「ヤマハ発動機グループの一員として〝グループの経営に貢献する会社〟として成長していくため、その第一歩を踏み出しました」と話すのはヤマハ発動機の特例子会社であるヤマハモーターMIRAI株式会社 の高橋愛社長である。
同社では現在、32人の知的障がい者と3人の精神障がい者が、社員として部品梱包や清掃、事務などの仕事をしながら自立を目指している。
会社を持続させるためには、欠かせない存在になることが不可欠
障がい者の法定雇用率が今年3月に改訂され、民間企業では全従業員のうち2.3%以上の障がい者雇用が義務づけられる。ヤマハ発動機は2020年実績で2.56%の雇用率を保っているが、MIRAI社は特例子会社としてその一部を補完する役割も担ってきた。
しかしヤマハモーターMIRAIの高橋社長は、「確かにこれまでは、それでよし、という考え方もあったかもしれません。
ですが、会社を持続し続けていくためには、確かな機能を担ってグループに欠かせない存在になることが不可欠だと考えています」と話す。
その言葉通り同社は、今年1月からは従来の業務領域に加え、ヤマハ発動機の社内メール便の仕分や、集配等を行う総務サービスセンターの運営なども事業に取り込み、〝確かな機能〟としてのスタートを切っている。
高橋社長は、「目指す姿は、総務系サービスのシェアードの一端を担う、ヤマハ発動機グループのエッセンシャルカンパニー。まだまだ課題もありますが、そこに向かって基盤を整えていきたいと考えています。
ユニバーサルな職場から企業としての独自価値を生み出す
会社のステージを上げていくためには、社員のスキルの向上が欠かせません。昨年末の社員総会で会社が大きく変わっていきます。
そういうチャンスをつかめたのも、みんなが5年間、しっかりと仕事をしてきてくれたおかげ」とも述べた。
その一方で、キャリアやスキルに応じたステップアップの仕組みを取り入れるなど、社員の意欲を掻き立てる取り組みも始めている。
例えば、最もやさしい業務のひとつ、部品梱包を担当していた17人のうち、昨年、7人がこの仕事を卒業。より高いスキルが求められる職場に移り活躍している。
また事務系業務のカバー領域も拡大し、文書資料のデータ化やオンライン研修のための映像品質チェックなど、当社各部門からMIRAI社への相談や発注も広がりを見せている。
グループ全体のコーポレート機能改革が進む中で、その一端を担うことを目指したMIRAI社のチャレンジ。
「障がい者と健常者がともに働くシーンは、今後ますます増えてきます。そんなユニバーサルな風土から価値を生み出して、人や社会の期待を超えていきたい」と話す高橋社長。福祉から存続可能な企業へ。社員も、会社も、良い方向に向かう手応えを掴んでいる。