人気で、これが独自性を発揮。

今後、同エリアでは2018年3月期までに10店舗以上を出店し、拡大するユーザーの獲得を進めていくと云う。

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日本国内商品の販売が、ASEAN諸国に於いては強みになっている

かつての日本市場のように経済成長を続け、自動車ユーザーが拡大するASEAN地域は、カー用品販売やサービス事業が未整備であるため、カーライフサービスをワンストップで提供する日本スタイルの自動車用品店舗の強みが効く。今後は、地域に於いて統一した店舗コンセプトを確立することが、事業拡大の鍵になるだろう。

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取付ピットを備えメンテナンスサービスを提供する独自のスタイルは共通。写真はマーレシアの「オートバックス パリン店」

(※)一般社団法人日本自動車工業会「世界各国の四輪車保有台数」、総務省 統計局「世界の統計2015」 保有台数は乗用車の台数(トラック、バス、二輪車等を含まない)

株式会社オートバックスセブンの「決算短信・補足資料」サイト
http://www.autobacs.co.jp/ja/ir/bspl.php